福岡県春日市須玖北4丁目34 2階
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うつ病のイメージ画像

うつ病は、気分の落ち込みや、物事への興味・喜びの喪失が2週間以上ほぼ毎日続き、生活に支障が出る病気です。単なる「気の持ちよう」や「怠け」ではなく、脳の働きの不調が関係していると考えられており、誰でもかかる可能性があります。日本では、およそ100人に6人程度が生涯のうちに経験するとされ、女性は男性の1.5倍ほど多いことが知られています。

まじめで責任感が強い方が、環境の変化や重なるストレスのなかで頑張り続けた末に発症することも少なくありません。「自分が弱いせいだ」と責めてしまう方が多いのですが、うつ病は治療によって回復が期待できる病気です。休養・薬物療法・精神療法などを組み合わせながら、焦らず段階を踏んで回復を目指していきます。

このページでは、うつ病の症状・原因・診断・治療から、再発予防、休職や傷病手当金などの制度までの全体像をまとめました。気になるところから読んでいただければと思います。

こんなサイン・症状はありませんか

次のような状態が、最近2週間ほど続いていないか振り返ってみてください。

  • 気分が沈み、憂うつな状態がほとんど一日中続いている
  • 以前は楽しめていたことに興味がわかない、楽しいと感じられない
  • 寝つけない、夜中や明け方に目が覚める、逆に眠りすぎてしまう
  • 食欲がない、または食べすぎてしまう(体重が減った・増えた)
  • 体がだるく、休んでも疲れが取れない
  • 頭痛・肩こり・胃腸の不調など、検査では異常のない体の不調が続く
  • 集中できず、仕事や家事で普段しないようなミスが増えた
  • 自分には価値がないと感じ、些細なことで自分を責めてしまう
  • 動きや話し方が遅くなったと言われる、あるいは焦りやいらだちが強い
  • 消えてしまいたい、死にたいという考えが浮かぶ

あてはまる項目があるからといって、直ちにうつ病と診断されるわけではありません。疲れや一時的なストレス反応でも似た状態は起こります。ただ、複数の項目がほとんど毎日、2週間以上続き、生活に影響が出ている場合は、一度ご相談いただくことをおすすめします。

「ただの疲れ」「怠け」との見分け方

単なる疲れであれば、休めばある程度回復し、好きなことにはまだ心が動きます。うつ病では、休んでも疲れが抜けず、以前なら楽しめたことにも心が動かなくなる点が異なります。「サボりたい」のではなく「やろうとしても体と気持ちがついてこない」状態で、本人は怠けるどころか「やらなければ」と焦り、自分を責めていることがほとんどです。診察では「気分が沈む」という言葉だけでなく、「何をするのも億劫」「楽しみがなくなった」「テレビを見ても頭に入らない」といった表現もうつ状態の大切なサインとして受け止めています。うまく言葉にできなくても、感じているままをお話しいただければ十分です。

症状の詳しい説明

うつ病の症状は「気分」だけでなく、体や思考にも幅広く現れます。大きく3つに分けて整理します。

こころの症状

中心となるのは「抑うつ気分」と「興味・喜びの喪失」です。気分が沈み、悲しくないのに涙が出る、朝方に特につらいという方もいます。また、趣味や好きだったことに心が動かなくなり、「何をしても楽しくない」と感じられるようになります。

進行すると、「自分には価値がない」「周りに迷惑をかけている」といった無価値感や罪悪感が強まることがあります。こうした考えは病気の症状として生じている場合が多く、回復とともに和らいでいくことが期待できます。

からだの症状

睡眠の変化(寝つけない・途中で目が覚める・眠りすぎる)、食欲や体重の変化、強い倦怠感は、うつ病でよくみられる体のサインです。頭痛、肩こり、動悸、胃腸の不調など、内科で検査をしても異常が見つからない不調が続くこともあります。気分の落ち込みよりも体の症状が前面に出て、最初は内科を受診される方も珍しくありません。

思考・行動の症状

集中力や決断力が落ち、本や画面の内容が頭に入らない、些細なことが決められない、といった変化が出ます。動作や話し方が目に見えて遅くなる方(精神運動制止)もいれば、じっとしていられない焦りが目立つ方もいます。

「死にたい」という考えが浮かぶとき

うつ病が重くなると、「消えてしまいたい」「死にたい」という考え(希死念慮)が繰り返し浮かぶことがあります。これは病気の症状のひとつであり、あなたの本心や弱さではありません。こうした考えが続くときは、できるだけ早く受診してください。すでに通院中の方は主治医に伝えてください。自分を傷つけてしまいそうなど差し迫った状況では、ためらわず救急(119)に連絡してください。

原因・メカニズム

うつ病の原因は、まだ完全には解明されていません。現時点では、複数の要因が重なって発症すると考えられています。

よく知られているのは「モノアミン仮説」です。セロトニンやノルアドレナリンなど、脳内で情報を伝える物質(モノアミン)の働きが低下することで、気分や意欲の不調が起こるという考え方で、多くの抗うつ薬はこの働きを整える方向で作られています。ただし、これはあくまで有力な仮説のひとつで、うつ病のすべてを説明できるわけではありません。近年は、神経の回復力(神経可塑性)や炎症との関連など、さまざまな角度からの研究が進められています。

きっかけとしては、過労や職場での重い責任、身近な人との死別、人間関係のトラブルなどのストレスが多くみられますが、昇進・結婚・出産といった一見喜ばしい変化が引き金になることもあります。また、几帳面で責任感が強く、手を抜くことが苦手な性格傾向のある方は、負荷を抱え込みやすいと昔から指摘されてきました。一方で、はっきりしたきっかけなく発症する方もおり、「原因を特定できないから、うつ病ではない」ということにはなりません。

診断と、似た状態との違い

うつ病の診断では、アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5)が広く使われています。要点を平易にまとめると、次のようになります。

  1. 抑うつ気分(気分の落ち込み)
  2. 興味・喜びの喪失
  3. 食欲・体重の明らかな変化
  4. 不眠または過眠
  5. 動きの遅さ、または焦燥
  6. 疲れやすさ、気力の低下
  7. 無価値感や過剰な罪悪感
  8. 集中力・決断力の低下
  9. 死についての繰り返しの考え

このうち5つ以上(1または2を必ず含む)が2週間以上ほぼ毎日続き、仕事や家庭などの生活に大きな支障が出ている場合に、うつ病と診断されます。実際の診療では、基準にあてはまるかどうかだけでなく、これまでの経過、体の病気や薬の影響、生活状況を含めて総合的に判断します。

初診で医師が確認していること

初診の問診では、診断基準の項目を順番に尋ねるだけでなく、次のような点を意識して伺っています。何のために聞かれているのかが分かると、答えやすくなるかもしれません。

  • つらさが一日の中でいつ強いか: 朝が最もつらく、夕方になると少し楽になる「日内変動」や、早朝に目が覚めてしまう睡眠の乱れは、うつ病でよくみられるパターンです。
  • 悲しさと「楽しめなさ」を分けて聞く: 気分の落ち込みがはっきりしなくても、「悲しくはないが、何をしても楽しくない」という興味・喜びの喪失が中心となるうつ病もあるため、両方を分けて確認します。
  • 「元気すぎた時期」がなかったか: 眠らなくても平気で動き回れた、買い物やおしゃべりが止まらなかった、という時期が過去にあれば、うつ病ではなく双極性障害の可能性を考えます。使う薬が大きく変わるため、初診で必ず確認するポイントです。
  • 体の病気や薬の影響: 甲状腺の病気などでもうつ状態は起こります。当院では、初診時に服用中の市販薬・サプリメントも含めて確認しています。
  • 生活への支障の程度: 症状の数だけでなく、仕事・家事・対人関係にどのくらい影響が出ているか、そのことにどれほど頭が占められているかも、重症度をみるうえで大切な情報です。

双極性障害(躁うつ病)との違い

うつ状態だけを見ると、うつ病と双極性障害は区別がつきません。双極性障害では、うつ状態に加えて、気分が高ぶり活動的になりすぎる躁・軽躁の時期が現れます。過去に「眠らなくても平気で動き回れた」「気が大きくなり買い物やおしゃべりが止まらなかった」という時期がなかったかが、診断の重要な手がかりです。双極性障害に抗うつ薬だけで対応すると気分の波をかえって不安定にするおそれがあり、治療方針が大きく異なるため、この鑑別はとても重要です。詳しくは双極性障害2型とうつ病の違いの記事で解説しています。

適応障害との違い

適応障害は、特定のストレス(異動、人間関係など)への反応として気分の落ち込みや不安が生じる状態で、ストレスから離れると比較的すみやかに改善する傾向があります。症状の数や重さがうつ病の基準を満たす場合は、ストレスがきっかけであってもうつ病と診断されます。両者の線引きは実際には難しいことも多く、経過を見ながら診断を見直していくことがあります。

体の病気や他の状態との違い

甲状腺機能低下症などの体の病気や、一部の薬の影響でも、うつ病に似た状態が起こることがあります。必要に応じて内科的な確認をおすすめすることがあります。また、不眠が長く続くことはうつ病のリスクを高め、不眠自体がうつ病の初期サインであることも少なくありません。

治療

うつ病の治療は、休養・薬物療法・精神療法が基本の柱です。加えて、ストレスの原因を調整する環境調整(業務量の見直し、休職など)を組み合わせます。どの治療をどの割合で行うかは、重症度や生活状況によって一人ひとり異なります。

薬物療法

中心となるのは抗うつ薬です。現在はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRIなど、比較的副作用の少ないタイプが第一選択として使われることが多く、脳内の神経伝達の働きを整えることで症状の改善を目指します。

抗うつ薬は即効性のある薬ではなく、効果を実感できるまで2〜4週間ほどかかることが一般的です。一方で、飲み始めに吐き気などの副作用が先に出ることがあり、「効かないのに副作用だけある」と感じてやめたくなる時期があります。ここで自己判断で中断せず、主治医と相談しながら続けることが回復への近道になります。抗うつ薬はいつ効き始めるかについては別の記事で詳しく解説しています。

不安や不眠が強い場合には、抗不安薬や睡眠薬を補助的に使うことがあります。これらは即効性がある一方、長期間の使用では依存の問題があるため、必要最小限にとどめる方針が基本です。

なお、適切な量・期間で2種類以上の抗うつ薬を使っても十分に改善しない状態は「治療抵抗性うつ病」と呼ばれます。その場合も、診断の見直しや薬の組み合わせの工夫のほか、rTMS(磁気刺激療法)や電気けいれん療法といった選択肢があり、「もう手がない」わけではありません。

精神療法

診察のなかで経過や生活状況を丁寧にうかがい、つらさを支えながら回復の道筋を一緒に整理していく支持的精神療法が、治療の土台になります。また、回復が進んできた段階では、考え方のパターンを整理してストレスへの対処力を高める認知行動療法の考え方が役立つことがあります。

生活・セルフケア

急性期には、何よりも休養が大切です。「休む=怠け」と感じて罪悪感を持つ方が多いのですが、うつ病における休養は治療そのものです。うつ病での休み方は別の記事で詳しく紹介しています。

回復が進んできたら、朝に光を浴びる、起きる時間をそろえる、無理のない範囲で散歩などの軽い運動をする、といった生活リズムの立て直しが役立ちます。アルコールは眠りを浅くし、気分の回復を妨げることがあるため控えめにしましょう。活動を増やすペースは焦りがちになるところなので、無理せず主治医と相談しながら進めてください。

経過と再発予防

うつ病の経過は、おおまかに3つの時期に分けて考えると見通しが立てやすくなります。

  1. 急性期(目安1〜2か月): 症状が最もつらい時期。休養を最優先し、薬物療法を開始します。
  2. 回復期(目安2〜6か月): 症状は改善してくるものの、意欲や集中力の回復が遅れがちな時期。服薬を続けながら、少しずつ活動を増やします。
  3. 再発予防期(目安1〜2年): 症状がほぼ消えた「寛解」の状態。再発を防ぐために、抗うつ薬を一定期間続けます。

回復は一直線ではなく、良い日と悪い日を繰り返す「波」を伴いながら進むのが普通です。とくに回復期には、気分の落ち込みが軽くなった後も、意欲や集中力の戻りが遅れがちで、「良い日が続いたのに、また悪い日が来た。振り出しに戻ってしまった」と感じやすいものです。実際には、波を繰り返しながら少しずつ悪い日の底が浅くなり、良い日の割合が増えていくのが通常の経過ですので、一日単位の調子に一喜一憂しすぎないことが大切です。

また、発症前の生活が、無理を重ねてようやく回っていた「頑張りすぎ」の状態だった場合、そこへ完全に戻ることをゴールにすると再発につながりかねません。回復の目標をどこに置くか、働き方や生活の水準をどう調整するかも、診察のなかで一緒に考えていきます。調子が戻ったように感じても、そこで急に薬をやめると再発のリスクが高まることが知られています。うつ病は再発しうる病気で、半数程度の方が再発を経験するといわれています。減薬・中止は、症状が安定した期間を十分に確保したうえで、主治医と相談しながら段階的に行います。経過と再発予防の詳細はうつ病は再発する?の記事にまとめています。

仕事・生活への影響と使える制度

うつ病では集中力や判断力が落ちるため、仕事のパフォーマンスが下がり、ミスが増えることがあります。働きながら治療できる場合もありますが、症状が重いときは、思い切って休職し休養に専念したほうが結果的に回復が早いことも多くあります。休職の判断や診断書については休職についてのページをご覧ください。

経済面の不安に対しては、次のような公的制度があります。

  • 傷病手当金: 病気で働けない間、給与のおよそ3分の2にあたる手当が健康保険から支給される制度です。詳しくは傷病手当金についてをご覧ください。
  • 自立支援医療: 通院医療費の自己負担が原則3割から1割に軽減される制度です。詳しくは自立支援医療制度についてをご覧ください。

復職の際は、生活リズムの回復を土台に、通勤の練習や短時間勤務などを経て段階的に戻るのが基本です。「1日8時間・週5日活動できる体力が戻っているか」がひとつの目安になります。復職の進め方はうつ病からの復職の流れで詳しく解説しています。

受診の目安と当院での診かた

気分の落ち込みや興味の低下がほとんど毎日、2週間以上続いているときは、受診をおすすめする目安です。眠れない・食べられない状態が続く、仕事や家事に支障が出ている、死にたい気持ちが浮かぶ、といった場合は、期間にかかわらず早めにご相談ください。早い段階で治療を始めるほど、軽い負担で回復しやすい傾向があります。

当院では、初診時にこれまでの経過、生活や仕事の状況、体の状態をゆっくりうかがい、うつ病かどうか、双極性障害や適応障害など他の可能性も含めて評価します。そのうえで、休養のとり方、薬物療法、環境調整を組み合わせた治療方針を、ご本人と相談しながら決めていきます。休職に関する診断書の作成や、傷病手当金・自立支援医療などの制度のご案内にも対応しています。

受診が初めての方は、初めての方へで受診の流れをご案内しています。「うつ病かどうか分からない」という段階のご相談でも構いません。

参考文献

よくある質問

うつ病は治りますか?

多くの方は治療によって回復が期待できます。回復までの期間には個人差があり、良くなったり少し戻ったりという波を繰り返しながら、数か月単位で改善していくことが多いです。焦らず治療を続けることが大切です。

抗うつ薬はいつまで飲み続ける必要がありますか?

症状が良くなった後も、再発予防のために半年から数年ほど続けることが多いです。やめる時期や減らし方は人によって異なるため、自己判断で中断せず、必ず主治医と相談しながら進めてください。

どのくらい症状が続いたら受診したほうがよいですか?

気分の落ち込みや興味の低下がほとんど毎日、2週間以上続くときが一つの目安です。眠れない、食べられない、仕事や家事に支障が出ているときは、期間にかかわらず早めの受診をおすすめします。

うつ病と双極性障害はどう違うのですか?

うつ病はうつ状態だけが現れるのに対し、双極性障害ではうつ状態に加えて気分が高ぶる躁・軽躁の時期も現れます。うつ状態だけを見ると区別が難しく、使う薬も異なるため、これまでの経過を含めた診断が大切です。

うつ病で仕事を休むべきか迷っています。

重症度や仕事の状況によって判断は異なります。働きながら治療を続けられる場合もあれば、休職して休養に専念したほうが回復しやすい場合もあります。傷病手当金などの制度もありますので、診察の際にご相談ください。

この病気で使われることのあるお薬

治療で使われることのある代表的なお薬です。実際にどのお薬を使うか(使わない場合も含めて)は、診察のうえで医師が一人ひとりに合わせて判断します。

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執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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