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動悸・息苦しさ・めまいで異常なしと言われた時の原因

はじめに

「電車の中で急に心臓がバクバクして息苦しくなった」
「夜中にめまいと汗が出て、このまま倒れるのではと不安になった」

そんな経験はありませんか?
救急や内科で検査を受けても「異常なし」と言われ、原因がわからないまま、「また起こるのでは」という不安だけを繰り返してしまう方は少なくありません。

ただ、検査で異常が見つからないからといって、症状が「気のせい」とは限りません。検査はその時その場の体の状態を確かめるものなので、症状が出ていないタイミングでは、原因が画像や数値に表れにくいことがあるからです。

この記事では、次の3つを順にお伝えします。

  1. それでも身体の病気を見逃さないための目安
  2. 検査が正常なのに症状が続くしくみ(自律神経と不安の悪循環)
  3. パニック障害の可能性と、受診の目安

まず、体の病気を見逃さないために

「心の問題かもしれない」と考える前に、確認しておきたいことがあります。動悸・息苦しさ・めまいは、体の病気でも起こる症状だからです。

内科・循環器科での評価を優先したいサイン

動悸や胸の圧迫感には、不整脈や高血圧が関係している場合があります。特に40歳以降は、循環器系の病気を疑うことも大切です。なかでも次のような場合は、まず内科・循環器科での評価を優先してください。

  • 安静にしていても脈が乱れる・飛ぶ感じが続く
  • 労作時(階段や坂道)に決まって胸が苦しくなる
  • 胸の痛みが強い、冷や汗を伴う、意識が遠のく

このほか、甲状腺の異常(甲状腺機能亢進症など)、貧血や低血糖も動悸やめまいの原因になりますし、気管支喘息などの呼吸器の病気で息苦しさや胸の違和感が出ることもあります。

「一度異常なしと言われた後」でも、再検査を考えたい場合

精神科の側から見ても、次のようなときは「不安のせい」と決めつけず、もう一度体の検査を検討する価値があるとされています。

  • 発作が初めて起きたのが中高年以降のとき(若い頃から繰り返してきた発作とは分けて考えます)
  • これまでの発作と明らかに様子が違うとき(続く時間が極端に長い、意識を失う、片側だけのしびれや脱力を伴う、など)
  • きっかけとなる出来事に比べて、症状の大きさが不釣り合いに大きいとき

精神科の書籍でも、「心理的な発作に見えたけれど、調べてみると体の病気が隠れていた」という例は繰り返し紹介されています。「体か心か」はどちらか一つに決められるものではなく、両方が重なり合っていることも多いのです。だからこそ、心当たりのあるストレスがあっても、それだけで体の検査を省略しない、という姿勢が大切になります。

検査を受けたことは無駄ではありません

すでに検査を受けて「異常なし」と言われた方も、その結果は決して無駄ではありません。「心臓や肺に今すぐ命に関わる病気はない」と確認できたことは、次の一歩を考えるうえで大切な土台になります。


検査が正常なのに症状が続くのはなぜか

体の病気が見つからないのに、動悸や息苦しさが現実に繰り返される。ここには、自律神経のはたらきが関係しています。

症状は「気のせい」ではなく、警報装置の作動

検査で異常がないと、周囲から「気のせいでしょう」「考えすぎだよ」と言われてしまうことがあります。しかし、動悸も息苦しさも、自律神経を介して実際に体に起きている反応です。

強い不安や危険を感じたとき、体を活動モードにする交感神経が一気に優位になり、心拍は本当に速くなり、呼吸は本当に浅くなります。これは本来、危険から身を守るための正常な反応で、いわば「警報装置」が作動した結果です。心電図や血液検査は心臓の構造や機能を調べるものなので、この警報の過敏さそのものは検査には映りません。検査が正常であることと、症状が現実に起きていることは、矛盾なく両立するのです。

言いかえると、これは「心臓という臓器の故障」ではなく、「心臓や呼吸をコントロールしている仕組みの誤作動」です。寝不足や疲れ、緊張が続くとこの仕組みのバランスが揺らぎ、体のあちこちに不調として表れることがあります。

不安と症状の悪循環

「不安だから症状が出る」だけでなく、「症状が出るからさらに不安になる」という悪循環も起こります。

動悸に気づく → 「まずいことが起きているのでは」と不安になる → 交感神経がさらに活発になる → 動悸が強まる → ますます不安になる……。

この悪循環は意志の力で断ち切れるものではなく、治療の対象になり得るものです。周囲の方も、「気にしすぎ」と突き放すのではなく、「検査で異常がなくてもつらい症状はある」という理解で接していただけると、ご本人はずっと楽になります。

夜や静かな場面で動悸に気づきやすくなる理由

「日中は平気なのに、夜ベッドに入ると心臓の音が気になって眠れない」という訴えも、診察でよくうかがいます。静かな環境では外からの刺激が減り、注意が自分の体の内側に向かいやすくなるためと考えられます。心臓は昼も夜も同じように打っていますが、日中は仕事や会話に注意が向いているため気づかないだけで、夜は「聞こえてしまう」のです。

一度気になり出すと、不安から実際に脈が速くなる悪循環がここでも起こります。動悸への不安から寝つきが悪くなり、睡眠不足がさらに自律神経のバランスを崩す、という流れもあります。体の症状に注意が向くほど症状が強く感じられるという性質を知っておくだけでも、「夜に動悸が強くなるのは病気が悪化しているからではない」と受け止めやすくなります。

息苦しさと「過呼吸」の関係

不安が高まると、呼吸は浅く速くなりがちです。「息が吸えない」感覚から、さらに深く速く吸おうとすると、かえって息苦しさやめまい、手足のしびれが強まることがあります。これは、必要以上に呼吸をしすぎることで体内のバランスが一時的に変化するためで、「過換気(過呼吸)」と呼ばれる状態です。

発作的に息苦しくなったときは、「吸う」より「吐く」を意識し、口をすぼめてゆっくり長く吐き、可能なら座って肩の力を抜くとよいとされています。うまくいかなくても失敗ではありませんし、対処法は治療の代わりになるものでもありません。過呼吸の対処について詳しくは、過呼吸(過換気症候群)になったらの記事で解説しています。


パニック障害かもしれないと思ったら

強い不安や恐怖の発作(パニック発作)が繰り返し起こり、「また起こるのではないか」という不安(予期不安)や、それを避けようとする行動が続く状態を、パニック障害と呼びます。

発作では、動悸、胸の痛み、息苦しさ、震え、めまい、吐き気、発汗などの身体症状と、「死んでしまうのでは」「気が変になりそう」といった強い恐怖が数分のうちに急に強まります。ただし、発作そのものは通常30分から1時間程度で自然に治まり、パニック発作そのもので命を落とすことはありません。この事実をあらかじめ知っておくこと自体が、いざというときの安心材料になります。

軽い発作を繰り返している人や、自分ではそれが「発作」だと気づいていない人も少なくありません。発作は数分で収まることが多く、病院に着くころには落ち着いてしまうため、検査をしてもその時点では異常が見つからない――このパターンを繰り返している場合、心療内科や精神科で相談することで原因がはっきりすることがあります。

予期不安と回避が生活を狭める

パニック障害を長引かせる一番の要因は、発作そのものよりも、「また起こるかもしれない」という予期不安と回避行動です。発作時に逃げられない・助けを求めにくいと感じる場所(電車、エレベーター、人混みなど)を避けるようになる広場恐怖が加わると、生活できる範囲がどんどん狭くなってしまうことがあります。

発作が起きたときの対処

  • 呼吸法:息を吸うことより、ゆっくり長く吐くことを意識すると、体がゆるみやすくなります。
  • セルフトーク:「これは不安からくる発作で、時間が経てば治まる」と自分に言い聞かせます。落ち着ける短い言葉をスマートフォンのメモに書いておき、いざというとき見返せるようにするのもひとつの工夫です。

発作のさなかにできることは、パニック発作が起きたその瞬間にできることの記事で詳しく紹介しています。

治療について

パニック障害は、治療をすれば改善や治癒が期待できる病気です。治療の柱は、SSRIなどによる薬物療法と、怖い場所に少しずつ慣れていく認知行動療法の2つです。調子が良くなってきても自己判断で薬をやめず、副作用や不安があるときは医師に相談してください。また、再発予防には、規則正しい生活リズム、十分な睡眠、カフェインなど刺激物を控えることも役立ちます。

ご家族やパートナーが「気のせい」ではなく病気であることを理解し、発作時に慌てず寄り添ってくれることも、回復の大きな支えになります。


その不安は「様子見でよい不安」か「相談したい不安」か

不安は本来、危険を知らせて警戒を促す、誰にでも備わった心の信号です。動悸やめまいの後に「また起きたら」と心配になること自体は、自然な反応と言えます。精神医学では、様子を見てよい不安と治療の対象になり得る不安を、おおよそ次のように見分けます。

様子を見てよいことが多い不安

  • 心配する理由がはっきりしていて、内容を言葉にできる
  • つらいけれど、がまんして日常を続けられる
  • きっかけが去れば、いったん気にならなくなる

相談を考えたい不安

  • きっかけに比べて不安が強すぎる、または理由なく湧いてくる
  • 一日中頭から離れず、長く続く
  • 外出・通勤・睡眠など、生活に具体的な支障が出ている

後者に当てはまるからといって、すぐに病名がつくわけではありません。ただ、「生活に支障が出るほどの不安」は、意志の力や性格の問題ではなく、治療で軽くできる可能性のあるサインです。

受診前にできる準備

症状が出たときの状況を、その場でメモに残しておくと役立ちます。「どんなときに」「どんな症状が」「どのくらい続いたか」を短く書き留めておくだけで、診察のときに様子を伝えやすくなります。落ち着いてから思い出そうとすると、細かい点があいまいになりがちだからです。このメモは、パニック障害と体の病気を見分けるうえでも重要な手がかりになります。


受診の目安

  • 発作を繰り返している
  • 日常生活や外出に支障が出ている
  • 「また起こるのでは」と強い不安を感じている

これらに当てはまる場合は、早めに専門機関へご相談ください。


まとめ

動悸や息苦しさ、めまいを繰り返すのは「気のせい」ではありません。
検査で異常がなくても、自律神経や心の不調が関わっていることがあります。一方で、初めての発作やいつもと違う症状のときは、体の病気をもう一度確認することも大切です。

早めに原因を知り、適切な治療につなげることが安心への第一歩です。

くり返す症状を一人で抱え込み、不安だけがふくらんでしまう前に、気になる段階で相談して構いません。

パニック障害について詳しく知りたい方は こちらの記事へ

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執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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