福岡県春日市須玖北4丁目34 2階
休診日: 水曜・木曜・日曜・祝日

40代、50代になってから、なんとなく体がだるい。仕事への意欲が湧かない。ささいなことでイライラして、夜もぐっすり眠れない。健康診断では大きな異常はないのに、以前の自分と何かが違う――。

働き盛りの男性がこうした不調を感じたとき、多くの方は「歳のせいだろう」「疲れているだけだ」と自分に言い聞かせて、やり過ごそうとします。しかしその背景に、男性更年期障害(LOH症候群)やうつ病が隠れていることがあります。この二つは症状がよく似ており、区別が難しいうえに、同時に起こることもあります。

この記事では、LOH症候群とはどのような状態か、うつ病とどう違いどう重なるのか、そして「どの科に相談すればよいのか」という迷いへの答えを、福岡県春日市の精神科・心療内科の視点からお伝えします。

男性にも「更年期」があります――LOH症候群とは

更年期障害というと女性のものというイメージが強いですが、男性にも更年期の不調は存在します。医学的にはLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と呼ばれ、加齢に伴って男性ホルモンであるテストステロンが低下することで、心と体にさまざまな不調が現れる状態を指します。

テストステロンは、筋肉や骨を保つ働きだけでなく、意欲・気力・集中力といった「心のエネルギー」にも深く関わるホルモンとされています。そのため、テストステロンが低下すると、体の症状と心の症状の両方が出てくることがあります。

女性の更年期との大きな違いは、変化の起こり方です。女性は閉経という比較的はっきりした区切りの前後で女性ホルモンが急激に低下しますが、男性のテストステロンはゆるやかに、個人差の大きいペースで低下していきます。そのため「いつから調子が悪いのか自分でも分からない」「気づいたら数年前から不調だった」ということが起こりやすく、本人も周囲も年齢や疲れのせいだと考えて見過ごしがちです。

また、テストステロンの低下は加齢だけでなく、強いストレスや睡眠不足によっても起こりやすくなるとされています。責任の重い仕事、家庭の役割、親の介護などが重なる40〜60代は、ちょうどこの影響を受けやすい時期でもあります。

女性の更年期とこころの不調については、更年期とメンタルヘルスの記事で詳しく解説していますので、パートナーの不調が気になる方はあわせてお読みください。

LOH症候群の症状――心・体・性機能の3つの面に現れます

LOH症候群の症状は、大きく3つの面に分けて考えると整理しやすくなります。

心の症状

  • 意欲や気力の低下(仕事や趣味への熱意が湧かない)
  • イライラ、怒りっぽさ
  • 気分の落ち込み、不安感
  • 集中力や記憶力の低下
  • 不眠(寝つきが悪い、途中で目が覚める)

体の症状

  • 疲労感、だるさが抜けない
  • ほてり、発汗(急に汗が噴き出すなど)
  • 筋力の低下、関節や筋肉の痛み
  • 太りやすくなる(特にお腹まわり)

性機能の症状

  • 性欲の低下
  • 勃起の変化(朝立ちの減少を含む)

ここでお気づきの方も多いと思いますが、心の症状の一覧は、うつ病の症状とほとんど重なっています。意欲低下、気分の落ち込み、不眠、集中力の低下――これらはうつ病の代表的な症状でもあります。この重なりこそが、LOH症候群の診断を難しくしている最大の理由です。

うつ病とどう違う?――重なりと、見分けの手がかり

LOH症候群とうつ病は、症状だけで完全に見分けることは専門家でも簡単ではありません。そのうえで、判断の手がかりになるポイントはいくつかあります。

LOH症候群を疑う手がかり

  • 性欲の低下や勃起の変化など、性機能の症状がはっきりしている
  • ほてりや発汗といった、ホルモンの変化を思わせる体の症状がある
  • 血液検査でテストステロン値が低い

うつ病を疑う手がかり

  • 気分の落ち込みが一日中、ほぼ毎日続いている
  • 以前は楽しめていたことに興味や喜びをまったく感じられない
  • 「自分には価値がない」「周りに迷惑をかけている」と自分を責める気持ちが強い
  • 食欲の大きな変化、死について考えてしまうことがある

大まかに言えば、性機能や体の症状が前面に出ていればLOH症候群の可能性を、抑うつ気分や興味の喪失、自責感が前面に出ていればうつ病の可能性を、より強く考えることになります。

ただし、ここで強調しておきたいのは、両者は「どちらか一方」とは限らないということです。テストステロンの低下が気分の落ち込みの一因になることもあれば、うつ病によるストレスや不眠がテストステロンの低下を招くこともあると考えられており、LOH症候群とうつ病が併存しているケースは珍しくありません。その場合、片方だけを治療しても不調が残ることがあるため、両方の視点からの評価が大切になります。

うつ病そのものの症状や治療については、うつ病の解説ページもあわせてご覧ください。

どの科へ行けばいい?――症状の中心で入口を選ぶ

「男性更年期かもしれないし、うつかもしれない。結局どこへ行けばいいのか」――これが一番の悩みどころだと思います。目安は次のとおりです。

泌尿器科(男性更年期外来)が入口になりやすい場合

  • 性欲の低下や勃起の変化など、性機能の症状が中心
  • ほてり・発汗・筋力低下など、体の症状が目立つ
  • まずホルモンの状態を検査で確かめたい

泌尿器科では、問診や症状のチェックリストに加えて、血液検査でテストステロン値を測定し、LOH症候群に当てはまるかを評価します。

精神科・心療内科が入口になりやすい場合

  • 気分の落ち込みや、興味・喜びの喪失が中心
  • 不安、焦り、自分を責める気持ちが強い
  • 不眠が続いてつらい
  • 「消えてしまいたい」という考えが浮かぶことがある

特に、死にたい気持ちが浮かぶような状態のときは、ホルモンの検査より先に、精神科での評価を優先してください。

どちらか迷うとき

無理にどちらかを正しく選ぼうとしなくて大丈夫です。受診しやすいほうから相談して構いません。診察の結果、「ホルモンの評価も受けたほうがよい」「精神症状の治療が必要」と判断した場合、受診先はご自身でお探しいただくことになりますが、紹介状(診療情報提供書)は必要に応じて作成します。実際、LOH症候群とうつ病の重なりが疑われるケースでは、泌尿器科と精神科の両方の視点が必要になることが少なくありません。

「疲れているだけ」と受診をためらっていませんか

働き盛りの男性の場合、不調を感じても受診に至るまでに時間がかかることが多い、という現実があります。

  • 「疲れているだけ。休みが取れれば治る」
  • 「この歳ならこんなものだろう」
  • 「男が気分の落ち込みくらいで病院に行くのは恥ずかしい」
  • 「忙しくて病院に行く時間がない」

こうした考えから、何か月も、ときには何年も不調を抱え続けてしまう方が少なくありません。しかし、LOH症候群もうつ病も、放置して自然に良くなるとは限らない状態です。むしろ、意欲や集中力の低下によって仕事のパフォーマンスが落ち、そのことがさらに自信を失わせる、という悪循環に入ってしまうことがあります。

不調の原因がホルモンにあるのか、うつ病にあるのか、その両方なのか――これは検査と診察で整理できることです。「原因が分からないまま頑張り続ける」よりも、「原因を確かめて対処する」ほうが、結果的に早く回復に向かえることが多いのです。

検査と治療の流れ――一般的にはこう進みます

受診した場合の流れを、一般的なかたちでご紹介します。

泌尿器科での流れ

問診と症状チェックリストで状態を確認し、血液検査でテストステロン値を測定します。LOH症候群と診断され、症状と検査値から必要と判断された場合には、テストステロン補充療法という治療の選択肢があります。これはホルモンを注射などで補う治療で、泌尿器科の領域として行われるものです(当院のような精神科では行いません)。適応の判断や治療中の経過観察には専門的な管理が必要とされています。

精神科・心療内科での流れ

診察で気分・意欲・睡眠・食欲などの状態や経過を丁寧にうかがい、うつ病や適応障害、不眠症などに当てはまるかを評価します。うつ病と診断されれば、休養や環境調整、必要に応じた抗うつ薬などによる治療を検討します。診察のなかでLOH症候群の関与が疑われる場合には、泌尿器科でのホルモン検査をおすすめすることもあります。

併存している場合

LOH症候群とうつ病の両方が確認された場合は、泌尿器科でのホルモンの治療と、精神科でのうつ病の治療を並行して進めることがあります。どちらの治療をどう組み合わせるかは、症状の重さや経過に応じて、それぞれの主治医と相談しながら決めていくことになります。

生活のなかでできること――治療と並行して土台を整える

LOH症候群でもうつ病でも、治療と並行して生活の土台を整えることが、回復を後押しするとされています。すぐに全部をやろうとする必要はありません。できそうなものからひとつで十分です。

  • 睡眠を最優先にする:睡眠不足はテストステロンの低下にも、気分の落ち込みにも影響するとされています。まずは就寝・起床の時間をそろえることから始めてみてください
  • 体を動かす習慣:ウォーキングや筋力トレーニングなどの適度な運動は、ホルモンのバランスにも気分にも良い影響があると考えられています。「疲れているのに運動なんて」と感じるときは、まず散歩程度からで構いません
  • お酒に頼りすぎない:寝酒は眠りを浅くし、飲みすぎはホルモンにも気分にも悪影響を及ぼすことがあります。不調をお酒でまぎらわせるパターンができていないか、振り返ってみてください
  • ひとりで抱え込まない:不調を誰にも話せずにいること自体が、大きなストレスになります。家族や信頼できる人に「最近調子が悪い」と伝えるだけでも、気持ちの負担は変わります

ただし、こうした生活の工夫は、あくまで治療の土台です。工夫を重ねても不調が続く場合は、「努力が足りない」のではなく、医学的な対処が必要なサインだと考えてください。

受診の目安――こんなときはご相談ください

次のような状態が続いているなら、相談を検討するタイミングです。

  • だるさ・意欲低下が2週間以上続き、休んでも回復しない
  • 以前は楽しめていた趣味や仕事に、興味や喜びを感じられない
  • イライラや落ち込みで、家族や職場との関係がぎくしゃくしている
  • 不眠が続き、日中の集中力が落ちている
  • 性欲の低下や性機能の変化も気になっている
  • 「自分は価値がない」「消えてしまいたい」という考えが浮かぶ

最後の項目のように、死にたい気持ちが切迫している場合は、通院中の方は主治医に連絡し、命に関わる緊急の場合はためらわず救急(119)を利用してください。

ご家族から見て「最近元気がない」「人が変わったようにイライラしている」と感じる場合も、受診のきっかけとして大切なサインです。ご本人が受診をためらっている場合の進め方については、医療機関に問い合わせてご確認ください。

まとめ――「歳のせい」で片づける前に、原因を確かめましょう

男性更年期障害(LOH症候群)は、テストステロンの低下によって意欲低下・疲労感・イライラ・不眠・性機能の変化などが現れる状態で、その心の症状はうつ病と重なりやすく、両者が併存することもあります。性機能や体の症状が中心なら泌尿器科でのホルモン検査が、気分の落ち込みや興味の喪失が中心なら精神科・心療内科が入口になりやすく、迷う場合は受診しやすいほうから相談して構いません。もう一方の科での評価が必要と判断した場合、受診先はご自身でお探しいただくことになりますが、紹介状(診療情報提供書)は必要に応じて作成します。

当院は福岡県春日市の精神科・心療内科として、気分の落ち込みや意欲低下、不眠などのご相談をお受けしています。ホルモンの問題かうつ病か、ご自身で判断がつかない段階からのご相談で構いません。診察のなかで状態を整理し、必要であれば泌尿器科での検査もふくめて、進め方を一緒に考えます。WEB予約からご都合のよい日時をお選びいただけます。「疲れているだけ」と我慢を重ねる前に、どうぞご相談ください。

よくある質問

男性にも更年期障害はあるのですか?

はい、あります。男性の場合は加齢に伴って男性ホルモン(テストステロン)が徐々に低下し、意欲の低下、疲労感、イライラ、不眠、性機能の変化などの心身の不調が現れることがあり、LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と呼ばれます。女性の更年期と違って閉経のような明確な区切りがなく、変化がゆるやかなため、本人も周囲も気づきにくいのが特徴です。

LOH症候群とうつ病はどう見分けるのですか?

症状だけで見分けるのは専門家でも簡単ではありません。意欲低下・疲労感・不眠などは両方に共通するためです。手がかりとしては、性欲の低下や勃起の変化など性機能の症状が目立つ場合はLOH症候群の可能性を、強い抑うつ気分や興味・喜びの喪失、自分を責める気持ちが中心の場合はうつ病の可能性を考えます。血液検査でテストステロン値を測ることも判断材料になります。両方が併存していることもあります。

まず泌尿器科と精神科、どちらを受診すればよいですか?

性機能の変化や体のほてり・発汗など身体の症状が中心なら泌尿器科(男性更年期外来)でホルモン検査を受けるのが入口になりやすく、気分の落ち込みや興味の喪失、死にたい気持ちなど心の症状が中心なら精神科・心療内科が入口になります。どちらか迷う場合は、受診しやすいほうからで構いません。診察の結果、もう一方の科での評価が必要と判断した場合は、受診先をご自身でお探しいただくことになりますが、紹介状(診療情報提供書)は必要に応じて作成します。

ホルモン補充療法は精神科で受けられますか?

テストステロン補充療法は一般に泌尿器科の領域で、検査値と症状をもとに適応を判断して行われる治療です。精神科・心療内科では、うつ病や不眠などの精神症状の評価と治療を担当します。LOH症候群とうつ病が併存している場合には、泌尿器科での治療と精神科での治療を並行して進めることもあります。

このテーマの記事を探す

症状や困りごとから探し直す

執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

WEB予約