福岡県春日市須玖北4丁目34 2階
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抗うつ薬を飲み始めてしばらくしてから、体重計の数字が少しずつ増えてきた。食べる量は変わっていないつもりなのに、なんだか太りやすくなった気がする。このまま飲み続けて大丈夫なのだろうか――。

体重の変化は、抗うつ薬を続けるうえでよく聞かれるお悩みの一つです。「太るくらいなら薬をやめたい」と感じる方も少なくありません。その気持ちはとても自然なものですが、体重を理由に自己判断で薬を中断すると、かえってつらい思いをすることがあります。

この記事では、抗うつ薬と体重増加の関係、太りやすいとされる薬の一般論、自己判断でやめることの危険、そして主治医への相談の仕方について、福岡県春日市の精神科・心療内科の視点からお伝えします。

体重が増える仕組みは一つではありません

「薬のせいで太った」と感じたとき、実は原因が一つとは限りません。抗うつ薬による治療中の体重増加には、いくつかの要因が重なっていることが多いのです。

1. 薬が食欲に影響することがある

一部の抗うつ薬には、食欲を増やしたり、満腹感を感じにくくしたりする作用があるとされています。「甘いものが無性に食べたくなる」「夜中に何か食べたくなる」といった変化として現れることもあります。

2. うつからの回復で食欲が戻る

うつ状態のときは、食欲が落ちて体重が減っている方が少なくありません。治療がうまくいって回復してくると、落ちていた食欲が戻り、減っていた体重が元に戻っていきます。これは本来、回復の証拠ともいえる変化なのですが、「薬を飲み始めてから太った」と感じられることがあります。

3. 療養中は活動量が下がりやすい

うつの療養中は、外出が減る、運動の習慣が途切れる、休職して通勤がなくなるなど、体を動かす機会がどうしても減りがちです。消費するエネルギーが減れば、食事量が同じでも体重は増えやすくなります。

4. 眠気による生活リズムの変化

薬によっては眠気が出ることがあり、日中の活動量がさらに下がったり、生活リズムが変わって食事の時間が乱れたりすることも、間接的に影響します。

つまり、「薬の直接の作用」「回復に伴う自然な変化」「療養生活そのもの」が絡み合っているのが実際のところです。どの要因が大きいのかによって対処の仕方も変わるため、まずは整理してみることが大切です。

太りやすいとされる薬はある?――一般論として

薬による違いについて、確立している一般論をお伝えします。ただし、体重への影響は個人差がとても大きく、同じ薬でもほとんど変わらない方もいれば、増えやすい方もいます。あくまで傾向としてお読みください。

ミルタザピン(リフレックス、レメロン)は、抗うつ薬のなかでも食欲を増やす作用が出やすいとされています。眠気とともに食欲が増すことが多く、体重増加につながりやすい薬として知られています。

ただし、この特徴は一方的に「欠点」というわけではありません。うつで食欲がまったくなく、眠れず、体重が落ちてしまっている方にとっては、食欲と睡眠を助けてくれる作用はむしろ治療上の大きな利点になります。同じ作用が、その方の状態によってプラスにもマイナスにもなる――薬とはそういうものなのです。

SSRI(パロキセチン〈パキシル〉などの選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、飲み始めはむしろ食欲が落ちることもありますが、一部の薬では長期間の使用で体重が増えることがあると報告されています。

三環系抗うつ薬と呼ばれる古くからある薬も、食欲増加や体重増加が出やすいものがあるとされています。

一方で、抗うつ薬のなかには体重への影響が比較的少ないとされる薬もあります。どの薬が合うかは、うつの症状のタイプ、これまでの経過、他の副作用とのバランスなどを総合して判断するもので、「太りにくいかどうか」だけで決められるものではありませんが、体重が気になる方にとって選択肢があること自体は、知っておいていただきたい事実です。

薬の全般的な考え方については、薬についてのページでもご案内しています。

同じ薬なのに、増える人と増えない人がいるのはなぜ?

「同じ薬を飲んでいる知人は全然太らなかったのに、自分だけ増えた」――そう感じて、自分の体質や意志の弱さを責めてしまう方がいます。しかし、薬の効き方や副作用の出方に個人差があるのは、医学的にごく当たり前のことです。

専門的な薬理学の教科書でも、薬の効果や副作用の現れ方には大きな個人差があることが一貫して強調されています。その背景には、大きく二つの仕組みがあります。

同じ量を飲んでも、体内の薬の濃度が人によって違う。薬を分解する肝臓の働きには生まれつきの個人差があり、年齢、体格、肝臓や腎臓の状態、一緒に飲んでいる他の薬、喫煙の有無などによっても変わります。同じ錠剤を飲んでいても、体の中で働いている薬の量は人それぞれなのです。

同じ濃度でも、体の反応が人によって違う。薬が作用する受け皿(受容体)の感受性にも個人差があるため、濃度が同じでも、食欲への影響が強く出る人とほとんど出ない人がいます。

つまり、「あの人は大丈夫だったのに自分は太った」のは、意志や努力の問題ではありません。逆にいえば、ネットの体験談や知人の話が、そのままご自身に当てはまるとも限りません。だからこそ、ご自身の経過を主治医と共有しながら、ご自身に合った対処を探すことが大切になります。

なお、他の病院でもらっている薬や市販薬・サプリメントも、薬の効き方に影響することがあります。当院では初診の際に服用中の市販薬やサプリメントも確認していますが、治療の途中で新しく飲み始めたものがあれば、それも診察で教えてください。

「太るからやめる」が危険な理由――自己判断の中断だけは避けてください

体重が増えてきたとき、一番避けていただきたいのが、主治医に相談せずに自分の判断で薬を減らしたりやめたりすることです。理由は大きく二つあります。

1. 中断症状(中断症候群)が出ることがある

抗うつ薬を急にやめると、めまい、頭痛、しびれるような感覚、吐き気、強い不安やイライラといった症状が出ることがあります。これは「離脱」や「中断症候群」と呼ばれる現象で、薬の種類や飲んでいた期間によって出やすさが異なります。急な中断で体調を崩し、「やっぱり薬がないとダメなんだ」と自信を失ってしまう方もいますが、これは依存ではなく、やめ方の問題です。詳しくは抗うつ薬をやめるときの記事で解説しています。

2. 再発のリスクが高まる

うつの治療では、症状がよくなったあとも一定期間は薬を続けることで、再発を防ぐことが大切だとされています。よくなってきたタイミングで自己判断で中断すると、数週間から数か月して症状がぶり返すことがあります。再発を繰り返すと、そのたびに回復に時間がかかりやすくなるともいわれており、「体重は増えたけれど心は安定している」状態を手放すことのリスクは、決して小さくありません。

体重の悩みは、後述するように薬の調整や生活の工夫で対処できる場合が多いものです。「やめる」以外の選択肢を、まず主治医と一緒に探してみてください。

主治医への相談の仕方――記録があると話が早くなります

「体重のことなんて相談していいのだろうか」とためらう方もいますが、体重の変化は治療の続けやすさに直結する大切な情報です。遠慮なく話題にしてください。相談のとき、次のような情報があると、原因の見当をつけやすくなります。

  • いつから増えたか:薬を始めた(変えた)時期と、体重が増え始めた時期の関係
  • どのくらい増えたか:「なんとなく」ではなく、可能なら数字で。週1回程度、同じ条件(朝起きてすぐなど)で体重を測っておくと確実です
  • 食欲の変化:食事の量が増えたか、間食や夜食が増えたか、甘いものが欲しくなるか
  • 活動量の変化:外出や運動の頻度、休職の有無など生活の変化

できれば、薬を始めるとき・変えるときの体重を記録しておくと、あとで比べる基準になります。精神科の薬の教科書でも、体重に影響しうる薬を使うときは治療開始前から体重などを確認しておくことが勧められています。もちろん、すでに治療中の方が「今から」記録を始めても遅くはありません。

メモやスマホの記録アプリで簡単につけておき、診察のときに見せていただくだけで十分です。「薬のせいかどうか分からないのですが」という前置きのままで構いません。判断するのは主治医の仕事です。

そのうえで、診察では次のような対処を一緒に考えていきます。

  • 生活面の工夫:食事内容の見直し、無理のない範囲での散歩などの運動。うつの回復にとっても、体を動かすことはプラスに働くとされています
  • 薬の調整:症状の安定を保てる範囲で、量の調整や、体重への影響が少ないとされる薬への変更を検討する
  • 経過を見る:回復期の一時的な食欲の戻りであれば、生活が整うにつれて落ち着いてくることもあります

どの方法が合うかは、症状の安定度合いや治療の段階によって変わります。当院でも、体重のご心配は診察のなかで一緒に考えていきますので、率直にお話しください。

生活面でできる現実的な工夫――「痩せなきゃ」と気負わずに

薬の調整と並行して、生活面でできることもあります。ただし、うつの療養中に厳しいダイエットを課すのは禁物です。食事制限のストレスや「守れなかった」という自己否定は、うつの回復そのものの妨げになりかねません。ここでは、療養中でも取り入れやすい、負担の小さい工夫をご紹介します。

  • 体重は「記録するだけ」から始める:週1回、同じ条件で測ってメモする。それだけでも食べすぎへの自然なブレーキになることが知られています。毎日測って一喜一憂する必要はありません
  • 間食を「なくす」より「置き換える」:薬の影響で甘いものが欲しくなるとき、我慢一辺倒はつらいものです。スナック菓子をヨーグルトやナッツ、果物に置き換えるなど、ゼロにしない工夫のほうが続きます
  • 夜食の時間だけ意識する:眠気の出る薬を寝る前に飲む場合、その前後の飲食が習慣になっていることがあります。夕食を少し遅めにする、飲み物をノンカロリーのものにするなど、時間帯を意識するだけでも変わります
  • 散歩から始める:運動は「ジムに通う」ではなく、10〜15分の散歩からで十分です。日中に体を動かして光を浴びることは、体重だけでなく、気分や睡眠リズムの安定にも良い影響があるとされています
  • できた日を数える:「できなかった日」を責めるのではなく、「散歩できた日」「間食を置き換えられた日」を数える方式のほうが、療養中は続きやすくなります

どこまで取り組めるかは、回復の段階によって変わります。まだ布団から出るのがやっとの時期に運動を課すのは逆効果です。「今の自分にどこまでならできそうか」も、診察のなかで一緒に相談していきましょう。

こんなときは早めに主治医へ――受診・相談の目安

体重の変化について、特に次のような場合は、次の予約を待たずに早めに相談することをおすすめします。

  • 短期間で体重が急に増えている(数週間で数kg単位の変化など)
  • 食欲が抑えられない感覚が強く、自分でコントロールできないと感じる
  • 体重増加への悩みから、薬を抜いたり減らしたりし始めている
  • 体重や体型のことが頭から離れず、気分の落ち込みが強まっている
  • むくみや息切れなど、体重以外の体の変化も伴っている

とくに、すでに自己判断で薬を減らし始めている場合は、中断症状や再発のリスクがあるため、できるだけ早く主治医に現状を伝えてください。「勝手に減らしてしまった」と正直に話して叱られることはありません。実際の飲み方を把握できたほうが、主治医は安全な調整を考えられます。

なお、つらさが積み重なって「消えてしまいたい」という考えが頭から離れないなど切迫した状態のときは、通院中の方は主治医に連絡し、命に関わる緊急の場合はためらわず救急(119)を利用してください。

「体重か、心の安定か」の二択ではありません

体重増加に悩む方の多くは、「太り続けるのを我慢して薬を飲むか、薬をやめて再発におびえるか」という二択で考えてしまいがちです。しかし実際には、その間に多くの選択肢があります。

体重への影響が少ないとされる薬に変更する、量を調整する、生活面の工夫と組み合わせる、回復の段階に合わせて薬を見直していく――治療を続けながら体重の悩みに対処する道は、一つではありません。

そもそも精神科の治療の目標は、症状を抑えることだけではなく、その人が自分らしい生活を続けられることにあります。専門書でも、薬物療法の目指すところは症状の消失そのものより、再発を防ぎ、生活の質を保つことだと説明されています。「体重が増えて外出がおっくうになった」「人に会いたくなくなった」というのであれば、それは生活の質に関わる立派な治療上の問題です。我慢すべき些細なことではなく、治療計画を見直すきっかけとして、主治医と共有する価値があります。

治療の方針は、医師が一方的に決めるものではなく、本人の希望や生活上の優先順位を聞きながら一緒に決めていくものです。「効果は保ちたいが、体重はこれ以上増やしたくない」という希望は、その話し合いの出発点として十分すぎるほど正当なものです。

また、体重の変化を「回復のサイン」として捉え直せる場合もあります。食欲がなく痩せていく一方だった時期を思えば、食べられるようになったこと自体は前進です。そのうえで、増えすぎないように手を打っていく、という順番で考えられると、気持ちも少し楽になるかもしれません。

大切なのは、悩みを一人で抱えて自己判断に走らないことです。体重の悩みを主治医と共有することは、わがままでも治療への不満でもなく、治療を長く続けるための正当な相談です。

まとめ――やめる前に、まず相談を

抗うつ薬の治療中に体重が増える背景には、薬の食欲への影響だけでなく、うつからの回復で食欲が戻ること、療養中の活動量の低下など、複数の要因が重なっています。ミルタザピン(リフレックス、レメロン)のように食欲増加が出やすいとされる薬がある一方、その作用が治療上の利点になる場合もあり、薬の良し悪しは一面では決められません。

また、薬の効き方や副作用の出方には、体内での薬の濃度や体の反応性による大きな個人差があります。「他の人は太らなかったのに」と自分を責める必要はありませんし、他の人の体験談がそのまま当てはまるとも限りません。

体重を理由に自己判断で薬を中断すると、中断症状や再発のリスクがあります。体重の記録をつけて主治医に相談すれば、生活面の工夫や、体重への影響が少ない薬への変更など、「やめる」以外の選択肢を一緒に探すことができます。

当院は福岡県春日市の精神科・心療内科として、薬に関するご不安のご相談をお受けしています。体重のことも含めて、治療を続けやすい形を診察のなかで一緒に考えていきましょう。WEB予約からご都合のよい日時をお選びいただけます。

よくある質問

抗うつ薬を飲むと必ず太るのですか?

必ず太るわけではありません。体重への影響は薬の種類によって差があり、同じ薬でも人によってほとんど変わらない方も、増えやすい方もいます。また、体重が増えた場合でも、薬の作用だけでなく、うつからの回復で食欲が戻ったことや、療養中の活動量の低下が関係していることも多く、原因は一つとは限りません。

体重が増えやすい抗うつ薬はありますか?

一般論として、ミルタザピン(リフレックス、レメロン)は食欲を増やす作用が出やすいとされています。この作用は、食欲が落ちて眠れないタイプのうつでは、むしろ治療上の利点として活かされることもあります。また、一部のSSRIも長期間の使用で体重が増えることがあると報告されています。ただし個人差が大きく、実際の影響は診察で経過を見ながら判断していきます。

体重が増えてきたので、薬をやめてもいいですか?

自己判断での中断はおすすめできません。抗うつ薬を急にやめると、めまいやしびれ、不安の悪化などの中断症状が出ることがあり、また症状がぶり返す(再発する)リスクも高まるとされています。体重の悩みは薬の変更や生活面の工夫で対処できる場合が多いので、やめたい気持ちも含めて、まず主治医にご相談ください。

体重のことを主治医に相談してもいいのでしょうか?

もちろんです。体重の変化は治療を続けるうえで大切な情報で、遠慮する必要はまったくありません。いつごろから何kgくらい増えたか、食欲や間食の変化はあるかをメモして伝えていただくと、薬の影響かどうかを判断しやすくなります。そのうえで、薬の調整や生活面の工夫を一緒に考えていきます。

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執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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