福岡県春日市須玖北4丁目34 2階
休診日: 水曜・木曜・日曜・祝日

夜になっても室温が下がらず、布団に入っても寝つけない。やっと眠れたと思ったら、暑さで夜中に何度も目が覚める。朝は妙に早く目が覚めて、日中はだるくて仕事にならない――。

熱帯夜が続く季節、こうした「夏の不眠」の悩みは毎年多くの方が経験します。「夏だから仕方ない」と我慢してしまいがちですが、眠れない状態が続くと日中の集中力や気分にも影響が出て、心の不調につながることもあります。

この記事では、なぜ夏は眠りが浅くなるのか、エアコンとの付き合い方、寝具や入浴・水分の工夫、そして受診を考える目安について、福岡県春日市の精神科・心療内科の視点からお伝えします。

なぜ夏は眠れないのか――「深部体温」と睡眠の関係

人の眠気には、体の内部の温度(深部体温)が深く関わっています。人は、体の内部の熱を手足の皮膚から逃がし、深部体温が下がっていくときに眠気が強くなるとされています。赤ちゃんが眠くなると手足が温かくなるのは、まさに熱を逃がしているサインです。

ところが熱帯夜は、この「放熱」がうまくいきません。室温が高いと体の熱が外に逃げにくく、さらに湿度が高いと汗が蒸発しにくくなって、汗による体温調節も働きにくくなります。深部体温が下がらないままでは、体は「眠る準備」に入れないのです。

つまり、夏に寝つきが悪くなったり眠りが浅くなったりするのは、意志や気合いの問題ではなく、高温多湿で体温調節がうまくいかないという、体の仕組みの問題です。だからこそ、対策の中心は「眠れる温度・湿度の環境をつくること」になります。

エアコンは「つけっぱなし」を恐れない

夏の睡眠環境で最も大切なのはエアコンの使い方です。ここで多くの方がつまずくのが、「一晩中つけるのは体に悪い気がする」「電気代がもったいない」という心理的な抵抗です。

昔から「エアコンをつけて寝ると体がだるくなる」と言われてきましたが、これは設定温度が低すぎたり、冷風が直接体に当たり続けたりした場合の話です。熱帯夜にエアコンなしで眠るほうが、眠りが浅くなり、汗による脱水も進みやすく、体への負担はむしろ大きいと考えられています。近年は熱中症予防の観点からも、夜間のエアコン使用がためらわずに勧められるようになっています。

タイマーで切る設定には注意が必要です。 就寝後1〜2時間で切れるようにしていると、切れたあと室温がじわじわ上がり、ちょうど眠りが浅くなる明け方前に暑さで目が覚める、という中途覚醒のパターンになりがちです。「タイマーが切れる時刻に目が覚める」という方は、思いきって朝までつけておくことを試してみてください。

つけっぱなしにする際の工夫としては、次のようなものがあります。

  • 風が直接体に当たらないようにする:風向きを上向きや壁向きに調整します。直接の冷風は体を冷やしすぎて、だるさの原因になります
  • 設定温度は下げすぎない:極端に低くする必要はなく、「暑くて目が覚めない程度」を目安に、自分が快適に感じる温度を探します
  • 湿度にも注目する:温度がそれほど高くなくても湿度が高いと寝苦しくなります。除湿(ドライ)モードや、冷房と除湿の使い分けも選択肢です
  • 就寝の少し前から部屋を冷やしておく:寝る直前にスイッチを入れるのではなく、あらかじめ寝室を冷やしておくと、布団に入ったときから放熱しやすくなります

また、扇風機やサーキュレーターの併用もおすすめです。エアコンの冷気は床にたまりやすいため、空気をかき混ぜることで設定温度を上げても快適に感じられ、冷やしすぎの防止と節電の両方につながります。扇風機も体に直接当て続けるのではなく、壁や天井に向けて空気を循環させる使い方が向いています。

電気代が気になるお気持ちはよく分かりますが、睡眠は日中の体調や仕事の能率、心の健康を支える土台です。眠れない夜が続いて心身の調子を崩すことを考えれば、夏の間の電気代は「健康への必要経費」と考えてよいのではないかと思います。

寝具・入浴・水分――環境づくりの3つのポイント

エアコン以外にも、夏の眠りを助ける工夫があります。

寝具を夏仕様にする

冬と同じ寝具のままでは、せっかく室温を整えても体に熱がこもります。通気性・吸湿性のよい素材のシーツや敷きパッド、接触冷感タイプの寝具などを取り入れると、体の熱と湿気が逃げやすくなります。パジャマも汗を吸って乾きやすい素材が向いています。

入浴のタイミングを工夫する

意外に思われるかもしれませんが、夏でもシャワーだけで済ませず、就寝の1〜2時間ほど前にぬるめのお湯にゆっくり浸かることは、寝つきを助けるとされています。入浴でいったん深部体温を上げると、その後に体温が下がっていく流れができ、この「下がり坂」が眠気を後押しするためです。寝る直前の熱いお風呂は逆に体温が下がりきらず寝つきを妨げることがあるので、タイミングと湯温がポイントです。

水分は「控える」より「上手にとる」

夏は寝ている間にもかなりの汗をかきます。夜中のトイレを心配して水分を控えすぎると脱水に傾き、体調を崩すもとになります。寝る前にコップ1杯程度の水分をとり、枕元にも飲み物を置いておくと安心です。一方で、アルコールは寝つきをよくするように感じても眠りを浅くし、利尿作用で夜中に目が覚めやすくなります。カフェインを含む飲み物(コーヒー、緑茶、エナジードリンクなど)も夕方以降は控えめにするのがよいでしょう。

なお、高齢の方やお子さんのいるご家庭では、夜間の熱中症にもご注意ください。「夜は大丈夫」と思われがちですが、寝ている間の熱中症も起こりえます。無理な節電はせず、室温を保つことを優先してください。

日中の「暑さ疲れ」と自律神経

夏の不眠は、夜の環境だけの問題ではありません。日中の過ごし方も関わってきます。

炎天下の屋外と冷房の効いた室内を行き来する生活では、体温調節を担う自律神経が一日中フル稼働しています。この負担が積み重なると、だるさ、食欲低下、頭が重い、夜になっても体がほてって休まらない――といった、いわゆる「夏バテ」の状態になり、眠りの質にも影響します。

日中にできる工夫としては、次のようなものがあります。

  • 朝の涼しい時間に軽く体を動かす:散歩程度でも、体を動かすことは夜の眠りを助けます。炎天下の激しい運動は逆に消耗するため、時間帯と強度を選びます
  • 冷たい飲食物のとりすぎに気をつける:冷たいものばかりでは胃腸が弱り、食欲低下からだるさが強まる悪循環になりがちです
  • 屋内外の温度差を緩やかにする:強い冷房の職場では羽織るものを使うなど、体温調節の負担を減らします
  • 昼寝は午後の早い時間に20〜30分程度:夏は日中の消耗が大きく短い昼寝が助けになりますが、夕方の長い昼寝は夜の眠りを削ってしまいます

暑さ疲れがたまった状態では、夜に環境を整えても眠りが浅くなりがちです。夜の対策と日中の過ごし方は、セットで考えるとうまくいきます。だるさや不調が長引く場合は、自律神経の乱れが関係していることもあります。詳しくは自律神経失調症のページもご覧ください。

熱帯夜にやってしまいがちな逆効果の対処

暑くて眠れない夜、良かれと思ってしていることが、かえって眠りを妨げていることもあります。夏に特にありがちなものを挙げます。

キンキンに冷えたビールや冷酒での「寝酒」

暑い夜の冷たいお酒は格別ですが、アルコールは寝つきをよくするように感じさせる一方で、眠りの後半を浅くし、利尿作用と発汗で脱水も進めます。夏の寝酒は「寝つけるけれど夜中に暑さと喉の渇きで目が覚める」という中途覚醒のもとになりやすいのです。

保冷剤や冷却シートで体を局所的に冷やして頑張る

首元などを一時的に冷やすこと自体は悪くありませんが、「エアコンは我慢して保冷剤でしのぐ」という方法では、室温そのものが高いままなので放熱が追いつきません。局所の冷却はあくまで補助と考え、室温・湿度を整えることを優先してください。

眠れないまま布団の中でスマートフォンを見続ける

寝つけない時間つぶしにスマートフォンを見ていると、画面の光と情報の刺激で脳が覚醒し、ますます眠れなくなります。また「眠れない布団の中でじっと頑張り続ける」こと自体が、「布団=眠れない場所」という条件づけを強めてしまいます。20〜30分たっても眠れないときは、いったん布団を出て、涼しい部屋で照明を落として静かに過ごし、眠気が戻ってきてから布団に戻るほうがよいとされています。

夏は「早朝覚醒」も起きやすい――朝の光への対策

夏の睡眠の悩みでもう一つ多いのが、「朝、異様に早く目が覚めてしまう」というものです。

夏は日の出が早く、朝5時台にはかなり明るくなります。光は体内時計に強く働きかけるため、カーテン越しに朝日が差し込むと、体が「朝だ」と判断して目が覚めやすくなります。加えて、日が昇ると室温も上がり始めるため、光と暑さの両方で早朝に起こされてしまうのです。

対策としては、遮光カーテンで朝の光を防ぐことが最も手軽で効果的です。カーテンの隙間から光が漏れる場合は、隙間を留めるクリップやアイマスクの併用も選択肢になります。エアコンを朝までつけておくことは、早朝の室温上昇による覚醒の予防にもなります。

ただし、注意していただきたい点があります。「まだ暗いうちから目が覚めて、その後眠れない」「早く目覚めたときに気分が沈んでいる」という早朝覚醒は、うつ病のサインであることがあります。 光や暑さで説明がつく早起きと違い、環境を整えても改善しない早朝覚醒が続く場合は、背景に心の不調がないか確認することが大切です。

「夏だから仕方ない」と放置しないで――受診の目安

一時的な寝苦しさであれば、ここまでご紹介したような環境の工夫で改善することが多いものです。しかし、次のような状態があるときは、受診を検討するタイミングです。

  • 環境を整えても、眠れない状態が2週間以上続いている
  • 日中の強い眠気、だるさ、集中力の低下で、仕事や生活に支障が出ている
  • 「今夜も眠れないのでは」という不安で、布団に入るのが怖くなってきた
  • 気分の落ち込み、興味の低下、食欲の変化など、眠り以外の不調も出てきた
  • 環境と関係なく、早朝に目が覚めて眠れない日が続いている

不眠は単なる睡眠の問題にとどまらず、うつ病や不安症の最初のサインとして現れることがある症状です。「暑さのせいだと思っていたら、涼しくなっても眠れないまま」というケースでは、背景に別の要因が隠れていることも少なくありません。不眠の診療について詳しくは不眠症のページをご覧ください。

診察では、眠れない状態がいつから、どんなパターン(寝つけない・夜中に目が覚める・早く目が覚める)で続いているのか、生活環境や日中の調子、気分の状態などを伺いながら、生活の工夫で対応できる範囲なのか、治療を検討したほうがよい状態なのかを一緒に整理していきます。「眠れないだけで精神科に行っていいのか」とためらう方もいらっしゃいますが、不眠は精神科・心療内科で最も多いご相談の一つです。どうぞ気軽にご相談ください。

まとめ――環境を整え、それでも続く不眠は相談を

夏に眠れなくなるのは、深部体温が下がりにくい高温多湿の環境による、体の仕組み上の自然な反応です。対策の柱は、エアコンをタイマーで切らずに朝まで使うこと(風を直接当てない・冷やしすぎない)、寝具や入浴のタイミング、寝る前の水分といった環境づくりです。日中の暑さ疲れによる自律神経への負担や、日の出の早さによる早朝覚醒への遮光対策も、夏ならではのポイントです。

そして、工夫をしても2週間以上不眠が続くとき、日中の支障や気分の落ち込みを伴うときは、「夏だから仕方ない」と放置せず、受診をご検討ください。不眠の背景にうつ病や不安症が隠れていることもあり、早めに相談することが回復への近道になります。

当院は福岡県春日市の精神科・心療内科として、不眠のご相談をお受けしています。眠れない夜のつらさを一人で抱え込まず、どうすれば眠れるようになるかを診察のなかで一緒に考えていきましょう。WEB予約からご都合のよい日時をお選びいただけます。

よくある質問

エアコンを一晩中つけっぱなしにしても体に悪くないですか?

体調や環境にもよりますが、熱帯夜にエアコンを切って暑さで眠りが浅くなるほうが、睡眠への影響は大きいと考えられています。タイマーで切れると室温が上がって夜中に目が覚めやすくなるため、風が直接体に当たらないようにする、設定温度を極端に下げすぎないといった工夫をしたうえで、朝までつけておくことは一般的に勧められる方法の一つです。

夏は朝早く目が覚めてしまいます。これも不眠ですか?

夏は日の出が早く、朝の光と気温の上昇で早朝に目が覚めやすくなります。遮光カーテンなどで朝の光を調整すると改善することがあります。ただし、まだ暗いうちから目が覚めて眠れない状態が続く、気分の落ち込みを伴うといった場合は、うつ病などの早朝覚醒の可能性もあるため、続くようなら受診をご検討ください。

寝る前の水分は控えたほうがよいですか?

夜中のトイレが気になって水分を控えすぎると、就寝中の脱水につながるおそれがあります。夏は寝ている間にも汗をかくため、寝る前にコップ1杯程度の水分をとることは一般的に勧められています。一方で、アルコールやカフェインを含む飲み物は眠りを浅くするため、夕方以降は控えめにするのがよいとされています。

夏の不眠はどのくらい続いたら受診したほうがよいですか?

一時的な寝苦しさは環境の工夫で改善することが多いのですが、対策をしても眠れない状態が2週間以上続く、日中の眠気やだるさで仕事や生活に支障が出ている、気分の落ち込みや不安を伴うといった場合は受診の目安です。不眠の背景にうつ病や不安症が隠れていることもあり、早めの相談が回復の近道になります。

このテーマの記事を探す

症状や困りごとから探し直す

執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

WEB予約