はじめに
動悸、めまい、頭痛、だるさ——つらい症状が続くので内科で検査を受けたのに、「異常ありません」と言われてしまった。症状は確かにあるのに原因がわからず、「自律神経失調症かもしれない」と調べているうちに、今度は「これは何科に行けばいいのか」がわからなくなる——外来でとてもよくうかがうお話です。
この記事では、自律神経失調症が疑われるとき、どの診療科をどんな順番で受診すればよいのか、考え方を整理します。
結論——迷ったら、この順番で考える
先に結論をお伝えします。
- まだ内科的な検査を受けていない → まず内科で体の病気がないかを確認
- 内科で「異常なし」と言われたのに症状が続く → 精神科・心療内科へ
- 体の症状に加えて、不眠・気分の落ち込み・強い不安がある → 最初から精神科・心療内科でもよい
- どちらか判断がつかない → どちらに相談しても大丈夫。当院では必要に応じて内科での確認をおすすめします(受診先はご自身でお探しいただきますが、紹介状は必要に応じて作成します)
以下で、それぞれの理由を説明します。
なぜ「まず内科」なのか——似た症状の体の病気を見逃さないため
自律神経失調症と呼ばれる状態の症状——動悸、めまい、倦怠感、ほてり、胃腸の不調など——は、体の病気でも起こります。代表的なものだけでも、甲状腺機能の異常、貧血、不整脈、低血圧、低血糖、更年期障害などがあります。
これらは血液検査や心電図などで見つけられることが多く、見つかればその治療が最優先になります。だからこそ、まだ検査を受けていない場合は、先に内科で確認しておくことが安全です。
「異常なし」と言われたのに症状が続く——それは気のせいではありません
検査で異常が見つからなかったとき、「気のせいと言われた気がした」「怠けと思われているのでは」と感じてしまう方がいます。しかし、検査で異常がない=症状が存在しない、ではありません。症状はまぎれもなく体に起きている本物の不調です。
検査に映らない不調の背景としてよくあるのが、自律神経のバランスの乱れです。そして、その乱れのさらに背景には、ストレスや、うつ病・不安症・適応障害といった心の不調が隠れていることが少なくありません。「心の不調→緊張が続く→自律神経の乱れ→体の症状」という流れで、心当たりのないまま体だけに症状が出ることがあるのです。
このメカニズムについては「動悸・息苦しさ・手の震え——不安が『体の症状』に出るのはなぜ?」で詳しく解説しています。
精神科・心療内科では何をするのか
「精神科に行くほどではない気がする」とためらう方も多いのですが、体の症状が中心の方の受診は決して特別なことではありません。当院で行うのは、おおまかに次のようなことです。
背景に治療できる不調がないかを調べる
症状の経過、ストレスや生活の状況、睡眠や食欲の変化などを丁寧にうかがい、背景にうつ病・不安症・パニック障害などの治療できる不調が隠れていないかを評価します。たとえば、突然の強い動悸や息苦しさの「発作」が繰り返し起きている場合は、パニック障害の可能性を考えます(「動悸・息苦しさ・めまいで異常なしと言われた時の原因」もご覧ください)。
症状に合わせた治療を組み立てる
背景に心の不調が見つかった場合は、その治療(薬物療法や精神療法)を行います。はっきりした診断がつかない場合でも、症状や体質に合わせた漢方薬、睡眠を整える治療、ストレスへの対処法の相談、生活リズムの調整など、できることがあります。
体の病気の可能性が残るときは内科での確認が先になる
診察の結果、体の病気の確認がまだ必要と考えられる場合には、内科的な検査を先に受けていただくようお伝えします。受診先はご自身でお探しいただくことになりますが、紹介状(診療情報提供書)は必要に応じて作成します。「精神科に来たら心の問題と決めつけられた」ということにならないよう、体の可能性も含めて診ていきます。
受診の目安
次のようなときは、精神科・心療内科への受診をご検討ください。
- 内科で「異常なし」と言われたのに、体の不調が数週間以上続いている
- ストレスがかかると症状がはっきり悪化する
- 体の症状に加えて、眠れない・気分が沈む・不安が強い
- 症状のせいで仕事や家事、外出に支障が出ている
一方、激しい胸の痛み、ろれつが回らない、意識が遠のくなど、命に関わる可能性のある症状が急に現れたときは、診療科を考えるより先に、ためらわず救急(119)を利用してください。すでに通院中の方は、症状が急に変わったとき、次の予約を待たずに主治医へご相談ください。
当院の受診の流れや持ち物については「初めての方へ」をご覧ください。
参考文献
よくある質問
まだ内科を受診していません。先に精神科・心療内科に行ってもよいですか?
はい、かまいません。診察のうえで、体の病気の確認が先に必要と考えられる場合には、内科的な検査を先に受けていただくようお伝えすることがあります。受診先はご自身でお探しいただくことになりますが、紹介状(診療情報提供書)は必要に応じて作成します。どちらに行くべきか迷っている段階でのご相談も歓迎です。
「自律神経失調症」と「うつ病」は違うものですか?
自律神経失調症は正式な診断名ではなく、自律神経の乱れによると思われる体の不調を指す呼び名です。その背景を調べていくと、うつ病や不安症などの心の不調が見つかることが少なくありません。その場合は、背景にある不調の治療を行うことで、体の症状の改善も期待できます。
体の症状しかないのに、精神科に行く意味はありますか?
あります。ストレスや心の不調は、気分の落ち込みとしてではなく、動悸・めまい・胃腸の不調など体の症状として先に現れることがよくあります。体の症状しか自覚がない方でも、診察でお話をうかがうと背景に治療できる不調が見つかることは珍しくありません。
何科か迷っているうちに、症状が悪くなってきました。どうすればよいですか?
受診先に迷って動けなくなるより、まずどこかにかかることが大切です。当院を含む精神科・心療内科では、体の病気の可能性が疑われる場合に内科での確認をおすすめすることがあります。受診先はご自身でお探しいただくことになりますが、紹介状(診療情報提供書)は必要に応じて作成します。激しい胸の痛みや意識が遠のくなど緊急性が疑われる症状のときは、ためらわず救急(119)を利用してください。