福岡県春日市須玖北4丁目34 2階
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統合失調症のイメージ画像

統合失調症は、考えや気持ちをまとめる脳の働きが一時的にうまく機能しなくなり、実際にはない声が聞こえる(幻聴)、事実とは考えにくいことを強く確信する(妄想)、意欲がわかなくなる、といった症状が現れる病気です。およそ100人に1人がかかるとされ、決して珍しい病気ではありません。10代後半から30代に発症することが多く、男女差はほとんどないといわれています。

かつては治りにくい病気と考えられていましたが、現在は治療薬とリハビリテーションの進歩により、多くの方が症状を落ち着かせ、学業や仕事、家庭での生活を続けられるようになっています。発症からできるだけ早く治療を始めること、良くなった後も治療を続けることが、回復の鍵を握るとされています。

こんなサイン・症状はありませんか

ご本人は変化に気づきにくいことも多く、ご家族から見た様子も大切な手がかりになります。

  • 悪口や噂、命令のような「声」が聞こえる気がする
  • 見られている、監視されている、狙われている感じがする
  • 周囲の出来事やテレビの内容が、自分に関係しているように思える
  • 自分の考えが周囲に伝わってしまう、抜き取られる感じがする
  • 頭の中に雑念が次々と浮かび、考えがまとまらない
  • 眠れない日が続き、周囲の音や光、人の視線がやけに気になる
  • 人と会うのを避けて閉じこもりがちになり、表情が乏しく、好きだったことにも興味を示さなくなった
  • 学業や仕事の能率が、以前と比べて急に落ちた
  • (ご家族から見て)独り言やひとり笑いが増えた、話がかみ合いにくくなった

こうした変化は強いストレスや睡眠不足、他の病気でも起こりますが、いくつか重なって続いているときは、早めに一度ご相談ください。

症状の詳しい説明

症状は、大きく「陽性症状」「陰性症状」「認知機能の症状」の3つに分けて整理されます。

陽性症状(幻覚・妄想など)

本来はないものが「ある」ように体験される症状です。

最も多いのは幻聴で、悪口や噂をする声、命令してくる声のほか、行動に口出しをしてくる声や、複数の声の会話のように聞こえるものもあります。妄想では、「見張られている」「危害を加えられる」といった被害的な内容や、周囲の何気ない出来事を「自分へのあてつけだ」と感じる関係づけがよくみられます。このほか、自分の考えが他人に伝わってしまう、自分の行動が誰かに操られている(させられ体験)など、「自分」と「自分以外」の境目があいまいになる体験も、統合失調症に比較的特徴的とされています。

幻聴も妄想も、ご本人にとっては「本当にそうとしか思えない」現実の体験として起こります。周囲が理屈で説明しても訂正できないのは症状の性質そのものであり、治療では内容の正しさを議論するのではなく、体験によるつらさを和らげることを目指します。幻聴の聞こえ方は幻聴についての解説記事で、妄想の中身と対応(前触れの妄想気分を含む)は妄想のある方へのご家族の接し方で詳しく解説しています。

陰性症状(意欲や感情の働きが低下する症状)

本来あるはずの働きが「失われる」症状です。意欲がわかず、入浴や着替えなど身のまわりのことがおっくうになる、感情の動きが乏しく表情や声の抑揚が減る、会話が減る、人付き合いを避けて閉じこもる、といった形で現れます。幻聴や妄想が落ち着いた後の時期に目立ちやすく、周囲からは怠けているように見えることがありますが、これは病気の症状であり、本人の性格や努力不足のせいではありません。閉じこもりの背景に幻聴への恐怖やうつ状態、お薬の影響が隠れていることもあり、診察ではどの理由かを分けて確かめます。詳しくは統合失調症の陰性症状の記事で解説しています。

認知機能の症状

記憶力・注意力・段取りを立てる力など、「考える」働きに関わる症状です。新しいことを覚えにくい、集中が続かない、優先順位をつけて進めるのが難しい、といった形で現れます。目立ちにくい一方で学業や仕事への影響が大きく、リハビリテーションで重点的に取り組む領域です。

原因・メカニズム

統合失調症の原因はまだ十分には解明されておらず、複数の要因が重なって発症すると考えられています。代表的な仮説は次のとおりです。

  • ドーパミン仮説: 脳内で情報を伝える物質のひとつ、ドーパミンの働きが過剰になって幻聴や妄想が生じるという考え方です。抗精神病薬がドーパミンの働きを調整して効くことが根拠のひとつです。
  • 神経発達の仮説: 脳が発達する過程のわずかな不具合が、思春期以降の発症に関係するのではないかという考え方です。
  • 脆弱性ストレスモデル: もともとストレスへの敏感さ(脆弱性)を持つ人に、進学・就職・人間関係の変化などのストレスが重なったとき発症するという考え方で、治療や再発予防を考えるうえで広く使われています。

遺伝的な要因も一部関与するとされていますが、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児でも両方が発症するとは限らず、遺伝だけで決まる病気ではありません。親の育て方や本人の性格の弱さが原因ではないことも、はっきり申し上げておきたい点です。

診断と、似た状態との違い

診断には、アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5)が広く使われています。要点をまとめると、幻覚・妄想・まとまりのない会話・ひどくまとまりのない行動または緊張病性の行動・陰性症状のうち2つ以上(幻覚・妄想・まとまりのない会話のいずれかを必ず含む)が1か月以上続き、仕事や対人関係などの機能が低下した状態が、前後の時期を含めて6か月以上続く場合に診断されます。

ここでいう緊張病性の行動とは、話しかけても反応せず動かなくなる、同じ姿勢を長時間とり続けるなど、体の動きや反応が極端に変化する状態のことで、一般的な「緊張」や「あがり」とは異なります。

血液検査や画像検査だけで診断できる病気ではないため、診察では経過や体験の内容をうかがいながら、次のような似た状態との見分けを行います。

  • 双極性障害(躁うつ病): 気分が高ぶる躁状態では誇大的な妄想や興奮がみられ、区別が難しいことがあります。気分の波が主体かどうかを経過で判断します。詳しくは躁うつ病(双極性障害)のページをご覧ください。
  • うつ病に伴う精神病症状: 重いうつ状態では、罪の意識や貧困についての妄想を伴うことがあります。
  • 薬物やアルコール、身体の病気による幻覚・妄想: 覚醒剤などの薬物、甲状腺の異常、脳炎などでも幻覚や妄想が生じることがあり、検査や経過で除外します。
  • 強いストレスへの一時的な反応: 大きなストレスの直後に一時的に妄想的な考えが生じ、短期間で回復する状態とも区別します。
  • 認知症: 高齢で幻覚や妄想が現れた場合には、認知症との見分けが必要です。詳しくは認知症のページをご覧ください。

また、「幻聴がある=統合失調症」と、ひとつの症状だけで診断が決まるわけでもありません。幻聴は解離や強い疲労、寝入りばな・寝起きなど、統合失調症以外でも起こりうる体験です。診察では、症状の起こる状況や確信の強さ、睡眠、生活への支障を組み合わせて確かめ、初診で診断を急がず、経過を追いながら判断を修正していきます。

治療

治療の柱は「薬物療法」と「心理社会的治療(リハビリテーションを含む)」の2つで、両方を組み合わせて回復を目指します。

薬物療法

軸になるのは抗精神病薬です。神経伝達物質の働きを調整して、幻聴や妄想、興奮などの症状を和らげる効果が期待できます。現在は、副作用が比較的少ない第二世代(非定型)抗精神病薬が主に使われています。

効果はすぐに現れるとは限らず、数週間かけて少しずつ症状が和らいでいくことが多いです。眠気、体重増加、体のこわばり、じっとしていられない感じなどの副作用が出ることがありますが、量の調整や薬の変更で対処できることが多いため、我慢せず主治医にお伝えください。副作用への対処は抗精神病薬の副作用の記事で詳しく解説しています。

症状が良くなった後も服薬を続けることが大切で、自己判断でやめると再発の危険が大きく高まることが知られています。飲み忘れが心配な方には、2〜4週間に1回の注射で効果が続く持効性注射剤という選択肢もあります(持効性注射剤(LAI)の記事。当院では行っていません)。

精神療法・心理社会的治療

薬物療法とあわせて、次のような取り組みが回復を支えます。

  • 心理教育: 病気や薬について本人と家族が学び、再発のサインを知る取り組みです。
  • 支持的な精神療法: 診察のなかで不安や困りごとを整理し、回復への見通しを一緒に立てます。
  • 社会生活技能訓練(SST)やデイケア: 対人関係の練習や生活リズムづくりを、段階を踏んで行うリハビリテーションです。

精神療法の種類と役立ち方は心理療法(カウンセリング)とは何かの記事で解説しています。

生活・セルフケア

生活面では、睡眠リズムを整えることが特に大切です。眠れない日が続くのは調子を崩す前触れであることも多く、整える工夫は睡眠衛生の記事で紹介しています。

幻聴が続いているときは、「声に反論しない・命令に従わない・ほどよく距離を取って受け流す」といった付き合い方が役立つことがあります。合う方法は人により異なるため、主治医と相談しながら見つけてください。

経過と再発予防

経過は、おおまかに4つの時期に分けて考えられます。

  1. 前駆期: 幻聴や妄想がはっきり現れる前に、不眠や不安、音や光への敏感さ、仕事ぶりの低下など、はっきりしない不調が数か月続く時期。「疲れているだけ」と見過ごされがちです。
  2. 急性期: 幻聴や妄想、興奮などの陽性症状が強く現れる時期。休養と薬物療法が最優先です。
  3. 休息期(消耗期): 陽性症状が落ち着く一方、意欲の低下や眠気、疲れやすさが目立つ時期。焦らずエネルギーを蓄える時期です。
  4. 回復期: 少しずつ意欲や集中力が戻り、リハビリを通じて生活や社会参加を広げていく時期。

回復のゴールは症状が消えることだけではなく、学業や仕事、人との付き合いなど「自分らしい生活」を取り戻すところまでを含みます。

経過には個人差が大きく、一度の発症で長く安定する方もいれば、再発を繰り返す方もいます。再発を防ぐうえで最も重要なのは、症状が落ち着いた後も服薬と通院を続けることです。眠れない・焦りが強い・音に敏感になるなど「調子を崩す前のサイン」をご家族や主治医と共有しておくと、早めの対応につながります。再発を重ねるほど回復に時間がかかりやすいとされるため、「良くなってからの治療」こそが大切です。

仕事・生活への影響と使える制度

急性期には学業や仕事が難しくなることがありますが、治療を続けながら働いている方は大勢います。回復の段階に応じて、次のような制度が利用できます。

  • 自立支援医療: 通院医療費の自己負担が原則3割から1割に軽減される制度で、治療を長く続ける統合失調症では特に役立ちます。詳しくは自立支援医療制度についてをご覧ください。
  • 休職と傷病手当金: お勤めの方が療養のために休む場合は、診断書による休職と、給与のおよそ3分の2にあたる傷病手当金の制度があります。詳しくは休職についてと傷病手当金についてをご覧ください。
  • 精神障害者保健福祉手帳・障害年金: 症状や生活への影響の程度によっては、手帳の取得や障害年金の申請ができる場合があります。診察の際にご相談ください。
  • デイケア・就労支援: 生活リズムづくりや就労に向けた練習の場として、デイケアや就労移行支援があります。

ご家族ができること

回復には、ご家族の関わり方が大きな支えになります。幻聴や妄想を頭ごなしに否定したり議論で説得しようとしたりせず、「そう感じてつらいのだね」と、つらさのほうを受け止めてみてください。強い批判や過干渉のある環境では再発が起こりやすいとされ、穏やかで安心できる雰囲気そのものが治療的に働きます。

服薬の乱れや、病気と思っていないように見えることを責めるのは逆効果になりがちです。飲み忘れや中断が分かったときは、主治医へ伝えるよう促してください。支える側が疲れ切らないよう、ご家族ご自身の休息も大切にしてください。受診を嫌がるときの勧め方など、場面ごとの対応は統合失調症の家族ができることQ&Aで詳しく解説しています。

受診の目安と当院での診かた

冒頭の「こんなサイン・症状はありませんか」に挙げた変化が、ご本人の実感としても、ご家族から見た様子としても数週間続いているときは、早めの受診をおすすめします。治療の開始が早いほど、経過が良好になりやすいためです。

当院では、初診時にこれまでの経過や体験の内容、生活の状況をゆっくりうかがい、統合失調症かどうか、他の病気の可能性も含めて慎重に評価します。そのうえで、薬物療法と生活面の工夫を組み合わせた治療方針を、ご本人・ご家族と相談しながら決めていきます。症状の程度によって入院治療が望ましいと判断される場合には、入院設備のある医療機関をご紹介し、退院後の通院治療を引き継ぐ形で連携します。自立支援医療などの制度のご案内や診断書の作成にも対応しています。

受診が初めての方は、初めての方へで受診の流れをご案内しています。「統合失調症かどうか分からない」「家族のことを相談したい」という段階でも構いません。すでに通院中で、急に症状が強くなった・自分や人を傷つけてしまいそうといった差し迫った状況のときは、ためらわず主治医に連絡するか、救急(119)を利用してください。

参考文献

よくある質問

統合失調症は治りますか?

適切な治療を続けることで、多くの方は症状が落ち着き、自分らしい生活を取り戻していくことが期待できます。特に早い段階で治療を始めた場合、経過が良好なことが多いとされています。焦らず、治療を続けていくことが回復への近道です。

薬はずっと飲み続けなければいけませんか?

症状が落ち着いた後も、再発を防ぐために服薬を続けることが強くすすめられています。自己判断で中断すると再発の危険が大きく高まることが知られています。量や種類の調整、やめられるかどうかの判断は、必ず主治医と相談しながら進めてください。

統合失調症は遺伝しますか?

遺伝的な要因は一部関与するとされていますが、遺伝だけで決まる病気ではありません。同じ遺伝子を持つ一卵性双生児でも両方が発症するとは限らず、ストレスや環境など複数の要因が重なって発症すると考えられています。

本人が受診を嫌がるとき、家族はどうすればよいですか?

幻聴や妄想を頭ごなしに否定して説得しようとすると、かえって心を閉ざしてしまうことがあります。眠れない、疲れているなど、本人自身が困っていることを入り口に受診を勧めるのがひとつの方法です。対応に迷うときは、まずご相談ください。

統合失調症でも仕事は続けられますか?

症状の安定の程度によりますが、治療を続けながら働いている方は大勢います。急性期には休養が必要でも、回復に合わせてデイケアや就労支援などを利用しながら、段階的に復帰する道があります。無理のないペースを主治医と相談しながら進めることが大切です。

この病気で使われることのあるお薬

治療で使われることのある代表的なお薬です。実際にどのお薬を使うか(使わない場合も含めて)は、診察のうえで医師が一人ひとりに合わせて判断します。

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執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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