パニック障害
パニック障害とは、突発的な「パニック発作」を繰り返し、「また発作が起こるのではないか」という「予期不安」が続いていく疾患です。
最近では、有名人が経験を公表したこともあり、一般にも広く知られるようになってきました。
パニック障害を考える場面
たとえば、ふだんは健康な人が、連日の残業が続いたあと、電車内で突然の動悸や吐き気に襲われ、強い不安と恐怖を感じる——そんな場面です。
こうした体験が何度も繰り返されると、電車に乗ること自体が不安になっていきます。
パニック障害の主な症状
1.繰り返すパニック発作
自律神経や交感神経が急激に興奮することで、体にも心にも強い症状が現れます。
発作は、すぐに逃げ出せない場所(電車、劇場、歯科治療、MRIなど)で起こることが多いです。
2.予期不安
「また発作が起こるのではないか」という不安が常につきまといます。その結果、ふだんから緊張が高まり、かえって発作が起きやすくなってしまいます。
3.回避
発作が起こりそうな状況を避けると、その場は一時的に安心できます。しかし似た状況を避け続けるうちに、行動できる範囲がだんだん狭まり、生活に支障が出てきます。
たとえば、電車を避けるうちにバスも避けるようになり、外出そのものが負担になっていく、といった形で広がっていくことがあります。
パニック症の診断基準(DSM-5)
A:パニック発作
予期せずに繰り返され、数分以内にピークに達する発作。
13の症状のうち4つ以上が該当すると診断されます。
13の症状
- 動悸・心悸亢進
- 発汗
- 身震いまたは震え
- 息切れ感または息苦しさ
- 窒息感
- 胸痛または胸部の不快感
- 吐き気または腹部の不快感
- めまい
- 寒気または熱感
- 感覚の麻痺またはうずき感
- 現実感の喪失
- 抑制を失うことへの恐怖心
- 死ぬことへの恐怖
B:予期不安または回避
以下のいずれか(または両方)が1か月以上続く場合
- さらなるパニック発作に対する持続的な懸念や心配
- 発作に関連した行動の不適応的な変化
パニック障害のメカニズム
1.脳の不調
不安に関連する扁桃核の異常が指摘されています。
2.誘発物質
カフェインの過剰摂取が発作を誘発することがあります。
3.体調不良やストレス
特に初回の発作には関連が強く、その後の予防にも重要です。
パニック障害の治療
1. 薬物療法
薬物療法では、主に抗うつ薬と抗不安薬を使用します。
抗うつ薬
パニック障害はうつ病とメカニズムが近く、セロトニンの不足が関わっています。
そのため、セロトニンを増やす抗うつ薬はパニック症にも有効で、2〜3週間で効果が現れます。
初期には吐き気やめまいといった副作用が出ることもありますが、これは徐々に慣れていきます。
抗不安薬
即効性があり、15分ほどで効果が現れて、5〜6時間で切れます。
依存のリスクがあるため、調子の悪いときだけに限って使用します。
抗うつ薬で発作を抑えつつ、必要なときに抗不安薬を使う——これが標準的な進め方です。
2.系統的脱感作法
不安な状況(電車など)に、少しずつ慣れていく方法です。
リラックスを保ちながら段階的に負荷を上げていき、不安を乗り越えていきます。
注意点
- 無理せず徐々に進める
- 体調が良い時に行い、終わったらしっかり休む
- 第三者が強要しない
パニック障害の病期と対応
前期
発作と予期不安を抑えるために抗うつ薬を使用し、無理せず生活をすることが大切です。
中期
薬を続けながら、徐々に不安な場面に慣れる「脱感作」を行い、活動範囲を広げていきます。
後期
薬を減らしながら、脱感作法で不安を克服し、再発を予防します。
再発予防
日頃から体調やストレス管理を行い、無理をしないことが大切です。
発作が一度だけ起こっても、しっかり休養して再発を防ぐことが重要です。
再発したときの対策
早めに受診し、効果のある薬を再開し、以前行った脱感作を再度行います。
まとめ
パニック障害は、突発的なパニック発作と予期不安、回避行動を特徴とします。
治療の基本は、抗うつ薬SSRIを継続しながら、系統的脱感作法を併用することです。
前期は抗うつ薬を中心に、中期は脱感作を進め、後期は薬の減量を目指しつつ、再発を予防していきます。
発作のつらさや不安は一人で抱え込みやすいものですが、無理のない範囲で、まずは相談してみてください。
参考文献
e-ヘルスネット:パニック症 / パニック障害(ぱにっくしょう / ぱにっくしょうがい)
執筆・監修
精神保健指定医 野口晋宏