福岡県春日市須玖北4丁目34 2階
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「健康診断で飲酒量を指摘されたけれど、どのくらいなら飲んでいいんだろう」「毎晩の晩酌、これって多いのかな」――お酒の"適量"について、はっきりした答えを知らないまま飲み続けている方は多いのではないでしょうか。

2024年2月、厚生労働省から「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」が公表されました。国が一般の方向けに飲酒との付き合い方の指針を示したもので、そこでは「お酒の強さ」や「杯数」ではなく、純アルコール量(g)で考えるという新しいものさしが示されています。

この記事では、このガイドラインの考え方を平易にご紹介しながら、純アルコール量の計算のしかた、リスクの目安となる量、寝酒やストレス対処の飲酒が習慣化する入口になること、そして減らし方の現実的な始め方までをお伝えします。

「適量」は示されていない――純アルコール量というものさし

まず知っていただきたいのは、このガイドラインには「この量までなら安全」という意味での"適量"は書かれていない、ということです。示されているのは、飲む量が増えるほど健康リスクが上がるという事実と、リスクを判断するための共通のものさし――純アルコール量(g)です。

純アルコール量は、次の式で計算できます。

お酒の量(mL)× アルコール度数(%÷100)× 0.8(アルコールの比重)

具体例を挙げます。

  • ビール500mL(5%):500 × 0.05 × 0.8 = 20g
  • 日本酒1合・180mL(15%):180 × 0.15 × 0.8 = 約22g
  • チューハイ350mL(7%):350 × 0.07 × 0.8 = 約20g
  • ウイスキーダブル60mL(43%):60 × 0.43 × 0.8 = 約21g

「ビールなら大丈夫」「チューハイは軽いお酒」と感じている方は多いのですが、純アルコール量で見ると、ストロング系のチューハイ500mL(9%)は36gと、日本酒1合半を超える量になります。種類の違うお酒を同じものさしで比べられるのが、この考え方の利点です。最近は缶に純アルコール量が表示されている商品も増えています。

生活習慣病のリスクを高める量――男性40g、女性20g

ガイドラインでは、1日あたりの純アルコール量が男性40g以上、女性20g以上になると、高血圧・脂質異常症・糖尿病といった生活習慣病のリスクを高めるとされています。男性40gはビール中瓶2本、女性20gはビール中瓶1本に相当します。

「男性の半分?」と意外に感じるかもしれませんが、女性は一般に体内の水分量が少なく、分解できるアルコールの量も男性より少ない傾向があるため、同じ量でも影響が出やすいとされています。ほかにも、次のような方は少ない量でも影響が出やすいことが指摘されています。

  • 高齢の方:体内の水分量の減少などで酔いやすくなり、転倒や認知症のリスクとの関連も指摘されています
  • 少量で顔が赤くなる体質の方:アルコールの分解酵素の働きが生まれつき弱い体質で、無理に飲み続けると健康リスクが高まります
  • 若い方:脳の発達への影響や急性アルコール中毒のリスクが指摘されています

さらに近年の研究では、少量の飲酒でも健康リスクはゼロにはならないことが報告されています。かつては「少量の飲酒はむしろ体によい」と言われた時代もありましたが、現在は「飲むなら少ないほど体への負担は小さい」というのが標準的な理解になっています。だからといって「一滴も飲むな」という話ではなく、自分が飲んでいる量を知り、リスクを理解したうえで選ぶ――それがこのガイドラインの姿勢です。

精神科の視点から――寝酒とストレス対処の飲酒

私たち精神科・心療内科の立場から特にお伝えしたいのが、「眠るための飲酒」と「ストレス対処としての飲酒」です。この2つは、飲酒量が増えていく入口になりやすいためです。

寝酒は睡眠を悪くします。 アルコールには寝つきを一時的によくする作用があるため、「飲むと眠れる」という実感は間違いではありません。しかし、アルコールは睡眠の後半を浅くし、夜中に目が覚めやすくなるなど、全体としては睡眠の質を下げます。しかも、同じ効果を得るのに必要な量が徐々に増えていくため、「眠るための一杯」が二杯、三杯と増えていきやすいのです。詳しくは寝酒と不眠の記事で解説しています。

ストレス対処としての飲酒も、習慣化の入口になります。 嫌なことがあった日に飲むと気分が紛れる――その実感が繰り返されると、「つらいときはお酒」という対処のパターンが固定化し、ストレスが続く時期に飲酒量が一気に増えることがあります。気分の落ち込みや不安をお酒でしのいでいる状態は、背景にうつ病や不安症などが隠れているサインであることも少なくありません。

また、睡眠薬や抗うつ薬などを服用中の方は、お酒との飲み合わせに注意が必要です。精神科の薬とお酒の記事もあわせてご覧ください。

減らし方の現実的な始め方

「量を減らしたほうがよさそうだ」と感じた方に、ガイドラインでも紹介されている現実的な工夫をご紹介します。

  • 自分の飲酒量を「純アルコール量」で把握する:まず現状を知ることが出発点です。缶の表示や上の計算式を使って、1日に何g飲んでいるかを数えてみてください
  • あらかじめ量を決めて飲む:「今日はビール1本まで」と先に決め、飲み始めてから決めないのがコツです
  • 飲まない日(休肝日)をつくる:週に数日でも飲まない日を挟むと、総量が減るだけでなく、「飲まなくても過ごせる」という感覚を保てます
  • 記録をつける:飲んだ量を手帳やアプリにメモするだけでも、飲み方への意識が変わることが知られています
  • 飲酒前や合間に食事・水分をとる:空腹での飲酒や一気飲みを避け、ゆっくり飲むことで、酔いすぎを防げます

完璧を目指す必要はありません。「先週より減った」を積み重ねることが、いちばん現実的な減らし方です。

減らそうとしても減らせないとき――それは治療の対象です

一方で、次のようなことが続いている場合は、工夫だけで解決しようとする段階を超えているかもしれません。

  • 量を決めても守れない、飲み始めると止まらないことが続く
  • お酒を減らすと、手のふるえ・寝汗・不眠・イライラなどが出る
  • 朝や昼から飲みたくなる、迎え酒をしてしまう
  • 健康診断や家族から指摘されているのに、やめられない

飲酒のコントロールがきかない状態や、減らしたときに体の症状(離脱症状)が出る状態は、意志の弱さではなく治療の対象となる病気の可能性があります。特に離脱症状がある方が自己判断で急にお酒を断つと、けいれんなど危険な症状が出ることがあるため、必ず医療機関に相談してください。

「病院に行ったら断酒を強制されそうで怖い」という方もご安心ください。現在は、量を減らすことから始める「減酒(飲酒量低減)」という治療目標も国内のガイドラインに位置づけられています。詳しくは減酒という治療選択肢の記事をご覧ください。

当院での実際

当院では、「お酒の量が気になっている」「眠れなくて寝酒が増えている」といったご相談も、通常の診察のなかでお受けしています。

初診は問診を含めて30分程度を目安にお時間を取り、受診前にはWEB問診にご記入いただいています。飲酒の状況も、生活や睡眠、気分の状態とあわせてお聞きし、背景に不眠やうつ病・不安症などが隠れていないかも含めて診察します。また、初診では服用中の市販薬やサプリメントも確認していますので、飲酒との組み合わせが気になるものがあれば、あわせてお知らせください。

まとめ――量を「知る」ことから始まる

厚生労働省のガイドラインが伝えているのは、「この量なら安全」という保証ではなく、自分の飲む量を純アルコール量で知り、リスクを理解したうえで飲み方を選ぶという考え方です。生活習慣病のリスクを高める量の目安は1日あたり男性40g・女性20g以上。少量でもリスクはゼロではなく、女性・高齢の方・お酒に弱い体質の方は特に影響が出やすいとされています。

寝酒やストレス対処の飲酒は量が増えていく入口になりやすく、減らそうとしても減らせない・減らすと体に症状が出るという状態は治療の対象です。ひとりで抱え込まず、医療機関にご相談ください。

飲酒に関連して、けいれんや幻覚など激しい症状が出ているとき、体調が急激に悪いときは、ためらわず救急(119)を利用するか、通院中の方は主治医に連絡してください。

当院は福岡県春日市の精神科・心療内科です。「お酒の量が気になるけれど、依存症というほどではない気がする」という段階のご相談も歓迎しています。受診をご希望の方は、WEB予約からご都合のよい日時をお選びください。

よくある質問

お酒の「適量」はどのくらいですか?

厚生労働省のガイドライン(2024年)では、「この量までなら安全」という適量は示されておらず、代わりに「生活習慣病のリスクを高める量」として1日あたり純アルコール量で男性40g以上・女性20g以上という目安が示されています。純アルコール20gは、ビール中瓶1本(500mL・5%)程度に相当します。近年の研究では少量の飲酒でもリスクがゼロにはならないと報告されており、「少ないほど体への負担は小さい」と考えるのが現在の標準的な理解です。

純アルコール量はどうやって計算しますか?

お酒の量(mL)×アルコール度数(%÷100)×0.8(アルコールの比重)で計算できます。たとえばビール500mL(5%)なら500×0.05×0.8=20g、日本酒1合(180mL・15%)なら約22g、チューハイ350mL(7%)なら約20gです。「何杯」ではなく「純アルコール何g」で数えると、種類の違うお酒でも同じものさしで比べられます。

眠れないので寝酒をしていますが、問題ありますか?

おすすめできません。アルコールには寝つきを一時的によくする作用がありますが、夜中に目が覚めやすくなるなど睡眠の後半を浅くし、全体としては睡眠の質を下げます。また、同じ効果を得るのに必要な量が徐々に増えていくため、寝酒は飲酒量が増えていく入口になりやすい習慣です。眠れない状態が続くときは、お酒で対処せず医療機関にご相談ください。

お酒を減らしたいのに減らせません。受診の目安はありますか?

「減らそうと決めても守れないことが続く」「お酒を減らすと手のふるえ・寝汗・不眠などが出る」「迎え酒をしてしまう」「健康診断や家族に指摘されてもやめられない」といったことがあれば、意志の問題ではなく治療の対象である可能性があります。現在は断酒だけでなく、量を減らすことから始める減酒という治療目標も国内のガイドラインに位置づけられていますので、やめる自信がなくても受診をためらう必要はありません。

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執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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