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連載「統合失調感情障害を知るシリーズ」第4回(全4回) 第1回から読む →

はじめに

ご家族が「統合失調感情障害」と診断されたとき、多くの方が二重の戸惑いを経験されます。聞き慣れない診断名への戸惑いと、「幻覚や妄想」と「気分の波」という性質の違う症状を同時に支えなければならないことへの戸惑いです。

実は、この病気の治療において、ご家族の存在はとても大きなものです。専門書では、初めての受診は本人が自分から、というより、家族など周囲に促されて来院に至ることが多いとされ、治療を求める声も家族が主導していることが多いと説明されています。つまり、多くの場合、治療の入り口を開くのはご家族なのです。

この記事では、統合失調感情障害のご家族からよく寄せられる疑問に、精神科の専門書をもとにQ&A形式でお答えします。病気そのものの解説(症状・診断・治療の全体像)は、姉妹記事「統合失調感情障害とは」をあわせてご覧ください。なお、診断や治療方針の判断は医師が行います。ここでの内容は、診察の場で相談するときの手がかりとお考えください。

Q1. 本人が病気を認めません。受診も嫌がります

「どう見ても様子がおかしいのに、本人は『何ともない』と言う」「病院の話をすると怒り出す」——最初の受診の前に、多くのご家族がこの壁にぶつかります。

まず知っていただきたいのは、自分の状態を病気と感じにくいこと(病識の乏しさ)自体が、この病気の性質のひとつだということです。専門書では、統合失調感情障害では一般に病識が乏しく、特に気分が高ぶっている(躁的な)時期には、本人が治療を求めることはまれで、「何もしてほしくありません」と反発・拒否されることもしばしばあると説明されています。本人が強情なのでも、家族の説得が下手なのでもありません。

一方で、気分が高ぶっている時期を除けば、学校に通えない・仕事に行けない・家事ができないといった生活上の支障については、本人もある程度自覚できていることが多いともされています。「病気かどうか」で議論するより、「眠れていないのがつらそう」「最近疲れているように見える」と、本人が感じている困りごとに寄り添う声かけのほうが、受診につながりやすいことがあります。

また、ご家族が「あの出来事で悩んでいたから、こうなったのではないか」と、きっかけ探しや自分たちの責任探しをしてしまうことも少なくありません。しかし専門書では、この病気は体質的な要因が大きく、心身の負荷が契機になることはあっても、それは「引き金」であって「原因」ではないと説明されています。誰かの育て方や関わり方のせいで起こる病気ではありませんので、ご自身を責めないでください。

それでも本人が動かないときは、受診の進め方について、まず医療機関に問い合わせてみてください。周囲から見た様子——独り言を言う、何かに怯えている、お喋りが止まらずあちこちに電話をかける、元気がなく部屋にこもりがち、といった情報は、診断のうえでとても役立ちますので、メモに整理しておくと受診時に活きます。問い合わせのなかで、受診の進め方を確かめることができます。

Q2. 気分の波と幻覚・妄想、どちらに注目すればよいですか?

統合失調感情障害は、幻覚・妄想などの統合失調症の症状と、躁やうつなどの気分の症状を、どちらも同じくらいの重みで併せ持つ病気です。そのため、ご家族が「どちらを見ればいいのか」と迷われるのは自然なことです。

答えは、「両方」です。専門書では、一方の症状がより目立ち、目立たないほうの症状は家族もあまり注目していないことがあり、診察での丁寧な聞き取りで初めて明らかになる場合があると指摘されています。たとえば、気分の落ち込みばかりが目についていて、小声の独り言には気づいていなかった、あるいはその逆、ということが起こりうるのです。

また、不安や不眠はこの病気の多くの方に伴い、頭痛やだるさなどの体の不調もしばしばみられるとされています。「これは病気と関係あるのだろうか」と選別せず、気づいた変化を幅広くメモして診察で伝える——それが、ご家族にできるいちばん確実な協力です。この病気の診断は、本人の話だけでなく、家族や周囲から見た行動の変化の情報と、診察での様子とを併せて行われるものであり、両方の症状が経過の中でどう現れてきたかは、診断を左右する大切な情報だからです。

なお、この病気は経過を長く見て初めて全体像がわかることが多く、途中で診断名が「統合失調症」や「双極性障害」などに整理されることもめずらしくありません。診断名が変わっても、それは誤診というより、時間とともに全体像が見えてきた結果です。治療のうえでは、この区別が大きな問題にならないことも多いとされています。

Q3. 回復の見通しは、どう考えればよいですか?

診断を受けた直後のご家族が最も知りたいのは、「この先どうなるのか」ではないでしょうか。特に躁状態を伴う型では、症状の激しさにご家族が疲れきり、将来への不安を強く抱かれることが多いものです。

専門書では、この病気の見通し(予後)は、一般に統合失調症より良好で、気分障害よりは慎重にみる、その中間とされています。そして型による差があり、躁状態を伴う型については、激しい症状に不安を抱くご家族に対して、多くは数週間程度で症状が消え、社会的な機能も回復するという良好な見通しを伝える、と記されています。うつ状態を伴う型では、急性の症状は一定期間ののちに軽くなるものの、比較的軽い症状が長く続く場合もあると説明されています。

いずれの型でも、エピソード(症状の現れる時期)が1回だけで終わる方もいれば、再発・再燃を繰り返す方もいます。だからこそ、良くなったあとの再発予防(Q5)が大切になります。個々の見通しは経過や状況によって異なりますので、診察の場で主治医に率直にお尋ねください。

Q4. 薬を嫌がる・やめたがるとき、どうすればよいですか?

この病気の治療の基本は薬物治療で、抗精神病薬や気分安定薬(炭酸リチウム、バルプロ酸など)が症状に応じて使われます。しかし、病識が乏しいという性質上、「病気ではないのだから薬はいらない」と服薬を嫌がったり、落ち着いてくると「もう治ったからやめたい」と言い出したりすることは、よくあります。

無理に飲ませようとして関係がこじれるより、まず飲みたくない理由を聞き、それをそのまま主治医に伝えてください。治療では、不十分でも少しずつ病識を持てるようになることを目指した、心理教育的な関わりが大切とされています。焦らず、診察の場を活用しながら進めていくものとお考えください。あわせて、症状が安定するまでは休養が欠かせないことも、繰り返し伝えていくべき大切なポイントとされています。「薬を飲んで、しっかり休む」——この基本を、ご家庭でもそっと支えていただければと思います。

ひとつ、ご家族に知っておいていただきたい薬があります。気分安定薬の炭酸リチウムです。この薬は、効果のある量と中毒を起こす量が近いため、血中濃度を測りながら慎重に使われ、専門書では、中毒症状の兆候について本人だけでなく家族などにも説明しておく必要があるとされています。外来で治療している場合は特に注意が必要とされます。処方されている場合は、どんな体調の変化に気をつければよいか、遠慮なく主治医に確認してください。気になる変化があれば早めに伝えることが、安全な治療につながります。

また、症状が落ち着いてくると「薬を減らしたい・やめたい」という話が出てきますが、初回のエピソードで半年から1年ほど再燃がなければ治療をいったん終えることが検討される場合がある一方、エピソードを繰り返している場合は予防のための服薬を続けるほうが再発の頻度や重さを減らせると考えられています。やめ時の判断は自己判断ではなく、必ず主治医と——ここはご家族からも折に触れて後押ししていただきたいポイントです。

Q5. 再発が心配です。家族ができる備えはありますか?

この病気は、気分障害と同じように、症状の現れる時期と落ち着く時期を繰り返す周期性の経過をとりやすいとされています。再発・再燃について、専門書には家族に役立つ手がかりがいくつか示されています。

  • 再発は心身の負荷(ストレス)をきっかけに起こりやすく、最初の発症時より小さな負荷でも引き金になりうるとされています。「前は乗り越えられた程度のことだから大丈夫」とは限らない、ということです。
  • そのため、生活状況に変化があるとき——就職・復職、引っ越し、家族の変化など——は注意が必要な時期とされ、ストレスへの対処や過度なストレスの回避について、あらかじめ主治医と話し合っておくことが勧められています。
  • 不眠、不安、疲れやすさなどは再発の徴候とされ、これらが現れたら休息を確保し、早めに受診することが勧められています。

ご家族は、本人の生活を最も近くで見ている存在です。「最近眠れていないようだ」「口数が急に増えた」「また閉じこもりがちになった」——こうした変化にいち早く気づけるのはご家族であり、その気づきを「早めの受診」につなげることが、再発を小さく抑えることに役立ちます。調子のよいうちに、「どんなサインが出たら受診するか」を本人・家族・主治医の三者で共有しておくことをおすすめします。

Q6. 看病で疲れきってしまいました。家族が休んでもよいのでしょうか?

もちろんです。むしろ、休んでいただく必要があります。

症状の激しい時期の看病は、ご家族を大きく疲弊させます。専門書でも、躁的な時期には本人が治療を求めない一方でご家族が疲弊していることが多いと指摘されており、また、入院には本人が休息を確保しやすい利点があるだけでなく、疲れきったご家族の休息にもなると明記されています。「入院させるなんてかわいそう」とためらうご家族もいらっしゃいますが、入院は本人にとってもご家族にとっても、治療的な意味のある選択肢なのです。外来で続けるか入院を検討するかは、症状の程度や本人の治療への気持ち、ご家族の協力がどこまで可能かを踏まえて主治医が一緒に考えます。「家族がもう限界」という事情も、遠慮なくお伝えください。

海外の当事者の手記では、症状の激しい時期には考えが次々と駆けめぐって目まぐるしく、身の回りを整えたり自分なりの工夫を重ねたりしながら、長い時間をかけて少しずつ回復していった経験が語られています。回復は一直線ではなく、行きつ戻りつしながら進むものです。だからこそ、支えるご家族が長く伴走できるよう、自分自身の生活と休息を守ることが大切です。抱え込まず、対応に迷ったことは診察の場でそのつどご相談ください。

Q7. 緊急のときは、どうすればよいですか?

次のようなときは、様子を見ずに対応してください。

  • 自分を傷つけてしまいそうな切迫した言動があるなど、命に関わる心配があるとき——すぐにかかりつけの医療機関へ連絡してください。
  • 夜間などで連絡がつかず、生命の危険が差し迫っているとき——救急(119)を利用してください。

また、興奮が強く行動を抑えられない、本人や周囲の生活が破綻しかねない切迫した状況では、本人が治療を拒否していても、医療保護入院という法律に基づく入院の仕組みが検討されることがあります。こうした判断は医師が行いますので、危険を感じる状況になったら、ご家族だけで抱え込まず、まずかかりつけの医療機関にご連絡ください。

まとめ

統合失調感情障害では、病識が乏しいという症状の性質上、治療の入り口も、日々の変化への気づきも、再発サインの察知も、ご家族の力に支えられる場面が数多くあります。本人が受診を嫌がるときは、受診の進め方を医療機関に問い合わせることから。気分の波と幻覚・妄想は、どちらか一方ではなく両方の様子をメモして共有を。そして、見通しは統合失調症より良好とされる病気であること、入院はご家族の休息にもなることを、心に留めておいてください。

支える人が倒れてしまっては、支えは続きません。ご家族自身の休息と生活を守ることも、治療の一部です。ご家族ご自身の不眠や気分の落ち込みが続いているときは、ご家族ご自身のご相談として受診していただけます。なお、当院ではご家族のみの相談はお受けしていません。ご本人が受診され、同席に同意されている場合には、診察に同席していただけます。ご家庭での様子を診察の場で伝えていただくことは、診断や治療の助けになります。ご本人がどうしても受診できない場合は、お住まいの地域の保健所、市区町村の精神保健相談、精神保健福祉センターなどの公的相談先、または受診を予定している医療機関への問い合わせをおすすめしています。


参考にした資料(要約・再構成。原文の転載ではありません):

  • 上原美奈子「統合失調感情障害」(『改訂版 精神科・わたしの診療手順』所収)
  • Schizophrenia Bulletin 誌掲載の当事者手記(First Person Account)2編

執筆・監修:精神保健指定医 野口晋宏

よくある質問

本人が病気を認めず、受診を嫌がります。家族にできることはありますか?

統合失調感情障害では、自分の状態を病気の症状と感じにくいこと(病識の乏しさ)自体が症状の性質のひとつで、初めての受診は家族に促されてというケースが多いとされています。本人を責めたり説得合戦になったりする前に、周囲から見た様子をメモしておき、受診の進め方も含めて医療機関に問い合わせることから始めてみてください。周囲から見た様子の情報は診断にとても役立ちます。

気分の波と幻覚・妄想、家族はどちらに注目すればよいですか?

どちらか一方だけでなく、両方の様子が診断・治療の判断に役立ちます。この病気では一方の症状が目立ち、もう一方は家族もあまり気に留めていないことがあると指摘されています。独り言や怯えた様子、急な多弁や不眠、閉じこもりなど、気づいたことを幅広くメモして主治医に伝えてください。

回復の見通しはどう考えればよいですか?

一般に、統合失調感情障害の見通しは統合失調症より良好で、気分障害よりは慎重にみる、その中間と考えられています。型による差もあり、躁状態を伴う型では多くの場合、数週間程度で症状が治まり社会的な機能も回復に向かうと説明されています。個々の見通しは経過によって異なるため、主治医に率直に尋ねてみてください。

看病で家族が疲れきってしまいました。休んでもよいのでしょうか?

はい。症状の激しい時期の看病はご家族を大きく疲弊させるものであり、専門書でも、入院には本人が休息を確保できるだけでなく、疲れたご家族の休息にもなるという利点が挙げられています。ご家族が倒れてしまっては支えが続きません。ご家族自身の休息も治療の一部と考え、限界を感じる前に主治医へご相談ください。

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執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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