福岡県春日市須玖北4丁目34 2階
休診日: 水曜・木曜・日曜・祝日

朝、目は覚めているのに体が起き上がらない。今日こそ授業に出ようと思っていたのに、気づけば昼を過ぎている。課題の締め切りは迫っているのに手がつかず、単位の計算をしては不安になる。友達には「最近来ないね」と言われるけれど、本当の理由は話せない――。

大学生活のなかでこうした状態に陥ることは、決して珍しいことではありません。そして多くの学生さんが、「自分の怠けだ」「自己管理ができていないだけだ」と自分を責めながら、誰にも相談できずに一人で抱え込んでいます。しかしその背景には、うつ病や適応障害などの、治療や休養が必要な心の不調が隠れていることがあります。

この記事では、大学生に多い不調のきっかけ、授業に行けない状態の背景に何があるのか、学生相談室などの学内支援の使い方、そして「休学」という選択肢について、福岡県春日市の精神科・心療内科の視点からお伝えします。

大学生に多い不調のきっかけ――環境の変化が重なる時期

大学時代は、人生のなかでも環境の変化がもっとも集中する時期のひとつです。心の不調のきっかけになりやすい要因を挙げてみます。

  • 一人暮らしの開始:親元を離れ、食事・睡眠・金銭管理をすべて自分でこなす生活は、想像以上にエネルギーを使います。生活リズムが崩れても誰にも気づかれず、不調が進みやすい環境でもあります
  • 人間関係の変化:高校までと違い、大学はクラスの枠が緩く、自分から動かないと人間関係ができにくい場です。サークルやアルバイト先での関係に疲れてしまう方もいます
  • 研究室・ゼミの環境:学年が上がると研究室に所属し、指導教員や先輩との密な人間関係のなかで研究を進めることになります。合わない環境に長時間身を置くことが、強いストレスになる場合があります
  • 就職活動:エントリーや面接での不採用が続くと、「自分は社会に必要とされていない」という感覚に陥りやすく、就活期は気分の落ち込みが起こりやすい時期とされています
  • 昼夜逆転:授業のない日が続いたり、深夜のアルバイトやオンラインゲームで夜型の生活が定着したりすると、睡眠リズムが崩れます。睡眠リズムの乱れは、気分の落ち込みや意欲低下と互いに悪影響を及ぼし合うことが知られています

また、大学生の年代(18〜25歳前後)は、うつ病や不安症など多くの心の病気が初めて発症しやすい年代でもあるとされています。「環境のせい」と「病気のはじまり」が重なりやすい時期なのです。

「授業に行けない」の背景にあるもの

「授業に行けない」「単位が取れない」という状態は、周囲からは怠けや遊びすぎに見えてしまいがちです。しかし、本人が「行かなければ」と強く思っているのに行けない場合、背景に次のような状態が隠れていることがあります。

うつ病・うつ状態

朝起きられない、何をするにもおっくう、好きだったことも楽しめない、集中できず本や資料が頭に入らない――こうした状態が続いているなら、うつ病の可能性を考える必要があります。「夜は元気なのに朝がだめ」という日内変動も、うつのサインのひとつとされています。

適応障害

研究室や人間関係など、特定のストレス要因にさらされてから気分の落ち込みや不安、不眠が始まった場合は、適応障害が考えられます。ストレスの場(大学)に近づこうとすると症状が強くなり、離れると比較的元気、というパターンが特徴的です。

不安障害

大教室に入ると動悸や息苦しさが出る、発表やグループワークが怖くて授業を避けてしまう、といった場合は、パニック障害や社交不安障害などの不安の病気が関係していることがあります。

発達特性による行き詰まり

高校までは時間割も課題も与えられていたのに対し、大学では履修計画・課題管理・研究の進行をすべて自分で組み立てる必要があります。ADHDやASDなどの発達特性のある方は、この「自己管理の負荷」が一気に高まる大学で初めて行き詰まりが表面化することがあり、「大学に入ってから急にうまくいかなくなった」という形で受診につながるケースも少なくありません。

どれに当てはまるかをご自身で判断する必要はありません。大切なのは、「行けない」状態が続いているという事実そのものが、相談してよいサインだということです。

学内支援を使う――学生相談室・保健管理センター・学務課

多くの大学には、学生の心身の健康をサポートする仕組みが用意されています。授業料に含まれるサービスのようなものですから、遠慮せず活用してください。名称は大学によって異なりますが、一般に次のような窓口があります。

  • 学生相談室(学生相談カウンセリング):カウンセラーが学業・人間関係・進路などの悩み相談に応じてくれる窓口です。多くは無料・予約制で、秘密は守られます。「何をどう相談すればいいか分からない」段階からで大丈夫です
  • 保健管理センター(保健室・健康管理室):体調面の相談窓口で、大学によっては精神科医や内科医が定期的に診察や相談を行っています。医療機関の受診が必要かどうかの見立てや、学外の医療機関の紹介をしてもらえることもあります
  • 学務課・教務課(学部の事務窓口):履修・単位・休学などの制度上の手続きを担当する窓口です。「単位が危ない」「休学を考えている」といった制度面の相談はここが窓口になります。授業担当の教員への配慮依頼や、レポート等での対応の可否など、修学上の配慮について相談できる場合もあります

「いきなり精神科はハードルが高い」という方は、まず学生相談室から入るのがおすすめです。相談のなかで医療的な対応が必要と判断されれば、医療機関へつないでもらえます。逆に、先に医療機関を受診して、大学側との調整は学生相談室と連携して進める、という順番でも構いません。

休学という選択肢――制度の一般的なかたち

治療や休養に専念するために、「休学」という制度を使うことができます。一般的なポイントを整理します。

  • 手続きや条件は大学ごとに異なります。休学できる期間の上限、申請の締め切り、休学中の授業料や在籍料の扱いは大学・学部によってさまざまです。必ず所属大学の学務課で確認してください
  • 病気を理由とする休学では、医師の診断書の提出を求められることが多いのが一般的です。書式が大学指定の場合もあります
  • 休学中の学費の扱いは大学により大きく異なります。授業料が免除・減額される大学もあれば、在籍料がかかる大学もあります。奨学金を受けている場合は休止・停止などの手続きが必要になることが多いため、奨学金の窓口にも早めに確認してください

「休学までは考えていないけれど、今学期は乗り切れそうにない」という段階なら、履修の取り下げや試験での配慮など、休学より小さい選択肢がないかを学務課や学生相談室に相談してみる方法もあります。

通院先の医療機関に休学を検討していることを伝えれば、診察で状態を評価したうえで、診断書の作成について相談できます。当院でも診断書の作成に対応しています。料金や作成にかかる日数は診断書料金・作成日数のページをご覧ください。

休学は「逃げ」ではありません――回復のための時間の使い方

「同級生から遅れてしまう」「親に申し訳ない」「一度休んだら戻れなくなりそう」――休学を考えるとき、多くの学生さんがこうした思いに苦しみます。

しかし、心の不調を抱えたまま無理に在籍を続けると、授業に出られないまま単位を落とし、留年が確定し、さらに自信を失う……という悪循環に入ってしまうことがあります。休学は、この悪循環を止めて、回復に専念する時間を制度として確保するための仕組みです。逃げではなく、復学というゴールに向けた治療の選択肢のひとつと考えてください。

休学中の過ごし方は、回復の段階に合わせて変わっていきます。

  • 前半(休養期):まずはしっかり休むことが最優先です。「休学したのだから何か成果を出さなければ」と資格勉強などを詰め込む必要はありません。眠れて、食べられて、少しずつ気持ちが楽になることが先です
  • 中盤(回復期):エネルギーが戻ってきたら、生活リズムを整えることに取り組みます。決まった時間に起きる、日中に散歩する、昼夜逆転を戻す、といった土台づくりです
  • 後半(復学準備期):図書館に通ってみる、短時間のアルバイトをしてみるなど、「決まった時間に決まった場所へ行く」練習を段階的に行います。復学の時期や履修の組み方は、主治医・学生相談室・学務課と相談しながら、無理のない計画を立てていきます

焦って早く戻ろうとするより、土台を固めてから戻るほうが、結果的に安定して学業を続けられることが多いとされています。

初めて精神科を受診するとき――大学生の方によくある心配

「精神科に行くほどではない気がする」「親に知られたくない」「お金が心配」――大学生の方が受診をためらう理由には、いくつかの共通したパターンがあります。

受診のハードルについて。精神科・心療内科は、「病気かどうか分からない段階」で相談してよい場所です。診察の結果、病気とまでは言えず経過を見ましょう、という結論になることもありますし、それはそれで大きな安心材料になります。「眠れない」「授業に行けない」というそのままの言葉で伝えていただければ十分で、症状をうまく説明する準備は必要ありません。

受診と大学・家族の関係について。医療機関には守秘義務があり、受診したことやその内容が本人の同意なく大学に伝わることはありません。保険証を使った受診はご家族の加入する健康保険の記録に残る場合があるなど、状況によって事情が異なるため、気になる点は受診時にご相談ください。

費用について。保険診療での外来通院の自己負担は、一般的な学生生活のなかで工面できないほど高額になることは通常ありません。通院が長く続く場合には、自己負担を軽くする自立支援医療という公的制度もあります(条件や自己負担は加入する健康保険や自治体により異なります)。初診の流れや持ち物については初めての方へのページにまとめています。

保護者の方へ――問い詰めるより、体調を気づかう声かけを

お子さんの留年や休学の話を聞いて、動揺しない親御さんはいません。ただ、「なぜ授業に行かないのか」「学費を出しているのに」と問い詰めることは、すでに自分を責めているご本人をさらに追い詰めてしまいがちです。

まずは「最近ちゃんと眠れている?」「ご飯は食べられている?」と、成績ではなく体調を気づかう声かけから始めてみてください。一人暮らしのお子さんの場合、連絡の頻度が急に減った、電話の声に張りがない、帰省したときに表情が乏しい・痩せた、といった変化は大切なサインです。

ご本人が受診をためらっている場合の進め方については、受診を検討している医療機関に問い合わせてご確認ください。また、大学の学生相談室が保護者からの相談に応じている場合もあります。

受診の目安――こんなときはご相談ください

次のような状態が続いているなら、医療機関への相談を検討するタイミングです。

  • 授業に行けない状態が2週間以上続いている
  • 朝起きられない、夜眠れないなど、睡眠の乱れが自分では戻せなくなっている
  • 食欲がない、体重が減ってきた
  • 好きだったこと(趣味・友人との時間)が楽しめない
  • 課題や研究に集中できず、内容が頭に入らない
  • 「自分はだめだ」「消えてしまいたい」という考えが浮かぶ

最後の項目のように、消えてしまいたい気持ちが切迫している場合は、通院中の方は主治医に連絡し、命に関わる緊急の場合はためらわず救急(119)を利用してください。

まとめ――一人で抱え込まず、使える支援を使ってください

大学生活は、一人暮らし・人間関係・研究室・就活と、環境の変化とストレスが重なる時期であり、心の病気が初めて現れやすい年代でもあります。「授業に行けない」「単位が取れない」の背景には、うつ病・適応障害・不安障害・発達特性による行き詰まりなど、治療や支援で改善しうる状態が隠れていることがあります。学生相談室・保健管理センター・学務課といった学内の窓口は、そのために用意された仕組みです。休学は逃げではなく、回復に専念するための制度であり、手続きは大学ごとに異なるため学務課への確認が出発点になります。

当院は福岡県春日市の精神科・心療内科として、大学生の方の気分の落ち込み、不眠、授業に行けないといったご相談をお受けしています。休学すべきかどうか迷っている段階からのご相談で構いません。診察のなかで状態を整理し、これからの進め方を一緒に考えます。なお、学内のどの窓口を使うかは、ご自身の大学の案内でご確認いただくことになります。診断書については、診察の結果必要と判断した場合に作成します。WEB予約からご都合のよい日時をお選びいただけます。

よくある質問

授業に行けないのは甘えでしょうか?

甘えではありません。「行かなければ」と思っているのに体が動かない、家を出ようとすると気分が悪くなる、といった状態は、うつ病や適応障害、不安障害などの心の不調のサインであることが少なくありません。意思の力で解決しようとして悪化させてしまう前に、学生相談室や医療機関に相談することをおすすめします。

休学するには診断書が必要ですか?

休学の手続きや必要書類は大学ごとに異なりますが、病気を理由とする休学では医師の診断書の提出を求められることが多いです。まずは所属学部の学務課(教務課)や学生相談室で、自分の大学の手続きを確認してください。診断書が必要な場合は、通院先の医師に休学を検討していることを伝えれば、状態を評価したうえで作成について相談できます。

休学すると就職活動で不利になりませんか?

休学の理由や過ごし方は人それぞれで、休学したこと自体が一律に不利になるとは言い切れません。体調を崩したまま無理に在籍を続けて留年や退学に至るより、必要な時期にしっかり休んで回復してから復学するほうが、長い目で見て学業やその後の生活にプラスになることも多いと考えられます。不安な場合は大学のキャリア支援窓口にも相談できます。

親としては何をすればよいですか?

成績や出席を問い詰めるのではなく、「最近眠れている?」など体調を気づかう声かけから始めてください。一人暮らしの場合は生活の様子が見えにくいため、連絡が急に減った、帰省時に表情が乏しいなどの変化は大切なサインです。本人が受診をためらっている場合の進め方については、医療機関に問い合わせてご確認ください。

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執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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