福岡県春日市須玖北4丁目34 2階
休診日: 水曜・木曜・日曜・祝日

連載「検査で異常なしの体の不調シリーズ」第3回(全6回) 第1回から読む →

デスクから立ち上がった瞬間、地面がふわっと揺れた気がする。歩いていると、雲の上や船の上にいるような頼りなさがある。スーパーの陳列棚の前や人混みで、ぐらぐらして立っていられない気がする――。

心配になって耳鼻科で検査を受け、脳のMRIまで撮ったのに、結果は「異常なし」。ほっとする一方で、「じゃあ、このめまいは何なのか」「気のせいと言われたようで納得できない」と、かえって不安が深まってしまう方は少なくありません。

実は、めまい・ふわふわ感の背景には、ストレスや不安、自律神経の乱れが関わっていることがあります。検査で異常がないのに続くめまいは、決して「気のせい」ではなく、心と体のつながりから説明できる場合があるのです。

この記事では、ストレスに関連するめまいの特徴、まず身体の病気を除外することの大切さ、近年知られてきたPPPDという考え方、そして精神科・心療内科でできることと受診の目安を、福岡県春日市の精神科・心療内科の視点からお伝えします。

「ふわふわする」めまいとは――回転性めまいとの違い

ひとくちに「めまい」といっても、体験の中身はさまざまです。大きく分けると、次のようなタイプがあります。

回転性のめまい(ぐるぐる)

  • 自分や周囲がぐるぐる回っているように感じる
  • 頭を動かしたり、寝返りを打ったりした瞬間に起こることがある
  • 吐き気を伴うことも多い

回転性のめまいは、耳の奥にある平衡感覚の器官(内耳)の病気――良性発作性頭位めまい症やメニエール病など――で起こりやすいとされています。

浮動性のめまい(ふわふわ・ゆらゆら)

  • 地に足がつかない、雲の上を歩いているような感覚
  • 体がゆらゆら揺れている気がする、まっすぐ歩けている自信がない
  • 立ちくらみのようなくらっとする感じが繰り返す

ストレスや不安、自律神経の乱れに関連するめまいは、この浮動性のタイプが多いといわれています。診察でよくうかがうのは、次のような特徴です。

  • 何週間も、ほぼ毎日のように続いている
  • 人混み、スーパー、駅など、視覚的な情報が多い場所で悪化する
  • 緊張する場面、疲れているとき、寝不足のときにひどくなる
  • 横になって休んでいるときは比較的楽なことが多い
  • 肩こり・頭痛・動悸・胃の不調など、ほかの体の症状も一緒にある

ただし、ここで強調しておきたいのは、症状のタイプだけで原因を確実に区別することはできないということです。だからこそ、次にお伝えする「身体の病気の除外」が欠かせません。

まず身体の病気を調べることが何より大切です

めまいの原因には、治療を急ぐべき身体の病気が含まれることがあります。ストレスのせいと考える前に、まず身体疾患の除外が大切です。

  • 耳の病気:良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭神経炎など。めまいの原因として頻度が高く、耳鼻咽喉科での評価が基本になります
  • 脳の病気:脳卒中や腫瘍などがめまいの形で現れることがあります。ろれつが回らない、手足のしびれや脱力、激しい頭痛、物が二重に見えるなどを伴う場合は、ためらわず救急(119)を利用してください
  • 循環・血圧の問題:起立性低血圧(立ち上がったときに血圧が下がる)、不整脈、貧血などでも、ふらつきやくらっとする感じが起こります
  • 薬の影響:服用中のお薬が、ふらつきの原因になっていることもあります

すでに耳鼻科や内科、脳神経外科・神経内科などで検査を受けて「異常なし」と言われている方は、その結果がとても大切な情報になります。重い病気が否定できたからこそ、ストレスや自律神経の側面から見立てを進めることができるのです。検査を受けたことは、決して無駄ではありません。

逆に、まだ一度も身体の検査を受けていない方は、精神科より先に、あるいは並行して、耳鼻咽喉科や内科の受診をおすすめします。当院でも、診察のなかで身体の評価が必要と判断した場合には、どの診療科での確認が要るかをお伝えします。受診先はご自身でお探しいただくことになりますが、紹介状(診療情報提供書)は必要に応じて作成します。

なぜストレスでめまいが起こるのか――自律神経と平衡感覚

「気持ちの問題で、本当にめまいなんて起こるのか」と疑問に思われるかもしれません。しかし、心の緊張が体の感覚に影響する仕組みは、いくつかの側面から説明されています。

自律神経のバランスの乱れ

体の状態を自動で調整している自律神経は、ストレスが続くと交感神経が優位な状態に傾きます。血圧や血流の調整がうまくいかず、立ちくらみやふらつき、頭が締めつけられるような感じが出やすくなるとされています。あわせて、動悸・息苦しさ・胃腸の不調・倦怠感など、さまざまな体の症状を伴うことも多く、こうした状態は自律神経失調症と呼ばれることがあります。

平衡感覚の「過敏さ」

人の体は、内耳・視覚・足の裏の感覚などの情報を脳で統合してバランスを保っています。強い不安や、めまいを経験した恐怖が続くと、脳がバランスの情報に対して過敏な監視状態になり、通常なら気にならないわずかな揺れや視覚の動きを「ぐらついた」と感じやすくなる、と考えられています。人混みやスクロールする画面でふわふわ感が悪化するのは、この視覚情報への過敏さから説明されることがあります。

不安とめまいの悪循環

めまいそのものが「また倒れたらどうしよう」「重い病気では」という不安を生み、その不安が体の緊張を高めて、さらにめまいを感じやすくする――という悪循環も重要です。めまいが怖くて外出を控えるようになると、生活の幅が狭まり、気分の落ち込みにつながることもあります。強い不安の発作(動悸・息苦しさ・めまいが急に押し寄せる)を繰り返す場合は、パニック障害の評価が必要なこともあります。

また、睡眠不足はめまい・ふらつきを悪化させる要因のひとつです。めまいの心配で眠れなくなっている場合は、不眠への対応も含めて全体を整えていくことが役立ちます。

PPPD――「慢性のふわふわ感」に名前がついた

検査で異常がないのにふわふわ感が長く続く状態について、近年、PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)という概念が知られてきました。国際的な診断基準が2017年に提案された、比較的新しい考え方です。

PPPDでは、次のような特徴があるとされています。

  • 浮動感・不安定感・回転しない揺れの感覚が、3か月以上、ほぼ毎日続く
  • 立った姿勢や歩行で悪化する
  • 動くもの・複雑な模様・人混み・スクロール画面など、視覚的な刺激で悪化する
  • 耳の病気・前庭神経炎・強いストレスやパニック発作など、何らかのきっかけのあとに始まることが多い

「検査で異常がないのに続くめまい」に苦しんできた方にとって、こうした状態に名前がつき、研究や治療の対象になっていること自体が、ひとつの安心材料になるかもしれません。

ただし、PPPDの診断には、耳鼻咽喉科や神経内科などでの専門的な評価が必要です。ここでの紹介は「そういう概念が知られてきている」という情報提供にとどまるものであり、ご自身で当てはめて自己診断するのではなく、必ず医療機関でご相談ください。

精神科・心療内科でできること

身体の検査で大きな異常がなく、ストレス・不安・自律神経の関与が考えられる場合、精神科・心療内科では次のような形で診療を進めます。

背景の評価

めまいの経過だけでなく、仕事や家庭のストレス、睡眠、気分の状態、不安の程度などを丁寧にうかがいます。めまいの陰に、うつ状態や不安症、パニック症が隠れていることもあり、その場合はそちらの治療がめまいの改善につながることがあります。

生活リズムと体の整え方

自律神経のバランスを整えるうえで、土台になるのは生活です。

  • 睡眠を確保する:就寝・起床の時刻をなるべくそろえ、睡眠不足を減らす
  • カフェイン・アルコールを控えめに:どちらも自律神経やめまい感に影響することがあります
  • こまめな水分補給:脱水はふらつきの一因になります
  • 無理のない範囲で体を動かす:めまいが怖いと動かなくなりがちですが、安全な範囲で歩くなど、体を動かすことがバランス機能の回復に役立つとされています

不安との付き合い方

「めまいが起きたらどうしよう」という予期不安が症状を強めている場合、不安のメカニズムを知り、避けていた場面に少しずつ慣らしていく考え方が役立つことがあります。必要に応じてお薬による治療を検討することもありますが、使うかどうかは、症状や生活への影響をうかがいながら、診察のなかで一緒に考えていきます。お薬に不安がある方は、その気持ちも含めて診察でお聞かせください。

めまいと付き合う日々の工夫――「怖がって動かない」を減らす

治療と並行して、日常生活のなかでできる工夫もあります。すぐに症状が消えるわけではありませんが、悪循環を断つ助けになります。

「危ないから動かない」を少しずつ緩める

めまいが怖いと、外出を控え、首や頭を動かさないように固まって生活しがちです。しかし、バランスの機能は使わないでいるとかえって過敏さが続きやすいと考えられています。転倒の危険がない安全な場所で、短い散歩から再開するなど、できる範囲の活動を保つことが回復の助けになるとされています。急にたくさん動く必要はありません。「昨日より少しだけ」で十分です。

症状の記録をつけてみる

いつ・どこで・何をしているときにふわふわ感が強まったかを簡単にメモしておくと、悪化のパターン(寝不足の翌日、混雑した場所、締め切り前など)が見えてくることがあります。診察の際にも役立つ情報になります。

「めまい=重病のサイン」という考えを点検する

検査で異常がないと確認されたあとも、「今度こそ倒れるのでは」「見逃された病気があるのでは」という考えが繰り返し浮かぶことがあります。不安そのものがめまい感を強めることを知っておくと、症状が出たときに「これはいつもの過敏さかもしれない」と一歩引いて眺めやすくなります。心配が拭えない場合は、その不安ごと診察でお話しください。

周囲の方へ

ふわふわ感は外から見えないため、「元気そうなのに」と誤解されやすい症状です。ご家族や職場の方は、本人が怠けているわけではないこと、混雑した場所や視覚刺激の多い環境がつらい場合があることを知っていただけると、ご本人の負担がずいぶん軽くなります。

受診の目安――こんなときはご相談ください

すぐに救急(119)を検討すべきサイン

  • めまいとともに、ろれつが回らない・手足の脱力やしびれ・激しい頭痛・物が二重に見える・意識が遠のく、などがある

こうした場合は、精神科ではなく救急対応が必要です。すでに通院中の方は、あわせて主治医にもご相談ください。

精神科・心療内科への相談を検討してよい目安

  • 耳鼻科や内科などの検査で異常がないのに、ふわふわ感・ふらつきが数週間以上続いている
  • 人混みや緊張場面でめまいが悪化し、外出や仕事に支障が出ている
  • めまいへの不安が頭から離れず、行動範囲が狭くなってきた
  • めまいとともに、不眠・気分の落ち込み・動悸・強い不安などがある
  • ストレスの多い時期と、めまいの悪化が重なっている気がする

初めての受診に不安がある方は、初めての方へで当院の受診の流れをご案内しています。これまでの検査結果やお薬手帳をお持ちいただけると、診察がスムーズです。

まとめ――「異常なし」の先に、できることがあります

ふわふわする浮動性のめまいが続くのに検査では異常がない――そんなとき、ストレスや不安、自律神経の乱れが関わっている可能性があります。大切な順序は、まず耳鼻科・内科・脳神経系で身体の病気をきちんと除外すること。そのうえで症状が続くなら、平衡感覚の過敏さや不安との悪循環という視点から、心身の両面で整えていく道があります。近年はPPPDという慢性めまいの概念も知られてきており、「気のせい」で片づけられる時代ではなくなってきました。

当院は福岡県春日市の精神科・心療内科として、「検査では異常がないと言われたが、めまいがつらい」というご相談をお受けしています。原因がストレスなのか、不安なのか、生活の乱れなのか――ご自身で結論を出せないままで構いません。これまでの経過を一緒に整理し、生活の調整から治療の選択肢まで、診察のなかで一緒に考えます。WEB予約からご都合のよい日時をお選びください。

よくある質問

耳鼻科や脳の検査で異常がないのに、めまいが続くのはなぜですか?

めまいの背景には、耳や脳の病気だけでなく、ストレス・不安・自律神経の乱れが関わることがあります。緊張が続くと、平衡感覚をつかさどる仕組みが過敏になり、実際にはバランスが保たれていても「ふわふわする」「地に足がつかない」と感じることがあるとされています。検査で異常がないことは「気のせい」という意味ではなく、体の重い病気が否定できたという大切な情報です。そのうえで症状が続く場合は、心身の側面からの評価が役に立つことがあります。

ストレスによるめまいと、耳の病気のめまいはどう違いますか?

一般に、耳の病気(良性発作性頭位めまい症やメニエール病など)では「ぐるぐる回る」回転性のめまいが多く、頭の位置を変えたときに誘発される、難聴や耳鳴りを伴うなどの特徴があるとされます。一方、ストレスや不安に関連するめまいは「ふわふわ」「ゆらゆら」といった浮動感が持続しやすく、人混みや緊張場面で悪化する傾向があるといわれます。ただし症状だけで確実に区別することはできないため、まず耳鼻科などで身体の病気を調べてもらうことが大切です。

PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)とは何ですか?

PPPDは、ふわふわ感や不安定感が3か月以上ほぼ毎日続き、立った姿勢や動き、複雑な視覚刺激(人混み・スクロール画面など)で悪化する慢性のめまいとして、近年知られてきた概念です。耳の病気や強いストレスなどをきっかけに始まり、めまいへの不安や体の緊張が症状を持続させると考えられています。診断には耳鼻科・神経内科などでの専門的な評価が必要ですので、当てはまりそうだと感じても自己判断せず、医療機関でご相談ください。

めまいで精神科・心療内科を受診してもよいのでしょうか?

はい。まず耳鼻科や内科・脳神経の診察で身体の病気を調べていただくことが前提ですが、「検査では異常がないのにめまいが続く」「めまいとともに不安・不眠・気分の落ち込みがある」といった場合は、精神科・心療内科が力になれることがあります。背景にあるストレスや不安、自律神経の乱れ、パニック症などを評価し、生活の調整や治療を一緒に考えていきます。これまでの検査結果やお薬の情報をお持ちいただけると診察がスムーズです。

このテーマの記事を探す

症状や困りごとから探し直す

執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

WEB予約