福岡県春日市須玖北4丁目34 2階
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勇気を出して精神科を受診したのに、「今の段階では診断名ははっきり言えません」「まずは経過を見ましょう」と言われた。病名が分からないまま薬を飲んでいいのだろうか。自分の状態は深刻ではないと軽く見られたのだろうか。ちゃんと診てもらえているのだろうか――。

診断名がつかないこと、はっきりしないことへの不安は、精神科の受診でとてもよく聞かれる悩みです。しかし結論から言えば、初診で診断が確定しないのは精神科では珍しいことではなく、多くの場合それは「いい加減な診療」ではなく「慎重な診療」のしるしです。そして、診断名が定まっていなくても、治療も休養も、必要な診断書への対応も始めることができます。

この記事では、なぜ精神科の診断はすぐに確定しないことがあるのか、診断名がない期間に何ができるのか、診断が途中で変わることの意味、そして不安なときに主治医へどう聞けばよいかを、福岡県春日市の精神科・心療内科の視点からお伝えします。

精神科の診断は「検査で白黒つく」ものではありません

まず知っておいていただきたいのが、精神科の診断の性質です。

内科であれば、血液検査の数値や画像所見で「この病気です」と客観的に確定できる病気が多くあります。一方、精神疾患のほとんどには、それだけで診断が確定する血液検査や脳の画像検査が存在しません。うつ病かどうかを一発で判定する検査は、現在の医学にはないのです。

では何をもとに診断するかというと、症状の組み合わせ・持続期間・生活への影響・そして経過です。国際的な診断基準(ICDやDSMと呼ばれるもの)には「こういう症状が、これくらいの期間続き、生活に支障が出ている場合」という条件が定められており、医師は診察でうかがったお話をこの基準と照らし合わせて判断します。

ここで重要なのが「経過」という要素です。診断基準の中には「2週間以上」「6か月以上」といった期間の条件が含まれているものが多く、そもそも一時点の診察だけでは判断できない構造になっています。つまり、時間をかけて経過を見ること自体が、精神科の診断プロセスの一部なのです。

初診で診断が確定しないのは珍しくない――その理由

初診で診断名がはっきり告げられないことには、いくつかの理由があります。

1. 似た症状を示す病気が複数ある

眠れない、気分が沈む、意欲が出ない――こうした症状は、うつ病でも、適応障害でも、双極性障害のうつ状態でも、不安症に伴う消耗でも、甲状腺の病気などの身体疾患でも起こりえます。入口の症状が同じでも、背景によって治療の方向が変わるため、慎重な見極めが必要です。

2. 経過を見ないと区別できない組み合わせがある

代表的なのが、うつ病と双極性障害です。双極性障害の方の多くはうつ状態で受診されるため、初診の時点ではうつ病と区別がつかないことがあります。過去に軽い躁状態があったかどうかは、ご本人も「調子がよかった時期」としか覚えていないことも多く、経過の中で初めて見えてくる場合があります。

3. ストレス要因との関係を見極める必要がある

職場のストレスに反応して不調が出ている適応障害なのか、ストレスから離れても続くうつ病なのかは、環境調整や休養の後の経過が判断材料になることがあります。

4. 複数の状態が重なっていることがある

発達特性の上に抑うつが重なっている、不安症と不眠が併存しているなど、複数の要素が絡み合っているケースでは、どれが中心かを整理するのに時間がかかることがあります。

こうした事情があるため、初診で断定せず「現時点では抑うつ状態として治療を始め、経過を見て診断を詰めていく」という進め方は、ごく標準的なものです。むしろ、限られた情報で急いで診断名を断定するほうが、後で治療の方向を誤るリスクがあります。

診断名がなくても、治療と休養は始められます

「病名が決まらないと治療が始まらないのでは」と心配される方が多いのですが、実際は逆です。精神科の治療の多くは、確定診断を待たずに始められます。

診断名がまだ定まっていなくても、目の前にある症状――眠れない、不安が強い、気分が沈む、食欲がない――はそれぞれ対処の対象になります。不眠がつらければ睡眠を整える治療を、不安が強ければ不安を和らげる治療を、状態に合わせて始めることができます。休養が必要な状態かどうかの判断も、診断名の確定を待つ必要はありません。

また、休職などの手続きに必要な診断書も、診断名が確定していなくても発行できる場合があります。診断書には「抑うつ状態」「不安状態」といった状態像で記載する方法があり、多くの職場ではこれで休職の手続きが可能です。休職を考えるほどつらい状態であれば、「診断名がまだだから診断書は無理だろう」と諦めず、主治医にご相談ください。休職の流れについては休職についてのページもご覧ください。

当院でも、初診の段階では状態像として治療を開始し、通院のなかで経過を見ながら診断を整理していく、という進め方をとることがよくあります。診断名の確定と、つらさを軽くすることは、並行して進められるのです。

「診断がつかない=軽く見られた」ではありません

診断名を告げられなかったとき、多くの方が抱くのが「大したことないと思われたのでは」「本気で診てもらえていないのでは」という受け止めです。しかし、診断名の有無と、状態の深刻さや医師の本気度は別のものです。

医師が初診で診断名を明言しない背景には、前の章で挙げた医学的な理由に加えて、診断名を告げること自体の影響への配慮もあります。診断名は一度伝わると、ご本人の自己イメージや、職場・家族との関係に大きな影響を与えることがあります。確度が十分でない段階で重い診断名を伝えてしまうと、後で見立てが変わったときに、かえって混乱や不利益を招きかねません。「確からしくなってから伝える」というのは、その配慮の表れでもあるのです。

逆に、初診で診断名を告げられなかったとしても、治療はきちんと始まっていることがほとんどです。処方が出た、休養の指示があった、次回の予約を勧められた――これらはいずれも、医師があなたの状態を治療が必要なものとして受け止めている証拠です。「診断名を言われなかったから様子見でいいのだろう」と自己判断で通院をやめてしまうのが、この時期に最ももったいない選択です。

また、まれに「様子を見ましょう」という言葉だけで、治療方針の説明がないまま診察が終わってしまったと感じる場合もあるかもしれません。そのときは「様子を見るというのは、具体的に何をどう見ていく段階でしょうか」と聞いていただいて構いません。次の章で触れるように、質問することは診療の妨げではなく、助けになります。

診断が途中で変わるのは「誤診」とは限りません

通院を続けるうちに「適応障害と言われていたのに、うつ病に変わった」「うつ病だったのに双極性障害と言われた」という経験をされる方もいます。最初の診断は間違いだったのか、と不信感を抱くかもしれません。

しかし、診断が変わることは、必ずしも誤診を意味しません。前述のとおり、精神疾患には経過の中で初めて全体像が見えてくるものがあります。うつ状態で治療を始めた方に、あるときはっきりした躁状態が現れて双極性障害と判明する――これは最初の見立てが間違っていたのではなく、その時点では存在しなかった(あるいは確認できなかった)情報が新しく加わった、ということです。

医学的には、その時点で得られる情報から最も妥当な判断(作業仮説と呼ばれることもあります)を立て、新しい情報が加わるたびに見直していくのが誠実な診療とされています。診断の見直しは、主治医がきちんと経過を追い続けている証拠でもあるのです。

もちろん、診断が変われば治療内容が変わることもあります。変更の理由や今後の見通しについて説明が不足していると感じたら、遠慮なく質問して構いません。

それでも不安なとき――セカンドオピニオンという選択肢

主治医の説明を聞いても、「本当にこのままでいいのだろうか」という不安が消えないこともあると思います。そのようなときは、別の医師の意見を聞くセカンドオピニオンや、転院も正当な選択肢です。

診断がはっきりしない状態が長く続いている、治療をしていても改善の実感がない、主治医に質問しても納得のいく説明が得られない――こうした場合に他の医師の見解を求めることは、主治医への裏切りではありませんし、患者さんの当然の権利です。別の視点が入ることで診断の整理が進むこともあります。

一方で、診断がつかないことへの不安から短期間に医療機関を転々とすると、そのたびに情報がリセットされ、かえって「経過を見てもらえる主治医」がいなくなってしまうという面もあります。精神科の診断には経過の情報が重要だからこそ、同じ医師に継続して診てもらうこと自体に診断上の価値があるのです。迷ったときの考え方や具体的な進め方は、精神科の転院・セカンドオピニオンの記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

不安なときの主治医への聞き方

「診断名を聞くのは失礼ではないか」「疑っていると思われないか」とためらう方もいますが、診断や見立てについて質問することはまったく問題ありません。むしろ、疑問を言葉にしていただいたほうが、診療はうまく進みます。聞き方の例をいくつか挙げます。

  • 「現時点では、どういう状態だと考えていらっしゃいますか」
  • 「診断のために、今はどこを見ている段階でしょうか」
  • 「今後、どういうことが分かれば診断がはっきりしそうですか」
  • 「診断がつく前でも、今の治療で症状は良くなっていくものでしょうか」
  • 「会社に提出する書類が必要なのですが、今の段階で書いていただけますか」

ポイントは、「診断名を教えてください」と結論だけを求めるより、「今どういう見立てで、何を確かめようとしているのか」というプロセスを聞くことです。多くの医師は、確定できない段階でも見立てと見通しは説明できます。その説明を聞くことで、「診断名がない=何も分かっていない」わけではないことが実感でき、不安が軽くなることが多いのです。

また、診断書などの書類が必要な事情(休職の手続き、職場への提出期限など)がある場合は、早めに伝えておくと、主治医もそれを踏まえて記載の仕方や時期を考えることができます。「診断がついていないから言い出せない」と後回しにする必要はありません。

口頭で聞きにくければ、メモに書いて診察時に渡す方法もあります。診察室では緊張して聞きたいことを忘れてしまう、という方にこそおすすめの方法です。初診時の準備については初めての方へのページも参考にしてください。

まとめ――診断名の確定を待たずに、つらさへの対処を始めましょう

精神科の診断は、検査で白黒がつくものではなく、症状と経過をもとに時間をかけて定まっていくものです。初診で診断名がはっきりしないのは珍しいことではなく、慎重に診ようとしているしるしであることがほとんどです。そして、診断名が定まる前でも、症状への治療、休養の判断、状態像での診断書対応は始めることができます。診断が途中で変わることも、経過の中で新しい情報が加わった結果であり、誤診とは限りません。

不安なときは、「今どういう見立てですか」「何が分かれば診断がはっきりしますか」と主治医にプロセスを聞いてみてください。それでも納得できなければ、セカンドオピニオンという選択肢もあります。一番避けていただきたいのは、診断がつかない不安から通院そのものをやめて、一人で抱え込んでしまうことです。

なお、つらさが強まり「消えてしまいたい」という考えが頭から離れないなど切迫した状態のときは、通院中の方は主治医に連絡し、命に関わる緊急の場合はためらわず救急(119)を利用してください。

当院は福岡県春日市の精神科・心療内科として、「診断名がつくかどうか分からないけれど、つらい」という段階からのご相談をお受けしています。診断はあくまで、あなたのつらさを軽くするための道具の一つです。診断名の確定を待たずに、今できる対処を診察のなかで一緒に考えていきましょう。WEB予約からご都合のよい日時をお選びいただけます。

よくある質問

初診で診断名を教えてもらえませんでした。よくあることなのでしょうか?

珍しいことではありません。精神科の診断は血液検査や画像で白黒がつくものではなく、症状の組み合わせと経過をもとに判断します。初診の限られた時間で得られる情報だけでは確定できないことも多く、「まずは経過を見ながら」という進め方は、慎重で誠実な対応の一つと考えられています。

診断名がなくても、治療や休職の診断書はお願いできますか?

可能な場合が多いです。つらい症状(不眠、不安、落ち込みなど)への治療や休養の助言は、診断の確定を待たずに始められます。診断書も「抑うつ状態」「不安状態」といった状態像の記載で発行できることがあり、休職などの手続きに使える場合があります。必要な書類があれば診察のなかでご相談ください。

途中で診断名が変わりました。最初の診断は誤診だったのでしょうか?

必ずしも誤診ではありません。精神疾患は経過とともに全体像が見えてくることがあり、例えばうつ状態で始まった方が、後から躁状態が確認されて双極性障害と分かる場合などがあります。その時点の情報で最も妥当な判断をし、新しい情報で見直していくのは、むしろ自然な診療の流れとされています。

診断がはっきりしないまま通い続けてよいのか不安です。転院すべきでしょうか?

まずは主治医に「現時点でどう見立てているか」「今後どうなれば診断がはっきりするか」を聞いてみることをおすすめします。説明を聞いても不安が残る場合は、セカンドオピニオンや転院も選択肢の一つです。治療を中断して一人で抱え込むことだけは避けていただきたいと考えています。

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執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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