福岡県春日市須玖北4丁目34 2階
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「うつ病と診断されたけれど、いつまで通院すればいいのだろう」「薬を飲み始めて少し楽になったが、この治療はいつ終わるのか」――治療を始めた方、これから受診を考えている方から、とてもよくいただく質問です。

先の見えない治療ほど、続けるのがつらいものはありません。逆に、「いま自分は治療のどの段階にいて、この先どう進んでいくのか」という地図があるだけで、通院はずっと続けやすくなります。

この記事では、うつ病の治療が一般的にたどる急性期・回復期・維持期という3つの段階、それぞれの期間の目安、初発と再発で考え方がどう変わるか、そして焦って治療を切り上げることのリスクを、福岡県春日市の精神科・心療内科の視点からお伝えします。

なお、この記事は「治療全体(通院)の期間」の見通しについての解説です。抗うつ薬そのものをいつまで続けるかについては、抗うつ薬はいつまで続ける?維持療法の期間と根拠で詳しく解説しています。

うつ病の治療は「3つの段階」で考える

うつ病の治療経過は、一般的に次の3つの段階に分けて考えられています。

  • 急性期:つらい症状を軽くしていく時期
  • 回復期(継続期):症状が落ち着いたあと、その状態を安定させる時期
  • 維持期:再発を防ぐために治療を続ける時期

「治療期間はどのくらいですか」という質問への正直な答えは「個人差が大きい」なのですが、それだけでは見通しになりません。そこで、それぞれの段階が一般的にどのくらいの長さで、何を目標にしているのかを順に見ていきます。

急性期――症状を軽くする時期(数週間〜数か月)

治療の最初の段階は、落ち込み・意欲の低下・不眠・食欲低下といったつらい症状を軽くしていく急性期です。

この時期の中心は、十分な休養と、必要に応じた薬物療法です。抗うつ薬は飲み始めてすぐに効果が出るものではなく、効果を実感できるまでに数週間かかることが一般的とされています。最初のお薬が合わない場合には調整や変更を行うため、症状が目に見えて軽くなるまでには、数週間から数か月の幅を見ておくのが現実的です。

この時期に大切なのは、「治すために頑張る」のではなく「回復のためのエネルギーを蓄える」という発想の転換です。うつ病は心のエネルギーが枯渇した状態です。焦って活動量を戻そうとすると、かえって回復が遠回りになることがあります。

急性期の終わりの目安は、「つらい症状がおおむね取れて、日常生活が送れるようになってきた」状態です。ただし、ここが治療のゴールではありません。むしろ、ここからが大切な分かれ道になります。

回復期――「よくなった」と「治った」の間の時期(数か月)

症状が軽くなったあとに続くのが回復期(継続期)です。この段階の目標は、よくなった状態を安定して維持できることを確かめることにあります。期間としては、症状が落ち着いてから数か月続くのが一般的です。

なぜ症状が消えたあとも治療を続けるのか。それは、「症状が消えた」と「脳と心が十分に回復した」の間には時間差があると考えられているからです。表面上は元気に見えても、回復の土台はまだ固まっておらず、この時期に治療を中断したり、無理な負荷をかけたりすると、症状がぶり返しやすいことが知られています。

回復期は、生活の再建を少しずつ進める時期でもあります。生活リズムを整える、活動量を段階的に増やす、休職していた方であれば復職の準備を進める――こうした「試運転」を、治療を続けながら行っていきます。

回復の波――「よくなったり戻ったり」は正常な経過です

この時期に多くの方が不安になるのが、「よくなったと思ったのに、また落ち込んだ」という体験です。

うつ病の回復は、右肩上がりの一直線ではありません。よい日と悪い日を繰り返しながら、全体としては少しずつ上向いていく、波のある経過をたどるのが普通です。回復途中に調子の悪い日が戻ってくると、「治療が効いていないのでは」「振り出しに戻ったのでは」と感じてしまいがちですが、波の谷は以前より浅く、間隔は空いていくのが典型的な経過です。

日々の調子に一喜一憂するのではなく、週単位・月単位で「先月の自分と比べてどうか」という長い物差しで眺めてみてください。それでも、落ち込みが以前と同じくらい強い状態が続く場合や、生活への支障が戻ってきた場合は、次の予約を待たずに主治医へ相談していただきたいサインです。

維持期――再発を防ぐ時期(初発と再発で考え方が変わります)

回復期を経て状態が安定したあとも、再発予防のために治療を続ける期間が維持期です。うつ病の治療期間を考えるうえで、実はこの維持期の長さが最も個人差の大きい部分です。

考え方の分かれ目になるのが、初めてのうつ病か、再発を繰り返しているかです。

  • 初発(初めてのうつ病)の場合:症状が落ち着いたあとも、一般的に数か月から1年程度は治療の継続が推奨されています。
  • 再発を繰り返している場合:うつ病は、再発するたびに次の再発リスクが高まることが知られています。そのため、再発歴のある方では、より長期間の維持療法が検討されます。再発を何度も経験している方では、年単位の維持療法を提案されることもあります。

ここで挙げた期間は、あくまで一般的なガイドラインが示す幅のある目安です。実際には、症状の重さ、再発の回数、生活や仕事のストレス状況、ご本人の希望をふまえて、主治医と相談しながら個別に決めていくものだとご理解ください。うつ病の再発しやすさと予防策については、うつ病は再発する?経過のたどり方と再発予防で詳しく解説しています。

そして維持期の先には、通院の間隔を延ばし、お薬を少しずつ減らし、治療を終えるという段階が待っています。治療の「終わり」は、症状の安定が十分な期間続いたことを確かめたうえで、主治医と一緒に計画的に迎えるものです。

焦って治療を切り上げると、何が起こりやすいか

「もう大丈夫だと思うので、通院をやめました」「薬が余っているので、飲むのをやめてみました」――再発して受診される方から、しばしばお聞きする言葉です。

自己判断での中断が心配な理由は、主に3つあります。

第一に、症状がよくなり始めた時期は、ぶり返しのリスクが高い時期と重なることです。「治った」という実感が先に来て、回復の土台が固まるのはその後です。実感を頼りに治療をやめると、ちょうど無防備な時期に治療の支えを外すことになります。

第二に、抗うつ薬を急にやめると、中断に伴う不調(めまい・そわそわ感・体調の揺れなど)が出ることがあることです。お薬を減らす・やめる際には、体を慣らしながら段階的に進める必要があります。

第三に、再発を繰り返すほど、その後の再発リスクが高まり、治療も長期化しやすくなることです。目先の数か月を急いだ結果、トータルの治療期間がかえって延びてしまう――これが、焦った切り上げの最も避けたい結末です。

「通院をやめたい」「薬を減らしたい」と感じること自体は、まったく悪いことではありません。それは回復の実感の表れでもあります。大切なのは、その気持ちをやめる前に診察で伝えていただくことです。時期が適切なら、主治医は減薬や通院間隔の調整を一緒に計画します。まだ早ければ、その理由を説明します。どちらに転んでも、自己判断より安全な道になります。

当院での実際

当院では、通院は基本的に2週間に一度のペースでお願いしています。2週間ごとの診察のなかで、症状の変化を確認しながら、「いまは急性期・回復期・維持期のどのあたりにいるか」「この先どのくらいの見通しか」を、回復の段階に応じてその都度お伝えするようにしています。

先の見えない治療は続けにくいものです。「いつまで続くのか」という疑問や、「そろそろ減らせないか」というご希望は、遠慮なく診察のなかでお尋ねください。

まとめ――地図を持って、焦らず段階を踏む

うつ病の治療は、症状を軽くする急性期(数週間〜数か月)、安定を確かめる回復期(数か月)、再発を防ぐ維持期という3つの段階を踏んで進みます。全体としては半年から1年以上の通院になることが多く、初発か再発かによって維持期の長さの考え方が変わります。回復の途中で調子の波があるのは正常な経過であり、焦って治療を切り上げることが、結果的に治療を長引かせる最大の落とし穴です。

うつ病という病気そのものの症状や治療の全体像については、うつ病のページもあわせてご覧ください。

すでに通院中の方は、治療期間についての疑問や不安をまず主治医にご相談ください。命に関わる緊急の場合は、ためらわず救急(119)を利用してください。

当院は福岡県春日市の精神科・心療内科として、「うつ病かもしれないが、どのくらい治療がかかるのか不安」「治療の見通しを聞きながら通院したい」といったご相談をお受けしています。初診の所要時間は問診を含めて30分程度です。WEB予約からご都合のよい日時をお選びください。

よくある質問

うつ病の治療は全体でどのくらいの期間がかかりますか?

個人差が大きいため一概には言えませんが、治療は大きく「急性期」「回復期」「維持期」の3つの段階に分けて考えられています。症状を軽くする急性期に数週間から数か月、症状が落ち着いてから安定を確かめる回復期に数か月、その後の再発予防の維持期を含めると、全体として半年から1年以上の通院になることが多いとされています。初めてのうつ病か、再発を繰り返しているかによっても、維持期の長さの考え方は変わります。焦らず段階を踏むことが、結果的に早い回復につながります。

気分がよくなってきたので、通院をやめてもいいですか?

自己判断で通院や服薬を中断することはおすすめできません。症状がよくなり始めた時期は、実は再発・ぶり返しのリスクが高い時期でもあります。「治った」と感じる状態と、脳と心が十分に回復した状態との間には時間差があると考えられており、症状が消えたあとも一定期間治療を続けることで再発の可能性を下げられるとされています。通院を減らしたい・終えたいと感じたときこそ、その気持ちを診察で主治医に伝えて、一緒にタイミングを検討してください。

治療中、よくなったと思ったらまた落ち込みました。悪化しているのでしょうか?

必ずしも悪化ではありません。うつ病の回復は、右肩上がりに一直線でよくなるのではなく、「よい日と悪い日を繰り返しながら、全体として少しずつ上向いていく」という波のある経過をたどるのが一般的です。回復途中に調子の悪い日が戻ってくること自体は、多くの方が経験する正常な経過です。ただし、落ち込みが以前と同じくらい強い状態が2週間以上続く場合や、生活に支障が戻ってきた場合は、次の診察を待たずに主治医へ相談してください。

初めてのうつ病と、再発したうつ病では治療期間は違いますか?

維持期(再発予防のために治療を続ける期間)の考え方が変わるとされています。初めてのうつ病では、症状が落ち着いたあとも数か月から1年程度は治療を続けることが一般的に推奨されています。一方、再発を繰り返している場合は、再発のたびに次の再発リスクが高まることが知られているため、より長い期間の維持療法が検討されます。どのくらい続けるかは、症状の重さ・再発歴・生活状況をふまえた個別の判断になるため、主治医とよく相談して決めていくことが大切です。

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執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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