福岡県春日市須玖北4丁目34 2階
休診日: 水曜・木曜・日曜・祝日

「調子が良くなってきたし、薬はもうやめてもいいのでは」「いつまでも薬に頼りたくない」――抗うつ薬を飲んでいる方なら、一度はそう考えたことがあるのではないでしょうか。

その気持ちはとても自然なものです。ただ、抗うつ薬には「やめ方」があります。自己判断で急に中断すると、中断症候群(離脱症状)と呼ばれる不快な症状が出ることがあり、また、せっかく良くなった症状がぶり返してしまうこともあります。

この記事では、中断症候群とはどのような症状か、依存とは何が違うのか、再発とどう見分けるのか、そして安全に減らしていくための考え方について、福岡県春日市の精神科・心療内科の視点からお伝えします。

なお、この記事は「やめ方」がテーマです。「そもそもいつまで続けるのか」については、抗うつ薬はいつまで続ける?という別の記事で詳しくお伝えしていますので、あわせてお読みください。

急にやめると起こりうる「中断症候群」とは

抗うつ薬をある程度の期間(目安として1か月以上)続けたあとに急に中断したり、大きく減らしたりすると、数日以内にさまざまな不快な症状が現れることがあります。これを中断症候群(抗うつ薬中止後症状、離脱症状と呼ばれることもあります)といいます。

代表的な症状には、次のようなものがあります。

  • めまい・ふらつき:頭がふわふわする、地に足がつかない感じ
  • しびれ感・電気が走るような感覚:頭や体に「ビリッ」「シャンシャン」と電気が走るような、独特の感覚(シャンビリ感と表現されることもあります)
  • 吐き気・胃の不快感
  • 頭痛
  • 不安・いらいら・落ち着かなさ
  • 不眠・鮮明な夢
  • 風邪のような症状:だるさ、寒気、筋肉痛のような感じ

すべての人に起こるわけではなく、出方や強さには個人差があります。多くの場合は一時的で、時間とともに自然に治まっていくとされていますが、症状がつらくて日常生活に支障が出る方もいます。

一方で、心強いデータもあります。医療者向けの薬物療法の教科書でも、急にやめた場合に比べて、時間をかけて段階的に減らした場合には、中断症候群の頻度が大きく下がることが繰り返し示されています。つまり中断症候群は「やめる人に必ず起こる宿命」ではなく、やめ方しだいで大部分が防げる現象なのです。

大切なのは、こうした症状が出うることを前もって知っておくことです。知らずに経験すると、「大変な病気になったのでは」「薬をやめたせいで体がおかしくなった」と強い不安につながりやすいためです。

中断症候群は「依存」ではありません

「やめると症状が出る」と聞くと、「抗うつ薬に依存してしまったのでは」と心配になる方が多くいらっしゃいます。しかし、中断症候群は依存とは異なる現象と考えられています。

医学的にいう「依存」には、次のような特徴があります。

  • 薬への強い渇望(欲しくてたまらなくなる)
  • 耐性(同じ効果を得るために量がどんどん増えていく)
  • 薬を得るための行動のコントロールがきかなくなる

抗うつ薬では、こうしたことは起こりません。「もっと飲みたい」という渇望は生じませんし、効果を保つために量を増やし続ける必要もありません。

では中断症候群はなぜ起こるのかというと、薬を続けるうちに体が「薬のある状態」に合わせてバランスを取っていたところへ、急に薬がなくなることで、体の再調整が追いつかないために起こる反応と考えられています。たとえるなら、長時間暗い部屋にいて急に外へ出ると目がくらむようなもので、目が光に「依存」していたわけではなく、環境の急な変化に調整が追いつかないだけです。

だからこそ、対策もはっきりしています。急に変えず、体が調整できるペースでゆっくり減らすこと。これが中断症候群を防ぐ基本的な考え方です。

どんな薬で出やすい?――半減期という考え方

中断症候群の出やすさには、薬ごとの性質が関係するとされています。ポイントになるのが半減期、つまり薬の成分が体から抜けていく速さです。

  • 半減期が短い薬(体から早く抜ける薬):飲むのをやめると血中の薬の量が急に下がるため、中断症候群が比較的出やすい傾向があるとされています
  • 半減期が長い薬(体からゆっくり抜ける薬):やめても薬がゆるやかに減っていくため、比較的出にくい傾向があるとされています

抗うつ薬としてよく使われるSSRIやSNRIと呼ばれるグループの中にも、半減期の短いものと長いものがあります。ご自身の薬がどちらの傾向にあるかは、主治医や薬剤師に気軽に尋ねてみてください。

なお、「出やすい薬だから悪い薬」ということではありません。それぞれの薬に長所と短所があり、主治医は症状や体質との相性を考えて選んでいます。出やすい傾向のある薬であっても、計画的にゆっくり減らせば中断症候群は避けられる、あるいは軽くできることが多いとされています。

また、飲み忘れが続いたときにも同じような症状が出ることがあります。「最近めまいやビリビリ感があるが、そういえば数日飲み忘れていた」というケースは珍しくありません。思い当たることがあれば、受診時に正直に伝えていただくと診断の助けになります。

「中断症候群」と「再発」の見分け方

薬をやめたあとに調子が悪くなったとき、いちばん悩ましいのが「これは中断症候群なのか、それとも病気の再発なのか」という点です。一般的な傾向として、次のような違いがあるとされています。

中断症候群の特徴

  • 中止・減量から数日以内と、比較的早く現れる
  • めまい、しびれ感、電気が走るような感覚、吐き気など、もとの病気のときにはなかった身体症状が目立つ
  • 薬を再開すると速やかに(多くは数日以内に)軽快しやすい
  • 時間の経過とともに自然に治まっていくことが多い

再発の特徴

  • 中止から数週間〜数か月たってから現れることが多い
  • 気分の落ち込み、興味や意欲の低下、億劫さなど、もとの病気と同じ症状が徐々に戻ってくる
  • 放っておくと軽くなるどころか、少しずつ悪化していくことが多い

とくに「再開で速やかに良くなるかどうか」は、見分けの大きな手がかりとされています。とはいえ、実際には両方の要素が混ざることもあり、ご自身で判断するのは簡単ではありません。やめたあとの体調の変化は、内容とタイミングをメモしておき、主治医に伝えて一緒に判断してもらうのが最も確実です。

なお、やめたあとの不調には、もうひとつ紛らわしいものがあります。抗うつ薬の飲み始めや増量のころに出る初期の副作用(吐き気やそわそわ感など)の記憶があると、「やっぱりこの薬は体に合わない」と感じて、やめたあとの症状もすべて薬のせいに思えてしまうことがあります。時期と症状の内容を整理して主治医に伝えることが、正しい判断につながります。

うつ病という病気そのものや再発のサインについては、うつ病のページもあわせてご覧ください。

安全な減らし方――「漸減」という考え方

抗うつ薬を減らすときの基本は、漸減(ぜんげん)、つまり時間をかけて段階的に少しずつ減らしていく方法です。

具体的な減らし方――どのくらいの幅で、どのくらいの間隔で減らすか――は、飲んでいる薬の種類、服用していた期間、これまでの経過、過去に減量でつらい思いをしたことがあるかどうかなどによって、一人ひとり異なります。そのため、この記事で「何週間ごとにどれだけ」という一律のスケジュールをお示しすることはできませんし、すべきでもありません。減量の計画は、必ず主治医と相談しながら個別に決めていくものです。

考え方として知っておいていただきたいのは、次の点です。

  • 一段階減らしたら、しばらく様子をみる:減らした直後は問題がなくても、少し遅れて変化が出ることがあります。焦らず、体が新しい量に慣れるのを待ちます
  • 調子が揺らいだら、立ち止まってよい:減量の途中でつらくなったら、そのペースで進める必要はありません。いったん止める、少し戻すという選択は失敗ではなく、安全にやめるための正しい手順の一部です
  • 最後の少量が意外と難しいことがある:減量の終盤、少ない量からゼロにする段階でいちばん症状が出やすいと感じる方もいます。終盤ほどゆっくり進めるという考え方もあり、これも主治医との相談のしどころです
  • 減らす時期の生活環境も考慮する:転職や引っ越し、繁忙期など大きなストレスが予想される時期は避け、生活が比較的落ち着いているタイミングを選ぶのが安全です

なお、市販の器具で錠剤を勝手に割ったり、隔日で飲んだりといった自己流の工夫は、薬によっては適さないことがあります。減らし方の工夫も含めて、主治医や薬剤師に確認してください。薬全般についての当院の考え方は薬についてのページにまとめています。

減らす前に整えておきたい「薬以外の土台」

うつ病の治療は、薬だけで成り立っているわけではありません。精神科の薬物療法の入門書でも、治療の柱として心身の休息、環境調整、精神療法(考え方の整理)、生活習慣の見直しが薬と並べて挙げられています。回復とは、薬が症状を抑えている状態から、こうした土台が自分を支えてくれる状態へ、重心が移っていくことだともいえます。

減量を考えるときも、この土台がどれだけ整っているかが大切なチェックポイントになります。

  • 睡眠のリズムが安定しているか:夜眠れて朝起きられる生活が続いているか
  • ストレスへの対処の引き出しが増えたか:調子を崩したときのきっかけを自分なりに把握し、早めに休む・相談するなどの対処ができるようになっているか
  • 周囲のサポートがあるか:不調のサインに気づいてくれる人、相談できる人がいるか

薬を減らすことは、いわば「補助輪を外す」作業です。補助輪を外す前に、自分でバランスを取る力が育っているかを確認する――減量前の診察で主治医が生活の様子を丁寧に尋ねるのは、このためです。

減量中は「こまめな経過確認」とセットで

減量は、始めたら終わりまで一直線に進むものではなく、一段階ごとに体調を確認しながら進める共同作業です。当院では通院頻度の基本を2週間に一度としており、減量中もこうした定期的な診察のなかで、体調の変化を確認しながらペースを調整していきます。

診察と診察の間の変化を伝えやすくするために、次のような簡単なメモを残しておくことをおすすめします。

  • 減らした日付と、そのときの量の変化(「何錠から何錠へ」で十分です)
  • 体調の変化が出た日と、その内容(めまい、ビリビリ感、気分の変化など)
  • 眠れているか、食べられているか

また、薬の専門家である薬剤師も、減量中の心強い味方です。精神科医と薬剤師の連携をテーマにした書籍でも、患者さんの服薬の様子や困りごとを薬剤師が拾い上げ、医師と共有することの価値が強調されています。かかりつけ薬局で「いま抗うつ薬を減らしているところです」と伝えておくと、体調の変化や飲み方の疑問を相談しやすくなります。市販薬やサプリメントの中には抗うつ薬と相互作用しうるものもあるため、減量中に新しく何かを飲み始めるときも、薬剤師や主治医に一声かけてください。当院でも、初診時に服用中の市販薬・サプリメントを確認しています。

減らすタイミングは「十分に安定してから」

そもそも、いつになったら減量を考えてよいのでしょうか。

一般的には、症状が良くなった直後に薬をやめると再発しやすいことが知られており、良くなったあとも一定期間、同じ量で続ける「維持療法」を経てから減量を検討するとされています。維持療法の期間は、初めてのうつ病か、繰り返しているかなどによって異なり、繰り返している方ほど長めに続けることが勧められる傾向があります。

「もう元気なのに飲み続けるのは無駄では」と感じるかもしれませんが、この期間は、再発の芽を抑えて回復を固めるための大切な時間です。ここを十分に取れたかどうかが、その後うまくやめられるかどうかを左右するといっても過言ではありません。

このとき意識していただきたいのは、「症状が消えた」と「回復した」は同じではないという点です。医療者向けの教科書でも、治療の目標は症状を取り去ること自体ではなく、その先にある仕事や家庭など社会生活での力を取り戻すことだと強調されています。気分の落ち込みが消えても、疲れやすさや集中力が戻りきっていない時期に急いでやめると、生活の負荷がかかったときに揺り戻しが来やすくなります。

減量を考えてよいかどうかの目安は、症状が安定して十分な期間が経っているか、睡眠や食事、仕事や家事などの生活が安定しているか、近い将来に大きなストレスが予想されないか、といった点を総合して判断します。これはご自身だけで判断できるものではないので、「そろそろ減らせますか」と診察で聞いてみるところから始めてください。

「やめたい」と主治医に言っていいのです

薬を減らしたい、やめたいという気持ちを、主治医に言い出せずにいる方は少なくありません。「先生に悪い気がする」「治療に前向きでないと思われそう」と遠慮して、黙って自己判断で減らしたりやめたりしてしまう――実は、これがいちばん危険なパターンです。

はっきりお伝えしたいのは、「やめたい」と主治医に言うのは、まったく悪いことではないということです。むしろ、その気持ちを正直に話してもらえたほうが、主治医は安全な計画を一緒に立てることができます。薬をやめることは治療の失敗ではなく、治療のゴールのひとつです。主治医にとっても、患者さんが安全に薬を卒業できることは望ましいことなのです。

診察で伝えるときは、たとえば次のような言い方で十分です。

  • 「調子が良いので、薬を減らすことを考え始めたいのですが、時期的にどうでしょうか」
  • 「正直、薬を飲み続けることに抵抗があります。やめる場合の進め方を教えてください」
  • 「実はここ数日、自己判断で飲むのをやめてしまっています」――すでにやめてしまった場合も、責められることを恐れず、事実をそのまま伝えてください

経済的な負担や副作用のつらさなど、やめたい理由も率直に話していただければ、薬の変更や工夫など別の選択肢が見つかることもあります。当院でも、減量やめどきのご相談はいつでも歓迎です。診察のなかで、お一人おひとりの経過に合わせて一緒に考えていきます。

まとめ――やめ方まで含めて「治療」です

抗うつ薬を急に自己判断で中断すると、めまい・しびれ感・電気が走るような感覚・吐き気・不安・不眠などの中断症候群が起こることがあります。これは依存とは異なる、体の再調整が追いつかないために起こる一時的な現象で、半減期の短い薬で出やすい傾向があるとされています。

やめたあとの不調が中断症候群なのか再発なのかは、現れるまでの早さ、症状の内容、再開で速やかに良くなるかどうかが手がかりになりますが、最終的な判断は主治医と一緒に行うのが確実です。減量は、症状が安定して十分な期間が経ってから、主治医と相談のうえで、時間をかけて段階的に進めるのが基本です。睡眠や生活リズム、ストレスへの対処といった薬以外の土台を整えておくことも、減量の成功を支えます。

そして何より、「薬をやめたい」という気持ちは、隠さずそのまま主治医に伝えてください。正直に相談することが、いちばん安全で、いちばん近道です。

当院は福岡県春日市の精神科・心療内科として、薬の減量やめどきについてのご相談をお受けしています。通院中の方で、薬を急にやめたあとに強い不調が出ている場合は、次の予約を待たずに主治医にご相談ください。命に関わる緊急の場合は、ためらわず救急(119)を利用してください。これから相談を始めたい方は、WEB予約からご都合のよい日時をお選びいただけます。

よくある質問

抗うつ薬をやめたときに出る症状は「依存」なのですか?

いいえ、中断症候群は依存とは異なる現象と考えられています。依存では薬への渇望や、効果を得るために量が増えていく耐性がみられますが、抗うつ薬ではそうしたことは起こりません。中断症候群は、体が薬のある状態に慣れていたところで急に薬がなくなり、バランスの再調整が追いつかないために起こる一時的な反応です。

抗うつ薬をやめてから調子が悪いのは、中断症候群と再発のどちらでしょうか?

一般的な傾向として、中断症候群は中止後数日以内に、めまいやしびれ感、電気が走るような感覚など、もとの病気にはなかった身体症状を伴って現れ、薬を再開すると速やかに軽快しやすいとされています。一方、うつ病の再発は数週間から数か月かけて、もとの症状(気分の落ち込み・興味の低下など)が徐々に戻ってくることが多いとされます。自己判断せず、主治医に経過を伝えて確認してもらうことが大切です。

抗うつ薬はいつになったら減らせますか?

一般的には、症状が十分に良くなったあとも一定期間は同じ量で続け(維持療法)、症状の安定が十分な期間確認できてから、主治医と相談して減量を検討するとされています。適切な時期は、症状の経過や再発の回数、生活状況などによって人それぞれ異なります。減らしたい気持ちがあれば、まずそのまま主治医に伝えてみてください。

薬を減らしている途中で調子が悪くなったらどうすればよいですか?

無理にそのまま進めず、早めに主治医に相談してください。減量のペースをゆるめる、いったん元の量に戻して立て直すなど、対応の方法はいろいろあります。減量の途中で一度立ち止まることは失敗ではなく、安全にやめるためのごく普通の過程です。

数日飲み忘れただけでも中断症候群のような症状は出ますか?

出ることがあります。とくに体から抜けるのが早い薬では、数日の飲み忘れでもめまいやしびれ感、ビリビリした感覚などが現れることがあります。「最近体調がおかしい」と感じたとき、飲み忘れが続いていなかったかを思い返し、受診時にそのまま伝えていただくと、原因の判断がしやすくなります。

このテーマの記事を探す

症状や困りごとから探し直す

執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

WEB予約