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連載「適応障害と休職ガイド」第3回(全3回) 第1回から読む →

はじめに

適応障害と診断されたとき、多くの方がまず知りたいのは「どのくらいで治るのか」ということではないでしょうか。仕事や家庭の予定、休職期間の見通し——回復までの時間がわからないと、いろいろなことが決められず不安になります。

この記事では、適応障害の回復までの期間の目安と典型的な経過、長引くときに考えるべきこと、再発を防ぐ工夫について解説します。

「6か月以内」という目安の意味

適応障害の診断基準(DSM-5)には、「ストレスのもと(ストレス因)やその結果がなくなれば、症状はその後6か月以上続くことはない」という項目があります。ここから、「適応障害はストレスのもとから離れられれば、6か月以内に落ち着くことが多い」という目安が広く知られています。

ただし、この「6か月」には注意点があります。起点は「ストレスのもとがなくなったとき」であって、「症状が始まったとき」ではありません。つまり、ストレスが続いている限り、症状も続きうるということです。実際、異動や休職などでストレスから離れられた方が数週間〜数か月で回復していく一方、ストレスのただ中に居続けた場合は、それ以上に長引くことがあります。

回復までの典型的な経過

回復のペースには個人差が大きいものの、休職などでストレスから離れた場合、おおまかには次のような経過をたどることが多いです。

最初の数週間——まず「疲れ」が出る

ストレスから離れた直後は、ほっとすると同時に、張りつめていた緊張がゆるんで強い疲労感や眠気が出ることがあります。また、「休んでいていいのだろうか」という罪悪感や焦りで、かえって気分が沈む方もいます。この時期はまだ回復を実感しにくいのが普通で、心と体を休めることに専念する期間です。

数週間〜数か月——波を繰り返しながら底上げされる

睡眠と食欲が戻り、少しずつ「何かしてみようか」という気持ちがわいてきます。ただし回復は一直線ではなく、調子の良い日と悪い日を繰り返しながら、全体として少しずつ底上げされていくのが一般的です。一時的に落ち込む日があっても、「後戻りした」と悲観する必要はありません。

回復期——ストレスのもととの向き合い方を決める

日常生活が安定してきたら、復職や環境の変更など、ストレスのもとにどう向き合うかを考える段階に入ります。適応障害の場合、症状が消えることと、ストレスのもとに再び近づけることの間には、もうひと山あります。ここを焦ると再発しやすいため、復帰の進め方は主治医と相談しながら段階的に進めることが大切です(詳しくは「適応障害で休職するには」をご覧ください)。

長引くときに考える3つのこと

「もう何か月も経つのに良くならない」というときには、次の3つを確認します。

①ストレスのもとから、本当に離れられているか

休職していても、職場から頻繁に連絡が来る、復職期限が迫るプレッシャーが常にある、といった状態では、ストレスから十分に離れられていないことがあります。また、ストレスの原因が家庭内にある場合など、物理的に離れることが難しいケースもあります。この場合は、距離のとり方そのものを工夫する必要があります。

②診断が変わってきていないか

落ち込みや興味の低下が重く、ほとんど一日中・毎日続くようになっている場合は、適応障害ではなくうつ病の状態に進んでいる可能性があります。うつ病であれば、抗うつ薬による治療など、治療方針が変わってきます。「最初は適応障害と言われたのに長引いている」というときは、診断の見直しが必要なサインかもしれません。見分け方は「適応障害とうつ病の違い」で詳しく解説しています。

③繰り返す背景に、その方自身の要因がないか

環境を変えても不調を繰り返す場合は、ストレスの受け止め方の癖、業務内容との相性、発達の特性(ADHD・ASD)などが背景に関わっていることがあります。この場合、環境調整に加えて、背景に合わせた対策を立てることが回復と再発予防の鍵になります。

再発を防ぐために

適応障害は、回復したあとの工夫で再発のリスクを減らせる状態です。

  • 自分のストレスサインを知る:眠れなくなる、食欲が落ちる、ミスが増える——調子を崩す前に現れる自分なりのサインを把握し、サインが出たら早めに休む・相談する。
  • ストレスの正体を言葉にしておく:何が・どんなときに負担になるのかがわかっていれば、次に似た状況が来たときに早めに手を打てます。
  • 相談先を確保しておく:職場の上司や産業医、家族、主治医など、「調子が崩れそうなときに話せる相手」を決めておくことが、早期対応につながります。

受診の目安

  • 気分の落ち込みや不安、体の不調が2週間以上続いている
  • ストレスのもとから離れたのに、数か月経っても回復を感じられない
  • 休日も一日中気分が重く、何をしても楽しめなくなってきた
  • 「消えてしまいたい」という気持ちがよぎることがある

最後の項目にあてはまるときは、特に早めにご相談ください。すでに通院中の方は主治医に連絡し、気持ちが切迫しているときは、ためらわず救急(119)を利用してください。

当院では、適応障害の診断・治療、休職や復職のご相談、経過が長引く場合の診断の見直しまで対応しています。受診の流れは「初めての方へ」をご覧ください。

参考文献

よくある質問

適応障害は自然に治ることもありますか?

ストレスのもとが自然に解消された場合(異動で環境が変わった、など)には、治療を受けなくても症状が落ち着くことはあります。ただし、ストレスが続いているのに我慢を重ねると、症状が重く長引き、うつ病に相当する状態へ進むこともあります。つらさが2週間以上続くときは、受診をおすすめします。

休職して1か月経ちますが、まだつらいです。遅すぎますか?

遅すぎることはありません。休み始めの時期は、緊張がゆるんで疲れが一気に出たり、休んでいることへの罪悪感で気分が沈んだりすることも多く、回復は一直線には進みません。良い日と悪い日を繰り返しながら、数週間〜数か月かけて底上げされていくのが一般的な経過です。

薬を飲めば早く治りますか?

適応障害の治療の中心は環境調整と休養で、薬はつらい症状(不眠・強い不安など)をやわらげる補助的な役割です。薬によって回復の土台となる睡眠や休養がとりやすくなることはありますが、薬だけで根本的に解決するものではないため、環境調整とあわせて進めることが大切です。

症状がなくなったら、すぐに通院をやめてよいですか?

症状が落ち着いても、復職やストレスのもとへの再接近というもうひと山が残っていることが多いため、そこを越えて安定するまでは通院を続けることをおすすめします。終え方のタイミングは、主治医と相談しながら決めていきましょう。

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執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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