福岡県春日市須玖北4丁目34 2階
休診日: 水曜・木曜・日曜・祝日

風邪をひいたので市販の風邪薬を飲みたい。頭痛がするので鎮痛薬を買いたい。健康のためにサプリメントを始めてみた。眠気覚ましにエナジードリンクをよく飲む――。

精神科・心療内科で薬による治療を受けている方にとって、こうした場面は日常の中に何度もあります。そのたびに「一緒に飲んで大丈夫だろうか」と迷いつつ、「市販薬だから大丈夫だろう」「サプリは食品だし」と、なんとなく自己判断で済ませている方は少なくありません。

結論からお伝えすると、市販薬もサプリメントも、精神科の薬と影響し合うことがあります。そして、個々の組み合わせの安全性をこの記事で断定することはできません。この記事でお伝えしたいのは、「どの組み合わせが危ないか」の一覧表ではなく、なぜ確認が必要なのかという考え方と、受診時・購入時にどう伝えれば安全を確保できるかという実務です。

お酒との飲み合わせについては、姉妹記事の精神科の薬とお酒|飲み合わせのリスクと現実的な付き合い方で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

「飲み合わせ」で何が起こりうるのか――相互作用の一般的な考え方

薬と薬、薬とサプリメントが体の中で影響し合うことを相互作用と呼びます。難しい仕組みの詳細に立ち入らなくても、起こりうることは大きく3つに整理できます。

1. 作用が重なって強く出すぎる

似た方向の作用を持つものを重ねると、効果や副作用が想定より強く出ることがあります。たとえば、市販の風邪薬や鼻炎薬、乗り物酔いの薬には眠気を起こす成分が含まれていることが多く、精神科の薬の眠気と重なると、日中の強い眠気やふらつきにつながることがあります。

2. 薬の効き方が変わってしまう

一部の成分は、薬が体の中で分解・処理される速度を変えてしまいます。その結果、治療薬の血中濃度が下がって効き目が弱くなったり、逆に濃度が上がって副作用が出やすくなったりすることがあります。後で述べるセントジョーンズワートは、この代表例として知られています。

3. 治療の方向と逆に働く

カフェインのような覚醒作用のある成分は、不眠や不安の治療と逆方向に働くことがあります。薬の成分同士が直接ぶつからなくても、治療全体の足を引っ張る形の影響もある、ということです。

大切なのは、これらが「起こることがある」のであって、「必ず起こる」わけでも「絶対起こらない」わけでもないという点です。影響の有無や程度は、薬の種類・量・体質・タイミングなど多くの要素で変わります。だからこそ、一般論の知識で自己判断するのではなく、あなたの処方内容を知っている主治医・薬剤師に個別に確認することに意味があります。

「サプリだから安全」ではない理由――セントジョーンズワートの例

サプリメントは法律上「食品」に分類されます。このことが「薬ではないのだから、薬と一緒に飲んでも問題ないはず」という誤解につながりやすいのですが、食品に分類されていることと、薬に影響しないことは別の話です。

その代表例がセントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)です。「気分の落ち込みに良いハーブ」として海外を中心に広く流通しており、日本でもサプリメントやハーブティーとして手に入ります。しかしこの成分は、多くの薬の分解を速めて効き目を弱めてしまうことが知られており、抗うつ薬をはじめとする数多くの医薬品の添付文書で「併用に注意」と明記されています。「うつに良いと聞いたから」と抗うつ薬治療中に自己判断で始めると、かえって治療の妨げになりうる――という、なんとも皮肉な例です。

セントジョーンズワートは氷山の一角で、ほかのハーブや健康食品にも、薬との相互作用が報告されているものがあります。また、サプリメントは医薬品ほど成分量の管理や表示が厳密でない場合があり、「何がどれだけ入っているか」が正確にわからないこと自体もリスクになります。

サプリメントをやめるべきだ、という話ではありません。飲んでいることを主治医に伝えたうえで使う――それだけで、リスクの大部分は管理できます。

身近な市販薬・飲み物で注意したいもの

具体的な組み合わせの安全性は個別確認が原則ですが、「確認したほうがよい場面」を知っておくことは役に立ちます。

  • 総合感冒薬(風邪薬):眠気を起こす抗ヒスタミン成分、カフェイン、咳止め成分など、複数の成分が一度に入っています。成分が多いぶん、影響し合う可能性のある相手も増えます
  • 鎮痛薬(頭痛薬・生理痛の薬):多くの場合は問題なく使えますが、一部の精神科の薬との組み合わせで注意が必要な場合があり、また製品によってはカフェインや眠気成分を含みます
  • 鼻炎薬・アレルギーの薬・乗り物酔いの薬:眠気を起こす成分を含むものが多く、精神科の薬の眠気と重なることがあります
  • 咳止め薬:一部の成分は、精神科の薬との相互作用が知られています。また咳止め成分を含む市販薬には乱用・依存の問題も指摘されています(詳しくは市販薬の乱用・オーバードーズ(OD)とはをご覧ください)
  • カフェインを含むもの:エナジードリンク、眠気覚ましドリンク、カフェイン錠。不眠・不安・動悸を強める方向に働くことがあり、睡眠薬や抗不安薬の治療とは相性が良くありません
  • 漢方薬・生薬系のサプリメント:「自然のものだから安全」とは限りません。漢方薬も薬であり、成分の重複や相互作用がありえます

繰り返しになりますが、これは「危険な組み合わせの一覧」ではなく、「買う前・飲む前にひとこと確認する価値がある場面」の目安です。この記事に載っていない組み合わせが安全という意味でもありません。迷ったら確認する、を習慣にしてください。

いちばんのリスクは「伝えていないこと」――お薬手帳の活用

飲み合わせの問題で実際に困りごとが起きるとき、その背景にあるのは多くの場合、特定の危険な組み合わせそのものよりも、「医師も薬剤師も、その人が何を飲んでいるか把握できていなかった」という情報の断絶です。逆に言えば、情報さえ共有されていれば、危ない組み合わせは処方や購入の段階でほぼ回避できます。

そのための最も実用的な道具がお薬手帳です。

  • 1冊にまとめる:病院ごと・薬局ごとに手帳を分けていると、全体像が誰にも見えなくなります。精神科の薬も内科の薬も、同じ1冊に記録してもらってください。スマートフォンのお薬手帳アプリでも構いません
  • 市販薬・サプリメントもメモする:手帳に貼られるのは処方薬のシールだけですが、余白に「〇〇(市販の鎮痛薬)を時々使用」「サプリで△△を毎日」と書き込んでおくと、確認の精度が上がります
  • 市販薬を買うときに見せる:薬局・ドラッグストアで薬剤師に手帳を見せて「これを飲んでいますが、一緒に使えますか」と聞けば、その場で確認してもらえます。精神科の通院を口頭で説明しにくい場面でも、手帳を見せるだけで正確に伝わります

「精神科に通っていることを薬局で知られたくない」という気持ちから、手帳を出さない方もいらっしゃいます。その気持ちは自然なものですが、薬剤師には守秘義務があり、飲み合わせの確認はあなたの安全のために行われるものです。どうしても抵抗がある場合は、かかりつけの薬局を1か所に決めておくと、毎回説明し直す負担が減ります。

受診時に伝えてほしいこと

診察の場では、次のことをぜひ教えてください。

  • 定期的に飲んでいる市販薬(鎮痛薬、便秘薬、胃薬など、「薬のうちに入らない」と感じているものも含めて)
  • 飲んでいるサプリメント・健康食品・ハーブティー(製品名がわかるとより確実です。パッケージの写真をスマートフォンで撮ってきていただくのも良い方法です)
  • エナジードリンクやカフェインの摂取習慣(量と頻度の目安)
  • 他の診療科で処方されている薬(お薬手帳を見せていただくのが確実です)
  • これから使いたい市販薬・始めたいサプリメントがあるときは、事前にひとこと

「こんな細かいことまで言っていいのだろうか」とためらう必要はありません。処方を組み立てる側にとって、これらはすべて有用な情報です。伝えたことで叱られたり、治療を断られたりすることはありません。むしろ「全部話してもらえる関係」こそが、安全な薬物療法の土台になります。

薬そのものへの不安が強い方は、「薬に頼りたくない」と感じるあなたへもあわせてご覧ください。不安を抱えたまま黙って自己調整するより、不安ごと診察で話していただくほうが、治療はうまく進みます。

当院での実際

当院では、初診は問診を含めて30分程度の時間をとり、そのなかで現在服用中の薬を確認しています。処方薬だけでなく、市販薬やサプリメントも含めてお聞きしていますので、飲んでいるものがあれば遠慮なくお伝えください。お薬手帳やサプリメントのパッケージ(写真でも構いません)をお持ちいただくと、確認がより正確になります。

通院の基本は2週間に一度です。通院の間に市販薬を使いたい場面が出てきたときは、購入時に薬剤師に確認していただき、次の診察でその旨をお知らせください。

まとめ――一覧表より「確認する習慣」を

市販薬もサプリメントも、精神科の薬と影響し合うことがあります。作用が重なる、効き方が変わる、治療と逆方向に働く――影響の形はさまざまで、「市販だから」「食品だから」安全とは言い切れません。セントジョーンズワートのように、広く注意喚起されている成分もあります。

ただし、すべての組み合わせを患者さん自身が覚えておく必要はありません。必要なのは、お薬手帳を1冊にまとめること、市販薬やサプリも含めて主治医・薬剤師に伝えること、迷ったら飲む前に確認すること――この3つの習慣です。

当院は福岡県春日市の精神科・心療内科として、薬の飲み合わせや市販薬・サプリメントとの付き合い方についてのご相談もお受けしています。すでに通院中の方は、次の診察で遠慮なくお尋ねください。これから受診を検討される方は、WEB予約からご都合のよい日時をお選びください。命に関わる緊急の場合は、ためらわず救急(119)を利用してください。

よくある質問

精神科の薬を飲んでいますが、市販の風邪薬を一緒に飲んでも大丈夫ですか?

組み合わせによります。市販の風邪薬には、眠気を強める成分やカフェインなど複数の成分が配合されていることが多く、精神科の薬と作用が重なることがあります。「この組み合わせなら必ず安全」と一般論で言い切ることはできないため、薬局で購入する際に薬剤師にお薬手帳を見せて確認するか、主治医に相談してから使うことをおすすめします。確認の手間を惜しまないことが、いちばん確実な安全策です。

サプリメントは薬ではないので、伝えなくてもいいですよね?

いいえ、サプリメントもぜひお伝えください。サプリメントは食品に分類されますが、体の中で薬と影響し合うことがあります。代表的な例がセントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)で、多くの薬の効き方を変えてしまうことが知られており、医薬品の添付文書でも広く注意喚起されています。「食品だから安全」とは限らないため、飲んでいるサプリメントはすべて診察時に教えていただけると安心です。

エナジードリンクやカフェインの錠剤は、精神科の薬に影響しますか?

影響することがあります。カフェインには覚醒作用があり、多く摂ると不安・動悸・不眠を強めることがあります。睡眠薬や抗不安薬で治療している状態にカフェインを重ねると、治療の方向と逆に働いてしまうこともあります。エナジードリンク・カフェイン錠・眠気覚ましドリンクなどを日常的に使っている場合は、量や頻度も含めて診察時にお伝えください。責めるためではなく、治療をうまく進めるための情報として伺っています。

飲み合わせが心配なとき、誰に確認すればいいですか?

主治医と薬剤師のどちらに相談しても構いません。診察時に確認できるのが確実ですが、診察の合間に市販薬を買いたくなったときは、薬局・ドラッグストアの薬剤師にお薬手帳を見せて「この薬を飲んでいますが、一緒に使えますか」と尋ねてください。お薬手帳は1冊にまとめておくと、どこの薬局でも正確に確認してもらえます。自己判断で「たぶん大丈夫」と使うことだけは避けてください。

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執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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