この記事は、SSRI以外の抗うつ薬が実際の診療のなかでどんな場面で選ばれているかに踏み込んだ内容です。前半(第1章)は患者さんやご家族に読んでいただける言葉で書いていますが、後半は医療者向けに、用量・エビデンス・保険適応外の使い方にまで踏み込みます。
この記事は連載「精神科医の処方ノート」の第3回です。第1回はSSRIの選び分け――5剤をどう使い分けるか、第2回は抗うつ薬が効かないとき――増量・切り替え・増強のどれを選ぶかです。お薬そのものの説明をお探しの方は、サインバルタ、イフェクサーSR、トレドミン、リフレックス、トリンテリックス、デジレル、ドグマチールの各ページをご覧ください。
実際にどのお薬を使うかは、その方の状態、体の病気、ほかに飲んでいるお薬によって変わります。ここに書かれていることが、そのままご自身に当てはまるとはかぎりません。服用中の方は、この記事を読んで自己判断でお薬を変えたり中止したりせず、必ず主治医にご相談ください。
SSRI以外の選択肢がある理由
「順位表」ではなく「持ち味の違い」が並んでいる
抗うつ薬にはSSRIのほかにも複数の系統があります。SNRI、NaSSA、そしてどの系統にも収まりにくい薬たちです。カタカナが並ぶので序列のように見えますが、上位・下位の順に並んでいるわけではありません。
うつ病を治す力そのものは、抗うつ薬同士でそれほど大きな差がつかないというのが現在の見方です。差が出るのは、どんな症状に手が届きやすいか、どんな副作用が出やすいか、体の病気やほかの薬とどう噛み合うか、といったところです。つまり薬を選ぶのは「強い薬を探す」作業ではなく、その人にいま出ている困りごとと薬の持ち味を合わせる作業になります。
うつは、人によって前に出ている症状が違う
同じ診断名でも、実際に生活を止めているものは人によってまったく違います。
体の痛みがいちばんつらい方がいます。頭痛、肩や腰の痛み、原因がはっきりしない体の痛みが前に出ていて、気分の落ち込みよりそちらの訴えが強い場合です。
意欲が出ないことが中心の方がいます。悲しいというより何もする気が起きない、興味がわかない、という形です。
眠れず、食欲も落ちて体重が減っている方がいます。この場合は、眠りと食事を先に立て直すことが治療の入口になります。
不安や緊張が強く、じっとしていられない方もいます。
薬を選ぶときに医師が見ているのは、この「何が前に出ているか」です。 痛みを伴う場合と、眠れず食欲も落ちている場合とでは、選ぶ薬が変わります。診察のときに、いちばん困っていることを1つか2つに絞って伝えていただけると、この判断が的確になります。
副作用の「顔つき」も薬ごとに違う
抗うつ薬の副作用は、系統によって出方が違います。
眠くなりやすい薬があります。夜に飲めば不眠に役立つ持ち味になりますが、翌朝まで残ると仕事に差し支えます。食欲が増えて体重が増えやすい薬もあります。食べられずに痩せてきた方には利点ですが、すでに体重や血糖が気になる方には不利です。血圧が上がりやすい薬、尿が出にくくなりやすい薬もあります。
そして、あまり口に出しにくい副作用として性機能への影響があります。これは決してめずらしくないのに、患者さんの側から言い出しにくく、そのまま自己中断につながりやすい副作用です。この影響が出にくい薬もあるので、困っているなら遠慮なく伝えてください。言ってもらえないと対処できない、という種類の副作用です。
つまり「副作用が少ない薬」があるのではなく、その人が何を嫌かによって、どれが副作用の少ない薬になるかが変わります。 眠気は困る、体重は困る、性機能は困る――どれを避けたいかは本人しか決められません。
少ない量で、別の狙いに使う薬もある
処方された量を調べてみたら、書かれている標準的な量よりずっと少なかった、という経験をされる方がいます。手抜きに見えるかもしれませんが、そうではないことが多いです。
抗うつ薬のなかには、少ない量では抗うつ作用とは別のはたらきを狙って使うものがあります。眠りを助けるために少量だけ使う薬、食欲を出す目的で少量から始める薬などです。量が少ないのは、その狙いに合わせているからです。
逆に言えば、同じ薬でも量によって意味が変わります。「なぜこの量なのか」は聞いていただいて構いません。 目的がわかっている薬は続けやすくなります。
ほかの科で出ている薬との関係
抗うつ薬は、ほかの科から出ている薬の効き方に影響することがあります。逆に、ほかの薬の影響で抗うつ薬の濃度が上がることもあります。喫煙が薬の分解に影響する薬もあります。
ですから、お薬手帳は1冊にまとめて、飲んでいるものを全部見せていただくのがいちばん安全です。 市販薬やサプリメントも含めてです。系統を選ぶ判断が、ここで変わることは実際によくあります。
薬が変わることは、後退ではない
薬が変わったり、SSRIから別の系統に移ったりすると、「振り出しに戻った」と感じる方がいます。そうではありません。合わなかった薬の情報があるからこそ、次の薬が選べます。
なお、体の具合が急に悪くなった、意識がはっきりしないといった緊急性の高い状態のときは、迷わず救急(119)を利用してください。通院中の方は、まず主治医にご相談ください。
剤ごとの立ち位置
ここから先は医療者向けの内容です。 用量・エビデンス・保険適応外の使い方に踏み込みます。患者さん・ご家族の方は、ここまでの内容と主治医の説明を優先してください。以下の用量はいずれも書籍・文献上の記載であり、服薬指示ではありません。
以下では薬剤名を一般名で記します。個々のお薬の解説ページはお薬についてから辿れます。
前提として、うつ病に対する有効性そのものでこれらの剤を序列化することはできません。よく引かれるネットワークメタ解析は、18歳以上の成人急性期うつ病を対象に1979〜2016年の二重盲検並行群間比較試験522本・116,477人を集め、21薬剤を比較したものです。21薬剤すべてがプラセボに優っており、オッズ比の幅はアミトリプチリンの2.13(95%信頼区間1.89〜2.41)からレボキセチンの1.37(1.16〜1.63)まででした。直接比較試験のみの解析では、アゴメラチン・アミトリプチリン・エスシタロプラム・ミルタザピン・パロキセチン・ベンラファキシン・ボルチオキセチンの7剤が他のいずれかより有効性で優り、フルオキセチン・フルボキサミン・レボキセチン・トラゾドンは複数より低かったとされます。忍容性ではアゴメラチン・シタロプラム・エスシタロプラム・フルオキセチン・セルトラリン・ボルチオキセチンが優れ、アミトリプチリン・クロミプラミン・デュロキセチン・フルボキサミン・レボキセチン・トラゾドン・ベンラファキシンで脱落率が高かったと報告されています。この記事で扱う剤の多くが、有効性の上位と忍容性の下位に同時に並んでいることに注意してください。
そして、この解析の読み方には落とし穴があります。 説明会やパンフレットで示される図は直接比較試験のみを集めた解析であることが多く、一見ある薬剤が頭ひとつ抜けて見えても、エラーバーが非常に長い。ボルチオキセチンについてはプラセボ以外の直接比較試験がデュロキセチンとベンラファキシンに対するものだけで試験数も少なく、それが幅の広さに表れています。同じ論文でプラセボを含めた全試験を解析した図を見ると「実はどの薬剤も似たりよったり」だとよく分かるのに、その図は宣伝資料にほとんど出てきません。 うつ病のモノアミン仮説はあくまで仮説であり、SSRI・SNRI・NaSSA・S-RIMが強調する特定のモノアミンへの作用の違いは、臨床的な有意差を示すほどではない――という評価も併せて置かれています。したがって以下は「どれが強いか」ではなく「どの困りごとにどの剤の持ち味が噛み合うか」の整理です。 SSRIの選び分けについては連載第1回のSSRIの選び分け、効果不十分だったときの手順については第2回の抗うつ薬が効かないときをご覧ください。
もう一つ前提を置きます。これらの剤を「抗うつ薬」という枠だけで捉えると使い分けを見誤ります。 成書のなかには、これらをまとめて「モノアミン作動薬」として整理し、うつ病・不安症・強迫症・慢性疼痛といった診断横断的な使用を、モノアミンへの作用と副作用の両面から理解させる構成をとるものがあります。この見方をとると、痛みに使うことも不眠に少量で使うことも例外ではなく、同じ薬理の別の面として並びます。
痛みを伴ううつ、身体症状が前に出るうつ
この領域でSNRIが選ばれる理由は、うつへの効果が強いからではありません。 疼痛の下行性抑制系にノルアドレナリンが関わるためです。
慢性疼痛は、末梢神経、中枢性感作、社会生活、認知、感情といった複数の要因の交点として理解するのが成書の立場です。薬物療法ではデュロキセチン、三環系抗うつ薬、ガバペンチノイド類が扱われます。神経障害性疼痛については、SNRI(とくにデュロキセチン)、三環系(とくにアミトリプチリン)、オピオイド配合剤、抗てんかん薬が並び、クラスごとのNNTは三環系が3.1、SSRIが6.8、SNRIが5.5であったという研究が引かれています。NNTは小さいほど効果が大きい指標ですから、三環系がもっとも効果の大きい側にあたります。なおこれはクラスとしての数値で、アミトリプチリン個剤の数値ではありません。つまり効果の大きさで言えば、三環系はいまだに強い位置にいます。それでも一次選択がSNRIに寄るのは、抗コリン性の副作用と過量服薬時の危険という三環系の弱点があるからです。効果で選んでいるのではない――この構図がここでも繰り返されます。
機序としては、脊髄の下行性疼痛路でセロトニンとノルアドレナリンを活性化させることにより、デュロキセチン(サインバルタ)が糖尿病性神経障害、線維筋痛症、腰痛、変形性関節症などの慢性疼痛を軽減すると考えられています。SNRIがSSRIより少し有用性が高いとされる理由も、下行性疼痛調節系のノルアドレナリン系への関与の強さによるのかもしれない、という説明です。
ただし「痛みならSNRIでなければならない」ではありません。 うつ病に伴う疼痛の改善についてデュロキセチンとパロキセチン(パキシル)を比較した複数試験のプール解析では、有意差がありませんでした(平均差0.66、95%信頼区間 −2.37〜3.68、デュロキセチン736例/パロキセチン369例)。すでにSSRIで治療していて痛みが残っている患者を、痛みを理由にSNRIへ切り替える判断は、この数字を踏まえると自明ではありません。 用量についても、デュロキセチンの痛みへの効果は用量依存的ではなく、20〜40mg/日で効かなければ60mg/日でも効かないことが多いとされています。増量で粘る場面ではありません。これは処方医が増量の可否を検討するときの目安として書かれているもので、服用している方が増量の提案を断る根拠になる記述ではありません。 実際にどうするかは、痛みの経過と副作用を見ながら処方医が決めます。
適応の確認がとりわけ欠かせない領域です。 国内でデュロキセチンは、うつ病・うつ状態のほかに糖尿病性神経障害・線維筋痛症・慢性腰痛症・変形性関節症における疼痛の適応をもち、最大60mg/日です。疼痛適応での用法は、糖尿病性神経障害に伴う疼痛では1日1回朝食後40mg(20mgから開始し1週間以上の間隔で20mgずつ増量、効果不十分なら60mgまで)、線維筋痛症・慢性腰痛症・変形性関節症に伴う疼痛では1日1回朝食後60mgと整理されています。後者も60mgを初回から出す用法ではなく、20mgから開始して1週間以上の間隔をあけながら20mgずつ増量する規定です。 疼痛適応だからといって漸増を省く運用にはなりません。一方ミルナシプラン(トレドミン)は国内ではうつ病・うつ状態のみで、線維筋痛症の適応はありません。 米国ではうつ病の適応がなく線維筋痛症に用いられているという、日米で立ち位置が反転している薬です。同じSNRIでも、痛みに使うことが適応内か適応外かが剤によって分かれます。 適応外で使うのであれば、合理的な理由・十分な説明・十分な観察・診療録への記載という4点を満たすことが要件として整理されています。
それでも、デュロキセチンが合わず三環系も副作用で服用できなかった慢性疼痛の患者で、唯一続けられて疼痛も緩和したのがミルナシプランだった、という記述もあります。選択肢として残す価値はある、ただし適応外である――この二つを同時に持っておく必要があります。ミルナシプランは国内で100mg/日(適宜増減)、高齢者は60mg/日が上限です。腎排泄型のため、腎機能障害では血中濃度が上がりえます。そしてノルアドレナリン再取り込み阻害が末梢でも働き、尿道平滑筋のα1受容体刺激によって尿閉に禁忌であることも、この剤の大きな特徴です。
製剤の扱いについては、成書のあいだで記述が食い違います。 デュロキセチンは酸に不安定で胃酸で失活しうるため腸溶性コーティングが施されており、カプセルの内容物を砕いたりすりつぶしたりしないで服用させることと明記している成書があります。一方で、嘔気で脱落させないコツとして脱カプセルして10mg/日から始めるという運用を著者の実践として記載している成書もあり、慢性疼痛の初回処方例を10mg/日とする記載もあります。これは製剤の設計と添付文書の指示から外れる運用です。 記載が分かれている以上、まず現行の添付文書を確認するのが前提になります。そのうえで、添付文書外であることを踏まえ、嘔気による脱落が予想される症例に限って、説明と同意を得たうえで選ぶ――そういう性質の手技として扱うべきものです。なお錠剤の後発品を用いて半錠にする、という別の道筋を挙げている成書もあります。
併用の落とし穴が一つあります。 トラマドール(配合剤を含む)はセロトニン・ノルアドレナリンの再取り込みを阻害する弱いSNRI作用をもつため、デュロキセチンとの併用でセロトニン症候群やけいれんが起きうるとされています。疼痛が主訴でペインクリニックや整形外科がすでに関与している症例では、これは絵空事ではありません。トラマドール150mgがモルヒネ30mg相当という換算も併せて頭に入れておくと、処方全体の重さが見えます。
適応外の工夫として成書に挙がるものもあります。慢性疼痛に対してプラミペキソール0.125mg/日からの併用、アリピプラゾール(エビリファイ)散をごく少量(0.5mg/日程度)併用、σ受容体拮抗作用を期待したハロペリドールの少量併用――いずれも適応外使用です。 慢性疼痛では黒質-線条体系や中脳-辺縁系のドパミン神経伝達が弱まっていることが指摘されており、プラミペキソールはそこに介入するという説明が付いています。
身体側の制約も、この剤ではきつく効いてきます。デュロキセチンは高度の肝機能障害・高度の腎機能障害、コントロール不良の閉塞隅角緑内障が禁忌です。CCr 30未満ではAUC・Cmaxが約2倍になるとされ、腎障害でも肝障害でも使いにくい。加えて主にCYP1A2で代謝されるため、喫煙による酵素誘導の影響をまともに受けます。 喫煙者では候補になりにくいSNRIという視点は、外来で意外と使えます。SNRI全般に血圧上昇と尿閉のリスクがあるため、高血圧の患者や前立腺に問題のある男性では選択に影響します。
逆に、ミルタザピン(リフレックス)を疼痛狙いで選ぶことは推奨されていません。 線維筋痛症の疼痛が50%減るという目的でプラセボを有意に上回れず、試験数もまだ少ないため、現段階では疼痛改善を狙って積極的に処方するものではないとされています。眠れず食欲も落ちていて、かつ痛みもある――という症例でミルタザピンを選ぶのは構いませんが、それは睡眠と食欲を狙った選択であって、痛みを狙った選択ではないと整理しておく必要があります。
そして目標設定です。 疼痛が主訴の症例で「痛みが消える」を目標に置くと、ほぼ確実に失敗します。成書が示す方向は、疼痛消失ではなく「痛みがあってもできる行動」を増やし、生活機能と本人の価値を回復することです。慢性疼痛に対して認知行動療法がもたらす疼痛そのものの改善度はかなり小さいことも指摘されており、痛みの数値を下げる勝負に持ち込むと薬も精神療法も負けるという構造があります。薬剤選択の技術より、この目標の置き方のほうが転帰を左右します。「異常がない」「心因だ」と切り捨てず、症状が本人にとって現実の苦痛であると認めることが前提になります。効果判定については、処方医の側が置く区切りとして、2か月ほどを目安に見極め、効かなければ漸減中止して他剤へ、いずれも効かなければ無駄に続けず向精神薬を中止する、という枠を示す成書もあります。いずれも医師が漸減の計画を立てて行うもので、服用している方が自分の判断で中止する手順ではありません。
「効かない痛み止め代わりの抗うつ薬」を長期に残さないという判断も、選び分けの一部です。
なお、慢性疼痛を伴う身体疾患ではうつ病の併存率が30〜54%と高く、慢性疼痛の長期的なQOL低下には抑うつ症状だけでなく主観的な認知機能障害、高年齢、低学歴、線維筋痛症の存在が関連していたという報告もあります。痛みの症例で見るべきものは痛みだけではない、という点は繰り返し確認する価値があります。
意欲低下・易疲労性が前に出る場合
この場面の考え方は、モノアミンと症状を対応づける古典的な図から出発します。 不安症状や衝動性にはセロトニンが主に関与するためSSRI、意欲・エネルギーが低下している患者にはSNRI、意欲低下や快感喪失が特に強い患者にはノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬(NDRI)やMAO阻害薬――という対応づけです。疼痛や意欲低下・易疲労性を主病像にしている患者にはSNRIを第一に考慮するとよい、という記載もあります。
ただしこの図には、日本で使えない薬が含まれています。 NDRIとMAO阻害薬は国内で発売されていないため、ここを狙うならドパミン作動薬の適応外処方などになる、という但し書きが付きます。成書のなかにはこの図に「絵に描いた餅は食べられない?」という題を付けているものがあり、きれいな薬理の図と国内で選べる手駒のあいだにずれがあることを最初に押さえておく必要があります。
SNRIについては、セロトニンとノルアドレナリンの双方に作用するため、SSRIの効果に精神運動制止への作用などが加わり、より広い治療スペクトラムとなりうるとされ、鎮静のかからない群に分類されます。3剤の性格の差は次のように整理されています。ミルナシプランはセロトニントランスポーター阻害とノルアドレナリントランスポーター阻害がほぼ同等ですが、どちらもマイルドで、ノルアドレナリン側は強いがセロトニン側が弱く切れ味に乏しいという評価もあります。意欲低下が強い場合にミルナシプランを選ぶという使い分けの例が挙げられている成書もあります。デュロキセチンはノルアドレナリントランスポーター阻害が強く、比較的低用量から双方を阻害します。ベンラファキシンは薬剤自体のノルアドレナリントランスポーター阻害は弱く、活性代謝物がその役割を担います。
ベンラファキシン(イフェクサーSR)は、用量で性格が変わる薬です。 150mg未満の低用量ではセロトニン再取り込み阻害が優勢でSSRIのような特徴をもち、150mg以上でSNRIの特徴が出始めます。 国内の上限は225mg/日(EUでは重度のうつ病に375mg/日まで)で、37.5mg分1食後で開始し1週間以上あけて75mg、その後75mgずつ漸増して75〜225mg分1で継続する、という刻みが示されています。つまり「SNRIとして使う」つもりなら、150mgに届くまでは薬理学的にはまだSSRIを使っているのと近いと言えます。増量の余地が実質的に広いことは、利点でもあり面倒でもあります。
一方、患者レベルのデータを用いたメタ解析では、中核症状が軽度のうつ病には高用量より150mg以下が有用と報告されています。CYP阻害作用がなく併用薬の心配が少ない点、初期量からの1回の増量で十分な治療効果が期待できる点は使いやすさとして挙げられています。ただし中断症状が起きやすく、先天異常のリスクによって妊娠中の使用に疑問符が付くことから、プライマリケアで積極的に使用することはないという判断も示されています。中断症候群は基本的にセロトニン再取り込み阻害が強く半減期の短い薬剤で起きやすいという原則から見ても、未変化体の半減期が7.6〜9.7時間と短いこの薬は出やすい側です。
SNRI全般の身体的な代償も見ておきます。 ノルアドレナリン再取り込み阻害によって血圧が上昇する場合が少なくなく、高血圧の患者では警戒が欠かせません。 頻脈、尿閉、肝障害も挙がります。SSRIに比べて排尿困難が認められることが多く、特に高齢者では尿閉による腎後性腎不全に注意とされています。前立腺の問題がある男性で意欲低下を理由にSNRIを選ぶなら、この点を必ず天秤に載せます。デュロキセチンとベンラファキシンはいずれも高度の肝機能障害・高度の腎機能障害で禁忌です。
そして、意欲低下が薬の副作用である可能性を先に潰しておきます。 SSRIによるアパシーは長期投与で、かつ用量依存的に生じうるとされます。「嫌なことをスルーするための薬剤によって、良いこともスルーしてしまうようになった」という説明が示されており、健常者にSSRIを投与した画像研究では報酬刺激に対する腹側線条体・腹内側前頭前皮質・眼窩前頭皮質の活性化が減少したと報告されています。抑うつとアパシーの区別は、活動できないことへの葛藤・苦痛があるか(抑うつ)、動機づけそのものが欠けて葛藤が乏しいか(アパシー)にあります。疑ったら減量・中止を試す。SNRIにも同様の傾向があると考えているという記述もあり、SSRIからSNRIへ替えれば解決するとは限りません。認知症の意欲低下ではアセチルコリンエステラーゼ阻害薬で改善することもある、という別の道筋もあります。
ドパミン系を狙う選択肢は、国内ではほぼ適応外になります。 プラミペキソールは国内ではパーキンソン病とレストレスレッグス症候群の適応であり、うつ病や双極性障害のうつ病相への少量付加は適応外使用です。 0.125mg/日から始めるという運用が示され、最多の副作用は嘔気、有名なものは突発的な眠気で服用中は自動車運転が禁止されます。稀に衝動制御障害も報告されています。しかも期待するほど報酬系を動かすわけではなく、その働きは主に否定的な表情に対する扁桃体の活動抑制によるもので、他の抗うつ薬と同じようだ――という評価もあります。「ドパミンだから意欲が出る」という直感は、成書の記述に照らすと素朴すぎます。
三環系のほうに答えがある場合もあります。アモキサピンは「気分を持ち上げる働きの強い、貴重な抗うつ薬」と評され、ノルトリプチリンのノルアドレナリン再取り込み阻害の強さはアトモキセチンを上回るとされています。新規抗うつ薬の枠内で意欲低下に効く薬を探し続けるより、三環系に戻るほうが早い症例があるという視点は持っておく価値があります。
ボルチオキセチン(トリンテリックス)について「意外にアップ系で、持ち上げる力はデュロキセチンよりも強い印象、ただしアップした結果としてなんとなく慌ただしくなる感じも受ける」という私見を記している成書もあります。これは個人の臨床印象として書かれているもので、エビデンスとしては扱えません。 ただし焦燥が出やすい症例で警戒しておく理由にはなります。
最後に、薬理から離れた要点を一つ。「意欲は行動を続けて初めて出てくる」という行動活性化の考え方です。意欲が出るのを待って行動を組むのではなく、行動を組んでから意欲が追いつくのを待つ。意欲低下を主訴とする症例で、薬の系統を替え続けるより効くことがあります。
不眠・食欲低下・体重減少を伴う場合
ここがミルタザピンの本領で、しかも最も脱落を作る場面です。
作用機序は他の抗うつ薬と根本的に違います。モノアミントランスポーターには関与せず、シナプス前のα2自己受容体とα2ヘテロ受容体を遮断してノルアドレナリンとセロトニンの放出を促します。副作用のプロフィールを決めているのはシナプス後の受容体作用で、5-HT2A遮断が性機能障害を出にくくし、5-HT2Cと5-HT3の遮断が制吐に働き、H1と5-HT2Cの遮断が食欲を上げ、5-HT2AとH1の遮断が明確な鎮静を生みます。 副作用の一覧ではなく、狙う効果と避けたい効果が同じ受容体プロフィールから出てくる、という構造です。
この構造から重要な帰結が出ます。 SSRI/SNRIはシナプス間隙に留まったセロトニンがどの受容体に結合するかを選べませんが、ミルタザピンは5-HT2A・5-HT2C・5-HT3を先に遮断しておくことで、セロトニンが空いている5-HT1Aに結合するよう仕向けます。SSRI/SNRIの治療初期に起きがちな不安が出にくいのは5-HT2C遮断によると考えられており(5-HT2C刺激は不安を引き起こすとされる)、導入初期の賦活が問題になりやすい症例で選ぶ理由になります。
国内の用量は最大45mg/日、15mg分1眠前で開始し15mgずつ漸増して15〜45mg分1眠前という刻みです。剤形には錠と口腔内崩壊錠があります。そして最大の問題は、開始用量の時点ですでに眠すぎることです。 半減期は23.3〜32.7時間あり、過鎮静にもなりえます。特に40代以下の若い患者では日中も眠気が続きがちで、増量できないか中断せざるをえないケースがあるとされています。15mg/日からの投与は翌日への持ち越しで嫌われることもままあり、若い患者は猛烈に眠くなると言う――そう書いている成書もあります。だからこそ開始用量の半分である7.5mg/日から始めるという運用が示されていますが、これは添付文書の用量設定から外れます。 それでも「眠くて続けられませんでした」と言われることがしばしばある、とまで書かれています。
効果の出方にも独特の癖があります。 抗うつ作用自体は他のモノアミン作動薬に比べて強いわけではなく、眠りや食欲の改善は速やかに出るが、そこからどんどん良くなるわけではないという印象が示されています。むしろ眠りが改善すると鎮静作用が相対的に重くなり、患者は「日中のだるさが抜けない」と表現します。「最初の1週間はよかったのに」という訴えの正体がこれであることは珍しくありません。 一方で、初期量から十分な治療効果が期待できる点で使いやすいという評価もあり、増量の手間が少ないことは利点として挙げられます。
不眠を標的にした少量使用としては、7.5mg/日から開始して3.75〜15mg/日で調節するという運用、あるいは7.5mg/日からという記載があります。これは不眠症に対する適応をもたない使い方であり、用量も添付文書の設定から外れます。
代償は体重と血算です。 抗うつ薬全体では5%以上の体重増加が非服用者の1.2倍とされるのに対し、ミルタザピンは1.5倍で、投与後6年間は増加の可能性があるので注意が呼びかけられています。食欲が落ちて痩せてきた患者には利点ですが、体重が戻ったあとも同じ量を続ける設計になっていると、そのまま増え続けます。「食欲が出た」は減量を考えるサインでもあります。 血算については、ミアンセリンとミルタザピンは概して有害反応リスクが低い一方、骨髄抑制だけは他の抗うつ薬よりリスクが高く、ミアンセリンの造血障害はおよそ1/5,000、ミルタザピンによる無顆粒球症はおよそ1/1,000とされています。年1回以上の血算という運用の根拠がここにあります。
用量によって錐体外路症状の出方が変わるという指摘は、外来でそのまま役に立ちます。 ミルタザピンは5-HT2A/2Cを遮断するため低用量では運動障害が生じにくいのですが、30mg/日を超えるとα2自己受容体阻害が強まってノルアドレナリン放出が高まり、アカシジアなどにつながると言われています。逆に、抗精神病薬によるアカシジアの治療にミルタザピン7.5〜15mg/日という少量を用いる方法もありますが、これは適応外使用です。 同じ薬が、少量ではアカシジアの治療に、高用量ではアカシジアの原因になりうる――用量が性格を変える薬のもう一つの例です。
制吐についても、化学療法による嘔気・嘔吐の予防でオランザピン(ジプレキサ)と有意差がなく、眠気や疲労感といった副作用はオランザピンのほうが多かったという小規模の比較試験があります。化学療法中の患者の食欲改善と制吐を目的に3.75mg/日や7.5mg/日といった少量から用いることもある、という記述もありますが、ミルタザピンにこの適応はなく、適応外使用です。
SNRIとの併用
SNRIとミルタザピンの併用は俗に「カリフォルニア・ロケット」と呼ばれます。α2自己受容体を阻害する薬剤の併用については結論が一致していませんでしたが、2022年のメタ解析では単剤より有効性で上回ることが示されたとされています。ただし鎮静がかかるため実臨床では倦怠感・疲労を覚えがちで、SSRI/SNRIでは眠りが安定しない患者をしっかり選び、かつ少量にすべきという留保が付きます。そしてこの併用自体が適応外使用です。 付加する用量については成書のあいだで幅があり、鎮静を避けるために少量にとどめるという記載もあれば、30〜45mg/日の付加を挙げる記載もあります(後者は第2回の抗うつ薬が効かないときで紹介した域です)。同じ併用でも、狙いが睡眠の安定なのか抗うつ効果の増強なのかで置く用量が変わるため、成書の数字をそのまま持ってこないほうが安全です。 抗うつ薬2剤併用は原則として有効性を高めない――その原則のなかで、この組み合わせだけは例外として扱われています。
眠りだけを狙うとき――トラゾドンの使われ方
トラゾドン(デジレル)は、抗うつ薬として選ばれることがほとんどない抗うつ薬です。
作用はセロトニン再取り込み阻害に加え、α1遮断・H1遮断・5-HT2A遮断、軽度のα2自己受容体遮断です。重要なのは用量による切り替わりで、セロトニン再取り込み阻害を狙うには100mgを上回る必要があり、それ以下ではα1・H1・5-HT2A・α2への作用が主になります。 つまり25〜50mgで使っているとき、この薬は抗うつ薬として働いていません。200mg/日まで増やしても抗うつ薬としては「ぱっとしない」ため睡眠改善と割り切ったほうがよい、という評価が成書にあります。眠りの質を改善し深い睡眠を増やすとされる点が、この薬が残っている理由です。
国内の適応はうつ病・うつ状態のみで、200mg/日(適宜増減)です。したがって不眠を標的にした使用は適応外使用であり、25〜50mgという用量も添付文書の設定から外れます。 そのうえで成書に載っている運用は具体的です。うつ病の不眠に12.5〜50mg/日、処方医が25mg錠0.5〜2錠という調節幅と手順をあらかじめ指示しておく運用(翌日が休日の日に1錠から試させ、眠れなければ1.5〜2錠、寝過ぎ・ぼんやりするなら0.5錠へ、という指示の形)、12.5〜100mg/日で多くは50〜100mg/日に収まる、12.5mg/日から開始して25〜50mg/日、鎮静を期待して1日量25〜50mgを眠前――といった記載が見られます。この調節幅の運用は、処方医が範囲と判断基準を指示し、経過を確認できる体制のもとで成立するものです。服用している方が自分の判断で錠数を増減する手順ではありません。 せん妄の予防としてトラゾドン25mg就寝前に不眠時25mg頓用(1日3回まで)を組む例もありますが、これも適応外使用です。
「ベンゾジアゼピンより安全」と単純には言えません。 高齢者施設の転倒リスク調査では、トラゾドン約50mg/日とロラゼパム約1.0mg/日換算のベンゾジアゼピンで転倒リスクはほぼ同等でした。認知症の行動・心理症状の興奮/焦燥に用いた場合、転倒や骨折のリスクは抗精神病薬と同等で、死亡リスクは若干低いようだ、とされています。「諸手を挙げて安全と言うつもりはない」という書き方が成書にあることは、共有しておく価値があります。
一方、乱用のリスクは低い側です。薬剤乱用歴のある患者でトラゾドン・ゾルピデム・トリアゾラムを比較したところ、誤った使用をされる可能性が最も低かったのはトラゾドンでした。ベンゾジアゼピン離脱の際の置換に用いられることも多いとされます。依存の問題を避けたい患者では、この点が選択の理由になります。
副作用としては、カリウムチャネル阻害によるQT延長(他のQT延長を起こす薬剤との併用時は注意)、ごく稀に持続勃起症、日常的には頭痛と倦怠感が挙がります。同様にもっぱら睡眠薬として使われる四環系のミアンセリンについても、H1遮断・α1遮断・5-HT2A遮断が作用の大部分で、うつ病への使用は稀、鎮静を期待して1日量10〜30mgで夜間せん妄に用いられる場合がある、と整理されています。ミアンセリンの国内適応もうつ病・うつ状態のみで、せん妄を標的とした使用は適応外使用です。 うつ病に対しては1日60mgまでの薬剤ですから、10〜30mgはそれより低い域にあたります。なお、せん妄への抗うつ薬使用はエビデンスが乏しく推奨できない、とする成書もあります。
性機能への影響を避けたい場合
この副作用は、把握できれば対処できて、把握できないと治療そのものを終わらせます。 患者の側から自発的に語られることはほとんどなく、そのまま自己中断につながるためです。ある調査では、抗うつ薬の副作用を経験した患者の73.6%が症状と抗うつ薬の関連を認識しておらず、なかでも性機能不全では94.2%が関連を認識していませんでした。 つまり「言い出しにくい」以前に、薬のせいだと思っていないわけです。こちらから話題にしないかぎり情報は上がってきません。
機序としては、セロトニンによる5-HT2A受容体の刺激が一因とされます。抗コリン作用やドパミン受容体への作用も影響します。再取り込み阻害を行うSSRI/SNRI、特にパロキセチンで出現しやすいとされ、成書の副作用プロフィール比較表では、パロキセチン・セルトラリン・エスシタロプラム・ミルナシプランが強い側、フルボキサミン・デュロキセチンが一段軽い側、ミルタザピンは影が出ないと整理されています。
避けたいときの選択肢は、5-HT2Aを遮断する剤に移ることです。 5-HT2Aを遮断するトラゾドン、ミアンセリン、ミルタザピン、ボルチオキセチンでは、この副作用が非常に軽くなっているとされ、SSRIに追加することでSSRIによる性機能障害を緩和できる可能性も示唆されています。ミルタザピンは5-HT2遮断によってSSRI/SNRIで見られる不眠や性機能障害が出にくく、5-HT3遮断によって胃腸症状も出にくいと考えられています。関係性ができた段階でこの話題を出し、本人が希望する場合に発現の少ない薬剤への変薬を検討する、という進め方が示されています。
ただしトラゾドンには、影響の向きが逆の副作用があります。 性機能の低下という意味では生じにくい側の薬ですが、稀に持続性勃起症や性欲亢進が起こるという記載があります。つまり「性機能に影響しない薬」ではなく、「低下は起こしにくいが、別の方向の異常が稀に起こりうる薬」と理解するのが正確です。持続性勃起症は泌尿器科的な対応を要する場合があるため、この目的でトラゾドンを選ぶときは、起こりうることとして先に伝えておきます。
ボルチオキセチンについては、5-HT3遮断作用があるため胃腸症状・性機能障害・不眠といった副作用が少ないとする記載と、性機能障害の少なさは5-HT2A遮断によるところが大きいのではないかとする見方があります。どちらの説明でも結論は同じで、性機能障害を避けたいときの候補には入ります。
国内でブプロピオンは使えません。 海外でこの目的にしばしば挙がるノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬(NDRI)のブプロピオンは、国内未承認です。カナダのガイドラインでは徐放製剤が第一選択薬として推奨され増強療法にも挙げられていますが、成書はいずれも「本邦未発売」と明記しています。海外のガイドラインをそのまま持ち込むと、この場面で選べない薬を前提にした計画になります。
ボルチオキセチンをどう位置づけるか
この薬については、期待と根拠のずれを知っておくほうが安全です。
作用はセロトニン再取り込み阻害に加え、5-HT3拮抗、5-HT7拮抗、5-HT1D拮抗、5-HT1B部分作動、5-HT1A作動と多岐にわたります。低用量では再取り込み阻害は比較的弱く、抗うつ・抗不安に関わる5-HT1A刺激が特徴とされます。「三環系がダーティなら、これはクリーンなダーティを目指したもの」という位置づけが示されています。国内の用量は最大20mg/日、剤形は10mg錠と20mg錠です。
認知機能への効果は、慎重に扱う必要があります。 5-HT7受容体の阻害作用をもつことから認知機能の改善が前面に出されますが、「今のところは、認知機能の悪化はもたらさないかもしれない、という表現が適切」とする評価があります。抗精神病薬のリスペリドン(リスパダール)やアセナピンは非常に強い5-HT7阻害作用をもつが認知機能を改善するという明確なデータは出ていない、とも添えられています。ランダム化比較試験のメタ解析では認知機能への標準化平均差0.34(中等度の効果)とされますが、報告はわずか3報で異種性も高く、日本での報告はありません。 抗うつ薬間で認知機能への影響を見た研究では、SSRI・SNRI・三環系・NDRIの各カテゴリー間で差はなかったという結果もあります。
副作用には矛盾があります。 5-HT3受容体阻害作用が強いにもかかわらず、嘔気の副作用は強く出ます。5-HT受容体調整作用があるためSSRIやSNRIより性機能障害・不眠・焦燥は少ないが、吐き気などの胃腸症状は同等とする記載もあります。より多く見られる副作用は嘔気と下痢です。
代謝は主にCYP2D6で、他にCYP3A4/5、2C19、2C9などが関与します。自身のCYP阻害作用はありませんが、P糖蛋白に弱い阻害作用を示すことが報告されているため併用には注意が必要です。半減期は67.63時間と長く、血漿蛋白結合率は99%と高い。半減期が長いことから中断症候群がより少ないことが期待されるという利点があり、逆に肝腎機能低下では低用量から開始します。
総合的な位置づけについては、成書のあいだで温度差があります。 カナダのガイドラインでは第一選択薬とされる一方、コクランレビューは「急性期うつ病の治療でボルチオキセチンの位置づけは不明である」としており、臨床試験が少ないためSSRIやSNRIと同等という根拠に乏しく、現時点では最初の一手に推奨できるレベルにないという評価もあります。日本の承認試験では10mg群と最大20mg群でほとんど有効性に差がないという指摘や、全般不安症にはあまり有効性をもたらさないようだという見方もあります。新薬の割に薬価が低めで10mg錠が約160円、20mg錠が約240円という点、ただし後発品がない点は、長期処方の設計に関わります。
なお開発の経緯そのものが示唆的です。国内の第3相試験は2回連続で失敗し、3回目で対象患者の病名を「うつ病」から「反復性のうつ病」に変更したことで有効性に有意差がついたとされています。対象を絞ったことで診断の正確さが増した傍証とも読める、という議論が成書に載っています。
運転に関しては、フルボキサミンを除くSSRI/SNRIとボルチオキセチンの添付文書には「運転する時は注意すること」の記載があり、それ以外のほぼすべての向精神薬の添付文書には「運転禁止」と書かれています。就労中で運転が業務に含まれる患者では、この差が剤の選択をほぼ決めます。 ただし「注意すること」は運転を認めた記載ではありません。眠気の程度、併用薬、症状そのものによる集中力の低下を含めて、運転してよいかどうかはそのつど主治医が個別に判断する事項です。 「自分の薬は注意レベルだから運転してよい」と読める記述ではない点を、説明の場面でも明確にしておく必要があります。
少量で、別の狙いに使う場合――スルピリドの扱い
同じ薬が用量によって別のカテゴリーの薬になる、という現象がいちばん露骨に出るのがこの薬です。
スルピリド(ドグマチール)はD2とD3を遮断し、少しD4にも結合しますが、それ以外にはほとんど作用せず、抗コリン作用とα1遮断作用がきわめて弱い。低用量ではシナプス前のD2自己受容体に結合しやすく、結果としてドパミンを上げる方向に働きます。 600〜800mg/日以上の高用量になるとシナプス後のD2遮断が主になり、抗精神病薬らしさが出ます。D2受容体の部分作動薬が登場するずっと前に、同様の特徴をもっていた薬剤とも言えるという評価があります。国内の適応と最大用量は、胃・十二指腸潰瘍150mg/日(適宜増減)、うつ病・うつ状態600mg/日、統合失調症1200mg/日と、病名ごとに一桁違います。
やっかいなのは、この薬が精神科の外でも処方されることです。 「胃薬」として、あるいは「何かよくわからないが神経症のようなものか」という思いで出されます。そのため、内科で添付文書どおりの150mg/日を投与されて錐体外路症状や高プロラクチン血症による乳汁分泌をきたした患者によく遭遇するという記述があります。150mg/日でも人によってはかなり多い。処方整理の場面で「多剤使用されているのでまずはスルピリドを中止してみては」という提案が薬剤師から処方医に向けて出る例も示されています。これは処方元と情報を共有しながら医師が処方全体を組み替える話であり、服用している方やご家族が自己判断で中止する話ではありません。
お薬手帳を1冊にまとめる意味は、この薬でいちばんはっきり出ます。
したがって、狙う効果に対して用量を下げる運用になります。 食思不振が目立つ高齢者のうつ病、やや抑うつ的な中高年における原因不明の消化器症状といった場面で、12.5mg/日、多くても50mg/日を目処にし、高齢者では25mg/日を上限と考えるという運用が示されています。消化器症状が前面に出ているなら30〜50mg/日で経過を追ってもよい、肝機能が落ちている患者の食欲不振や軽い嘔気にごく少量(100mg/日以下)を出すことがある、といった記載もあります。明確なエビデンスはないが経験的にはたまに非常によく効く薬剤で、ごく低用量なら安全性も高いという評価です。これらは添付文書の用量設定から外れる運用であり、狙う症状によっては適応の範囲からも外れます。 処方のたびに適応と用量を確認する必要があります。
下げても消えないリスクがあります。 高プロラクチン血症は高頻度に起こります。アカシジアなどの錐体外路症状も意外に起こりやすく、特に高齢者では100mg/日という少量でも出てしまうことが多いとされます。低用量でもアカシジアや遅発性ジスキネジアを発現する恐れがあり、高齢者・女性・小児ではパーキンソン症候群や高プロラクチン血症に注意が必要と整理されています。QT延長や代謝系異常のリスクが高く推奨できない、と踏み込んで書いている成書もあります。薬剤性パーキンソニズムの被疑薬としてスルピリドが名指しで挙げられ、治療可能な認知機能低下の原因薬剤としても挙げられていることは、見落とせません。「胃薬」として長期に続いているスルピリドが、物忘れや歩行障害の原因だった――そういう例は実際にあります。ただしこれは、処方医が被疑薬を絞り込み、処方元とやりとりしながら中止や減量の可否を判断する作業です。 内科などから処方されている薬をご本人やご家族の判断で急にやめることは想定していません。気づいた点があれば、まず処方している医師に伝えるのが順序になります。
薬物動態は主に腎排泄で、血漿蛋白結合率が非常に低く、CYPへの影響は少ない。したがって併用薬の心配は少ない代わりに、腎機能障害では用量調節が必要です。半減期が短く1日3回投与になるため、アドヒアランス上は不利です。
アカシジアと焦燥の区別については、ここでも「身体がより落ち着かないのか、こころがより落ち着かないのか」と聞くのが要点として示されています。制吐薬のメトクロプラミドもドンペリドンもD2阻害作用によって錐体外路症状を起こしうるため、消化器症状で複数の科が関与している患者では、被疑薬が何剤も並びます。
なお国内でうつ病に関わる適応をもつ抗精神病薬はアリピプラゾール、スルピリド、レボメプロマジンのみで(レボメプロマジンの適応はうつ病そのものではなく「うつ病における不安・緊張」です)、スルピリドは日本独自の抗うつ薬適応をもつ薬剤として位置づけられます。もう一つ特殊な事実として、国内で市販されている抗うつ薬のうち、スルピリドを除くすべての薬剤の添付文書に、24歳以下の患者で自殺念慮・自殺行動のリスクが増加するとの報告があるため注意する旨が記載されているという指摘があります。
三環系・四環系がまだ選ばれる場面
新規抗うつ薬をすべて試したあとに残るのが、この群です。
三環系は「最後のほうで上手くまとめてくれるのが強み」と評され、離脱症状もSSRIほど厳しくないとされています。精神科病院には、クリニックで新規抗うつ薬はおろか種々の増強療法にも反応しなかった患者が紹介されてきますが、その際は三環系を使うことが多く、ノルトリプチリン、アミトリプチリン、アモキサピンが大活躍するという記述があります。神経障害性疼痛への適応をもつ三環系はアミトリプチリンのみで、末梢性神経障害性疼痛では1日10mgを初期用量とし、1日150mgを超えない規定です。慢性疼痛へのノルトリプチリンの治療用量は50mg/日程度で、安全を考えて5mg/日から開始し、プライマリケアでは30〜50mg/日を上限にしたいという運用が示されています。ノルトリプチリンの国内適応はうつ病・うつ状態のみですから、こちらは適応外使用です。
アモキサピンは用量で性格が変わる薬のもう一例です。 セロトニン・ノルアドレナリンの再取り込み阻害に加え5-HT2A/5-HT2C阻害とD2/D4遮断をもち、低用量ではモノアミン作動薬として、高用量ではD2遮断が主作用として振る舞います。D2遮断以外を期待するなら上限はほぼ100〜150mg/日まで、D2遮断に重きを置くなら200mg/日以上を目標にする、という目安が示されています。ただし「D2遮断作用をもつため精神病性うつ病に有効」という説明は安直だという指摘があります。 精神病性うつ病で脳内ドパミン濃度が上昇している一貫した証拠は得られておらず、D2遮断作用をもたないSSRIやSNRIの単剤でも改善することがあります。「精神病性うつ病は重度のうつ病であり、強い抗うつ作用をもつ三環系が有用だから使う」という理解のほうが実態に近いとされています。
代償は明確です。 過量服薬時の致死性は高い順に三環系>SNRI・NaSSA>SSRIとされます。三環系・四環系の多くは重症の心不全、QT延長、心筋梗塞の回復初期の患者に禁忌が設定されており、QT延長が起こりにくいとされるのは新規抗うつ薬のほうです。高齢者では投与前の心電図検査が推奨されます。児童・思春期のうつ病では、三環系は比較試験でプラセボへの優位性が示されず有効な治療薬でないと結論づけられています。
MAO阻害薬は国内で使えません。 抗うつ薬が臨床に登場したのは1957年、三環系イミプラミンとMAO阻害薬イプロニアジドの導入でした。ところがイプロニアジドは肝機能障害などの副作用が多く、1960年代の比較試験でも、イミプラミンと通電療法が有意に有効だったのに対しMAO阻害薬では有意差がつきませんでした(用量が現在より低かったという批判はあります)。チーズやチョコレート、赤ワインなどチラミンを多く含む食物との併用で高血圧を生じる問題も明らかになり、日本では多剤併用の習慣があったため、三環系との併用禁止も使いにくさにつながりました。国産品も定着せず、以後MAO阻害薬は発売されていません。MAO-B阻害薬のセレギリンは抗パーキンソン病薬として国内にありますが、うつ病の適応はありません(米国では2006年から承認)。改良型の可逆性MAO-A阻害薬も国内では使用されていません。したがって、海外の段階治療のアルゴリズムで第4段階に置かれているMAO阻害薬は、国内では単純に空白になります。 なお抗うつ薬の多くはMAO阻害薬との併用でセロトニン症候群を呈するおそれがあり併用禁忌です。
国内で使えない薬は他にもあります。ネットワークメタ解析に含まれる21薬剤のうち、アゴメラチン、ブプロピオン、シタロプラム、デスベンラファキシン、フルオキセチン、レボミルナシプラン、ネファゾドン、レボキセチン、ビラゾドンは本邦未承認とされています。海外の比較表を読むときは、選べない薬が半分近く混ざっていることを意識しておく必要があります。
高齢者・身体合併症でこれらの剤を選ぶ/避ける
高齢者で血中濃度が上がることが知られている抗うつ薬として、フルボキサミン、デュロキセチン、ミルタザピン、パロキセチン、エスシタロプラムが挙げられています。この記事の対象薬のうち2剤が入っています。中枢神経抑制薬や抗コリン薬への感受性が増大するため、若年者の1/3〜1/2程度の少量から開始して効果と有害事象を確認しながら増量する、というのが原則です。
身体疾患へのうつ病併存率は高く、この場面は例外ではありません。 成書の数字では、癌8〜24%、糖尿病28%、心筋梗塞29%、慢性腎不全・血液透析39%、COPD 27%、関節リウマチ39%、脳卒中29〜33%、パーキンソン病35%、てんかん23%とされます。ただし身体疾患に併存したうつ病への抗うつ薬の有効性は限定的で、癌・心筋梗塞・脳卒中ではわずかな有効性、糖尿病ではSSRIの有効性が示されている、とまとめられています。虚血性心疾患のうつ病には心理学的介入が有効で心血管死亡率の減少が示されたメタ解析もあります。「身体疾患があるからこそ薬で」ではなく、「身体疾患があるからこそ薬以外も」という向きになります。
剤ごとの制約は次のように整理できます。デュロキセチンとベンラファキシンは高度の肝機能障害・高度の腎機能障害で禁忌。デュロキセチンはさらにコントロール不良の閉塞隅角緑内障とMAO阻害薬投与中も禁忌で、CYP1A2阻害薬は禁忌ではないが併用注意で、フルボキサミンなどとの併用では血中濃度が上がる。ミルナシプランは腎排泄型で腎機能障害では血中濃度が上がりうるうえ、尿閉に禁忌。SNRI全般で排尿困難と血圧上昇に注意し、高齢者では尿閉による腎後性腎不全を意識する。ボルチオキセチンはP糖蛋白に弱い阻害作用があるため併用注意で、肝腎機能低下では低用量から。心不全の場面では、ミルナシプラン・デュロキセチン・ベンラファキシン・ミルタザピンについて臨床でP糖蛋白を阻害する報告がなされていないとされており、ここではボルチオキセチンだけが注意側に回ります。
高齢者のうつ病そのものの性格も、剤の選択に影響します。 抑うつ気分よりも倦怠感・痛み・しびれなどの身体愁訴や体重減少、もの忘れなどの認知機能低下の訴えが前景に立ちやすいとされます。痛みと食欲低下と認知機能の訴えが同時に来る――つまりこの記事で扱った剤の適応場面が重なりやすいわけです。それでも軽度〜中等度では精神療法(特に認知行動療法)が第一選択として推奨され、薬物療法ではSSRI・SNRIが原則、ベンゾジアゼピン系の慢性投与は避けることが推奨されています。高齢者のうつ病有病率は疫学調査で0.6〜2.0%と他の年代より低い一方、70歳以上の約8.0%が抗うつ薬を処方されているという報告があり、乖離が指摘されています。この数字は、選び分けの技術以前に「そもそも出すべきか」を問うています。
食欲がかなり低下している場合や消化性潰瘍を合併している場合にスルピリドがしばしば用いられる、という記載もありますが、前述のとおり高齢者では少量でも錐体外路症状が出やすい剤です。レビー小体型認知症では向精神薬過敏性に注意し、少量開始・短期間での評価・服薬方法の簡素化・多剤回避を基本とします。
選び分けの前提――抗うつ薬全般に共通する注意
剤ごとの持ち味を並べたあとで、共通の土台を確認しておきます。
アクチベーション症候群
投与開始初期や増量時に焦燥感・不安の増大、不眠、アカシジア、敵意・易刺激性・衝動性の亢進、躁・軽躁状態、パニック発作が生じえます。国内の添付文書には24歳以下の患者で自殺念慮・自殺企図のリスクが増加するとの報告がある旨が記載されています(前述のとおりスルピリドを除く)。一方でスウェーデンの約50万人規模の観察研究では年齢を問わずSSRIが自殺リスクをむしろ軽減するという結果で、リスクが最大だったのはSSRI開始の30日前でした。「自殺リスクについては断言できない、ただし若年者では高めるかもしれない」が冷静な判断――そういう見方が示されています。
錐体外路症状
抗うつ薬でも錐体外路症状は生じます。5-HT2A/5-HT2C刺激を介して線条体のドパミン放出が抑制されるためで、抗うつ薬全体では「歯ぎしり」の報告オッズ比がやたらと高いという指摘もあります。
低ナトリウム血症/SIADH
SIADHの70%以上が薬剤性で、なかでも抗うつ薬によるものが多かったという報告があり、発症率は0.5〜32%と幅があります。高齢者、特に女性や治療初期がハイリスクです。SSRIでは内服後2〜4週での発症が報告されますが遅発例もあり、中止後は数日で回復します。
出血傾向と骨折
血小板のセロトニン取り込み阻害により凝集能が低下し、上部消化管出血や脳出血のリスクが上がります。NSAIDsとの併用でさらに跳ね上がります。SSRI/SNRIは三環系を含む他の抗うつ薬より骨折が多いことが示唆され、ステロイドやプロトンポンプ阻害薬など転倒骨折リスクの高い薬剤との併用では、いっそう慎重になります。
QT延長
三環系とエスシタロプラムは用量依存的にQTが延長します。新規抗うつ薬のなかでも、この記事で扱ったミルタザピンとベンラファキシンで有意な延長が指摘されており、トラゾドンやスルピリドも添付文書の重大な副作用にQT延長が挙がる剤です。 添付文書の禁忌記載を薬理学的な危険度の順位と読み違えないことは、第1回でも触れたとおりです。抗うつ薬使用時はQT(450msを超えないよう)と低ナトリウム血症のモニタリングが必要とされています。
セロトニン症候群
精神症状(失見当識・錯乱・不安・焦燥)、神経・筋症状(腱反射亢進・ミオクローヌス・筋強剛・振戦・失調)、自律神経症状(発熱・下痢・発汗・頻脈・血圧変動)の3群で捉えます。トリプタン系、MAO阻害薬、セント・ジョーンズ・ワート、トリプトファンの摂取でも起こりえ、高齢者では常用量でも起こることがあります。
そして最後に、患者が何をつらいと感じているかです。 抗うつ薬の服用歴のあるうつ病当事者1,187人を対象とした調査では73%が副作用を経験しており、最もつらい副作用として眠気、だるさ、胃腸症状への配慮が挙げられています。この記事で並べた剤の持ち味は、そのほとんどが眠気・食欲・胃腸症状と裏表です。 効果に大きな差がつかない薬同士を選ぶとき、決め手になるのは患者が何を嫌かです。「効果が強く、副作用がほとんどないという完璧な抗うつ薬は残念ながら存在しないため、その利点と欠点を十分に説明したうえで当事者に選択を促すことが最善」という言葉は、この記事の結論としても適当でしょう。
参考にした書籍
この記事は、次の書籍の記述を要約・再構成して作成しました(原文の転載ではありません)。用量・適応・エビデンスは各書の執筆時点の記載に基づいています。実際の処方にあたっては、最新の添付文書と各学会のガイドラインをご確認ください。
- 対話で学ぶ精神症状の診かた(宮内倫也・樫尾明彦/南山堂)
- ストレスチェック面接医のための メンタル産業医入門(櫻澤博文/日本医事新報社)
- 気分症群(神庭重信 編/中山書店)
- 精神科薬物療法マニュアル(日本病院薬剤師会 精神科専門薬剤師部門 試験委員会 編/南山堂)
- 精神科臨床Q&A for ビギナーズ(宮内倫也/医学書院)
- 専門医のための臨床精神神経薬理学テキスト(日本臨床精神神経薬理学会専門医制度委員会 編、下田和孝・古郡規雄 責任編集/星和書店)
- ジェネラリストのための 向精神薬の使い方(宮内倫也/日本医事新報社)
- こうすればうまくいく! 精神科臨床はじめの一歩(宮内倫也/中外医学社)
- 本当にわかる 精神科の薬 はじめの一歩(稲田健 編/羊土社)
- 研修医・コメディカルのための 精神疾患の薬物療法講義(功刀浩 編/金剛出版)
- 精神診療プラチナマニュアル(松崎朝樹/メディカル・サイエンス・インターナショナル)
- 精神科医×薬剤師 クロストークから読み解く精神科薬物療法(鈴木利人・渡邊衡一郎・松田公子・林昌洋 編/南山堂)
- 神経症状のみかた(福武敏夫)
よくある質問
SSRI以外の抗うつ薬は、SSRIより強い薬なのですか。
強さの順に並んでいるわけではありません。効き方の特徴が違うため、体に出ている症状や困りごとに合わせて選ばれます。たとえば痛みを伴う場合、意欲が出ない場合、眠れず食欲も落ちている場合とで、向く薬が変わります。
同じうつなのに、人によって違う薬が出るのはなぜですか。
うつと一口に言っても、前に出ている症状は人によって違います。眠れないことが中心の方と、体の痛みがつらい方では、選ぶ薬が変わります。ほかに飲んでいる薬や体の状態も判断材料になります。
少ない量で処方された薬があります。効かないのではないですか。
抗うつ薬の中には、少ない量では抗うつ作用とは別のはたらき(眠りを助けるなど)を狙って使われるものがあります。量が少ないことが手抜きを意味するわけではありません。どういう狙いで出ているかは主治医に聞いてみてください。