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朝、会社に向かう足が重い。仕事中も集中が続かず、帰宅するとぐったりして何もできない。それでも「休職するほどではない」「休んだら周りに迷惑がかかる」と、今日も同じ働き方を続けている――。

心の不調を抱えながら働いている方の多くが、「休職か、今のまま我慢するか」の二択で悩んでいます。しかし実際には、その間に「働き方を調整しながら働き続ける」という選択肢があります。時短勤務、業務量の調整、配置転換、在宅勤務。こうした就労上の配慮を会社に相談することは、決して特別なことでも、わがままなことでもありません。

この記事では、どんな配慮の選択肢があるのか、誰にどう切り出せばよいのか、主治医の診断書がどう役立つのかを、福岡県春日市の精神科・心療内科の視点からお伝えします。

「休職するほどではないけれどつらい」は、我慢し続けるサインではありません

「病院に行くほどじゃない」「休職するほどじゃない」――不調を感じたとき、多くの方はこうして自分の状態を小さく見積もろうとします。まじめで責任感の強い方ほど、その傾向があります。

しかし、次のような状態に心当たりがあるなら、それは働き方を見直すタイミングが来ているサインかもしれません。

  • 出勤前に動悸や吐き気、涙が出るなど、体が反応している
  • 以前ならこなせていた仕事量が、明らかにこなせなくなっている
  • 残業や特定の業務のことを考えると、休日も気が休まらない
  • 眠れない日、食欲のない日が増えてきた
  • 「辞めたい」「消えたい」という考えが頭をよぎるようになった

不調は、限界を超えてから対処するより、限界の手前で働き方を調整するほうが、回復も早く、仕事も続けやすいとされています。ぎりぎりまで我慢して急に休職や退職に至るより、早めに配慮を相談するほうが、ご本人にとっても職場にとっても負担が小さくすむことが多いのです。

こうした状態が続いている場合、背景に適応障害やうつ病などが隠れていることもあります。働き方の相談と並行して、一度受診して状態を確かめておくことをおすすめします。

配慮にはどんな選択肢があるか――時短だけではありません

「配慮をお願いする」といっても、具体的に何を頼めるのかイメージしにくいかもしれません。会社の制度や職場の状況によって実現できる範囲は異なりますが、一般的に相談されることの多い選択肢を挙げます。

業務量・業務内容の調整

  • 担当業務を一時的に減らす、締め切りに余裕を持たせる
  • 残業や休日出勤を控える、深夜勤務を外す
  • プレッシャーの大きい業務(クレーム対応、大人数の前での発表など)を一時的に外れる

勤務時間の調整(時短勤務・時差出勤)

  • 勤務時間を短くする(例:終業を早める)
  • 通勤ラッシュを避けるため、出勤時間をずらす
  • 朝の調子が悪い場合に、午後からの勤務にする

配置転換・異動

  • 部署やチームを変わる
  • 人間関係が不調の主な原因になっている場合や、業務内容そのものが合っていない場合に検討されます

在宅勤務(テレワーク)

  • 通勤の負担が大きい場合や、職場にいること自体の緊張が強い場合に、週の一部または全部を在宅にする

通院時間の確保

  • 通院のために定期的に早退・遅刻・中抜けができるようにする
  • 治療を続けながら働くうえで、実はとても大切な配慮です

大切なのは、「全部を頼む」必要はないということです。自分のつらさの中心がどこにあるか――量なのか、時間なのか、人間関係なのか、通勤なのか――を整理して、そこに合った配慮をひとつかふたつ相談するほうが、会社側も検討しやすくなります。この「つらさの整理」は、診察のなかで一緒に行うこともできます。

誰にどう切り出すか――上司・人事・産業医

配慮の相談は、切り出す相手によって話の進み方が変わります。

直属の上司

業務量の調整や担当の見直しなど、日々の仕事に直結する配慮は、実務上、上司の理解が欠かせません。信頼できる上司であれば、最初の相談先として自然です。切り出し方の例としては、

  • 「最近体調を崩していて、通院しています。仕事は続けたいので、しばらく業務量を調整させてもらえないでしょうか」
  • 「医師から、残業を控えるように言われています。ご相談させてください」

のように、「仕事を続けたい」という意思と、「医師の判断がある」ことをセットで伝えると、単なる弱音ではなく具体的な相談として受け止めてもらいやすくなります。

人事部門

時短勤務・在宅勤務・配置転換など、制度や人事権に関わる配慮は、上司だけでは決められないことが多く、人事部門への相談が必要になります。また、上司との関係自体がつらさの原因になっている場合は、上司を通さず人事に直接相談して構いません。多くの会社では、健康に関する相談窓口や人事の担当者が決まっています。

産業医

従業員数の多い会社には産業医が置かれており、体調と仕事の兼ね合いについて面談で相談できます。産業医はご本人の同意なく詳細を会社に伝えない配慮のもとで話を聴き、必要に応じて「就業上の配慮が望ましい」という意見を会社に出す役割を持っています。産業医の意見は会社が対応を検討する際の重要な材料になるため、社内に産業医がいる場合は活用を検討する価値があります。産業医面談で何を話すかについては、会社の方との面談についてのページも参考になります。

どこから話すか迷う場合は、一番話しやすい相手からで構いません。完璧な順番はありません。

主治医の診断書・意見書が後押しになります

配慮の相談を口頭だけで行うと、「気の持ちようでは」「みんな大変なのは同じ」と受け流されてしまうことがあります。ここで力になるのが、主治医の診断書や意見書です。

診断書に「残業を控えることが望ましい」「当面は業務量の軽減が望ましい」「週数回の在宅勤務が望ましい」といった医師の意見が記載されていると、会社側にとっては医学的な根拠のある要請となり、対応を検討する強い後押しになります。会社は一般に従業員の健康に配慮する義務(安全配慮義務)を負っているとされており、医師の意見を無視しにくいためです。

診断書について、次の点を知っておくと安心です。

  • どこまで書くかは相談できます。 病名を詳しく書くか、症状と必要な配慮を中心に書くかなど、記載内容はご本人の希望をうかがいながら決めていきます。会社にどこまで知られたくないか、という気持ちも含めて、診察のなかでご相談ください
  • 実現可能な内容にすることが大切です。 職場の実情とかけ離れた配慮を書いても機能しません。お仕事の内容や職場の状況をうかがいながら、現実的な内容を一緒に考えます
  • 費用と日数がかかります。 診断書は自費(保険適用外)での作成となり、料金や日数は医療機関によって異なります。当院の診断書については診断書料金・作成日数のページをご覧ください

なお、まだ通院していない方が「診断書のためだけに受診する」ことをためらう必要はありません。働き方の調整が必要なほどの不調があるなら、それ自体が受診の十分な理由です。診察で状態を評価したうえで、配慮に関する意見が必要かどうかも含めて一緒に考えます。

知っておきたい留保――会社に「必ず応じる義務」があるとは限りません

ここで、正確にお伝えしておきたいことがあります。診断書を出せば会社が必ず配慮に応じてくれる、とは限らないという点です。

「合理的配慮の提供義務」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは主に障害者雇用の文脈――障害者手帳を持っている方や、障害があることを会社に伝えて働いている方――を中心とした制度上の枠組みです。一般雇用で働いていて、体調不良を理由に配慮を求める場合、会社がどこまで応じるかは、就業規則や社内制度、職場の人員状況などによって異なります。時短勤務や在宅勤務の制度自体がない会社では、実現が難しいこともあります。

ただし、だからといって相談が無意味なわけではありません。前述のとおり会社には従業員の健康への配慮義務が一般に認められており、医師の診断書がある状態で従業員が不調を訴えているのに何の対応もしない、という状況は会社にとってもリスクです。制度としての「義務」があるかどうかにかかわらず、実務上は、診断書を添えた相談に対して何らかの調整を検討する会社が多いのが実情です。

制度の詳細や自分の会社での扱いについては、就業規則を確認したり、人事部門に問い合わせたりして確認してみてください。

配慮を求めることは「甘え」ではありません

「自分だけ特別扱いしてもらうのは申し訳ない」「これくらいで配慮を頼むのは甘えではないか」――配慮の相談をためらう方から、診察室でよく聞く言葉です。

しかし、考えてみてください。視力が落ちた人が眼鏡をかけるのは甘えではありません。腰を痛めた人が重い荷物の運搬を代わってもらうのも甘えではありません。心の不調で処理できる仕事量が一時的に落ちているときに、その分の調整をお願いすることも、まったく同じことです。

むしろ、調整をせずに無理を続けた結果、ミスが増えたり、急に長期の休職に入ったりするほうが、ご本人にも職場にも大きな影響が出ます。早めに配慮を相談して働き方を整えることは、仕事に対して無責任なのではなく、仕事を続けるための責任ある行動です。

また、配慮は多くの場合一時的なものです。回復に応じて少しずつ元の働き方に戻していくことができます。「一度頼んだら一生このままになる」わけではありません。

配慮を相談してもうまくいかないとき――次の選択肢

誠実に相談しても、会社が応じてくれない、あるいは形だけの対応で実質的に何も変わらない、ということもあります。また、配慮を受けても体調の悪化が止まらないこともあります。そのときは、次の選択肢を検討する段階です。

休職して治療に専念する

働き方の調整では追いつかないほど消耗している場合、いったん仕事から離れて回復に専念するほうが、結果的に早く戻れることがあります。休職には主治医の診断書が必要で、休職中の収入を支える傷病手当金という制度もあります。詳しくは休職についてのページをご覧ください。

障害者雇用への切り替え・転職を視野に入れる

症状が長く続き、継続的な配慮が必要な状態であれば、精神障害者保健福祉手帳を取得して障害者雇用の枠組みで働くという道もあります。障害者雇用では、先に述べた合理的配慮の提供が制度として位置づけられており、通院や体調に応じた働き方を前提とした就労がしやすくなります。今すぐ決める話ではありませんが、「そういう選択肢もある」と知っておくだけでも、気持ちの余裕につながります。

どの道を選ぶにしても、大切なのはひとりで抱え込んで決めないことです。今の状態で働き続けられるのか、配慮で足りるのか、休職が必要なのか――医学的な視点からの整理が、判断の助けになります。

まとめ――「我慢か休職か」の前に、相談できることがあります

心の不調を抱えながらの仕事は、「今のまま我慢する」か「休職する」かの二択ではありません。業務量の調整、時短勤務、配置転換、在宅勤務、通院時間の確保――働き方を調整しながら働き続ける選択肢があります。相談先は上司・人事・産業医のうち話しやすいところからで構いません。主治医の診断書や意見書は、その相談の医学的な後押しになります。会社に必ず応じる義務があるとは限りませんが、診断書を添えた相談には多くの会社が何らかの検討をします。そして、配慮を求めることは甘えではなく、仕事を続けるための前向きな手段です。

当院は福岡県春日市の精神科・心療内科として、「休職するほどではないが今のままではつらい」という段階からのご相談をお受けしています。どんな配慮が合っているか、診断書にどう書くか、そもそも今の状態で働き続けてよいのか――診察のなかで一緒に整理し、考えていきます。WEB予約からご都合のよい日時をお選びください。限界まで我慢する前に、どうぞご相談ください。

よくある質問

会社に「時短勤務にしてほしい」と頼めば、必ず応じてもらえますか?

必ず応じてもらえるとは限りません。育児や介護など法律で定められた場合を除き、体調を理由とした時短勤務や配置転換にどこまで応じるかは、会社の制度や就業規則、職場の状況によって異なります。ただし、多くの会社は従業員の健康に配慮する義務(安全配慮義務)を負っているとされており、主治医の診断書や産業医の意見があると、会社としても対応を検討しやすくなります。まずは相談という形で切り出してみることをおすすめします。

配慮をお願いするとき、病名まで会社に伝える必要がありますか?

病名を必ず伝えなければならないわけではありません。伝える範囲はご自身で選べます。「体調を崩して通院しており、医師から働き方の調整を勧められている」という伝え方でも、配慮の相談は可能です。診断書に記載する病名や内容についても、どこまで書くかを診察のなかで主治医と相談できますので、心配な点は遠慮なくお話しください。

上司・人事・産業医のうち、誰に最初に相談すればよいですか?

決まった正解はなく、話しやすい相手からで構いません。業務量や担当の調整など日々の仕事に関わることは直属の上司、時短勤務や在宅勤務など制度に関わることは人事部門、体調と仕事の兼ね合いを整理したい場合は産業医(いる会社の場合)が相談先の目安になります。上司との関係自体がつらさの原因になっている場合は、上司を飛ばして人事や産業医に相談しても差し支えありません。

診断書をもらえば配慮の相談に使えますか?費用はかかりますか?

主治医が「時短勤務が望ましい」「業務量の軽減が望ましい」といった意見を診断書として作成することは可能で、会社に配慮を相談する際の後押しになります。診断書は自費(保険適用外)で、料金や作成にかかる日数は医療機関により異なります。当院の診断書については料金・作成日数のご案内ページをご覧ください。どのような内容の診断書が適しているかは、診察のなかでご相談いただけます。

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執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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