福岡県春日市須玖北4丁目34 2階
休診日: 水曜・木曜・日曜・祝日

「処方された薬の説明書を読んだら、副作用がずらっと書いてあって怖くなった」「飲もうと決めたはずなのに、袋を開けられないまま数日たってしまった」――薬局で薬を受け取ったあと、こうした状態になる方は少なくありません。

診察では納得して「飲んでみます」と言えたのに、家で説明書や添付文書を読み、ネットで薬の名前を検索するうちに、怖さが膨らんでしまう。これは意志が弱いからでも、気にしすぎだからでもありません。副作用の情報がどういう仕組みで書かれているかを知らないまま読めば、誰でも怖くなるように書かれているからです。

この記事では、副作用欄になぜあれほど多くの症状が並ぶのか、「起こりうる」と「自分に起こる」の違い、不安そのものが体の不調を生む「ノセボ効果」、ネット検索や体験談との距離の取り方、そして飲む前・飲み始めに医師や薬剤師とどうやり取りすればよいかをお伝えします。

なお、「そもそも薬を使わずに治療したい」という方に向けては、薬を飲みたくないときの相談の仕方の記事を別に用意しています。この記事は、「飲むと決めた(決めかけている)のに、怖くて踏み出せない」方に向けたものです。

副作用欄には、なぜあんなにたくさん書いてあるのか

添付文書や薬の説明書の副作用欄を読むと、頭痛、吐き気、めまい、眠気から、めったに起こらない重い症状まで、ずらりと並んでいます。初めて読んだ方が「こんなに危険なものを飲むのか」と感じるのは無理もありません。

しかし、この長いリストは「この薬を飲むとこれが全部起こる」という意味ではありません。副作用欄は、開発段階の試験や発売後の報告のなかで、薬を飲んでいた人に生じた好ましくない症状を、幅広く集めて記載する仕組みになっています。そこには次のような性質があります。

  • 因果関係がはっきりしないものも含まれる。 薬を飲んでいる期間にたまたま起きた症状が、「薬との関係を否定できない」として記載されることがあります。
  • 頻度は項目によって大きく違う。 比較的経験されやすいものから、ごくまれな報告まで、同じリストの中に並んでいます。読み手には同じ重みに見えても、実際の起こりやすさは大きく異なります。
  • 網羅的に書くことが求められている。 医療者が安全に薬を使うための資料として、可能性のある情報をもれなく載せる方向で作られています。「怖がらせないように減らす」のではなく「見落とさないように全部書く」文書なのです。

つまり、副作用欄が長いことは「危険な薬」の証拠ではなく、「情報が丁寧に集められている」ことの表れです。むしろ、長く使われてきた薬ほど報告の蓄積が多く、記載も増える傾向があります。

「起こりうる」と「自分に起こる」は違う

副作用欄を読んで怖くなるとき、頭の中では「起こりうる」が「自分に起こる」にすり替わっていることがよくあります。

けれども、リストに載っているのはあくまで「報告されたことがある症状」であって、あなたに起こることの予告ではありません。多くの方は、目立った副作用なく飲み続けています。また、飲み始めに何らかの違和感があっても、体が薬に慣れる過程の一時的なもので、数日から数週間で軽くなっていくことも少なくありません(抗うつ薬の飲み始めについては抗うつ薬はいつ効き始めるかの記事でも触れています)。

そしてもうひとつ大事なのは、飲まないことにもリスクがあるという点です。副作用の可能性だけを見て「飲む・飲まない」を考えると、天秤の片側が空のままです。いまの症状が続くこと、治療が始まらないまま生活への影響が長引くこと――そのリスクと、副作用の可能性とを比べて、医師は「この方にはこの薬が役に立ちそうだ」と判断して処方しています。怖さを感じたときは、「起こりうるものが、自分にどのくらい起こりやすいのか」「飲まなかった場合はどうなりそうか」を、処方した医師に直接聞いてよいのです。

不安が体の不調を生む――ノセボ効果という現象

副作用への不安と付き合ううえで、知っておいていただきたい現象があります。ノセボ効果です。

「この薬で悪いことが起こるかもしれない」という予期や不安があると、薬の成分とは関係なく、実際に吐き気・頭痛・だるさ・めまいなどの不調が現れることがあります。「効くと期待すると効きやすくなる」プラセボ効果の、いわば裏側にあたる現象です。臨床試験で有効成分の入っていない偽薬を飲んだ人にも副作用の訴えが出ることは古くから知られており、不安や予期が体の症状を生み出す力は、決して小さくありません。

ここで強調したいのは、ノセボ効果による不調は気のせいでも演技でもないということです。本人は本当に苦しいのです。副作用欄を読み込み、体験談を検索し、「あの症状が出たらどうしよう」と身構えながら飲み始めれば、体はその不安に反応します。これは心の弱さの問題ではなく、誰にでも備わっている心と体のつながりの仕組みです。

だからこそ、飲む前に不安を解消しておくことには、実際的な意味があります。疑問を医師や薬剤師にぶつけ、納得の度合いを上げてから飲み始めることは、気持ちの問題にとどまらず、ノセボ効果による不調を減らすことにつながります。

ネット検索・体験談との距離の取り方

薬の名前で検索すると、体験談やレビューがたくさん見つかります。参考になる面もありますが、次の偏りがあることを知っておいてください。

  • 困った人ほど書き込む。 問題なく飲めている多数の人は、わざわざ体験を書きません。ネット上の体験談は、つらかった経験に大きく偏ります。
  • 同じ薬でも、状況が違う。 診断、量、併用薬、体質が違えば、経過はまったく違います。他人の体験は、あなたの予告にはなりません。
  • 読むほど不安が育つ。 不安なときの検索は、安心できる情報より怖い情報に目が留まりやすく、読むほど確信が強まっていきます。そしてその不安自体が、前述のノセボ効果の下ごしらえになってしまいます。

検索を一切やめる必要はありませんが、「不安が強いときの深夜の検索はしない」「調べて出てきた疑問は、そのまま次の診察で聞くリストにする」といった距離の取り方をおすすめします。ネットで答えを確定させるのではなく、疑問を専門家に運ぶ道具として使うのがコツです。

飲む前に、医師・薬剤師に確認してよいことリスト

「こんなことを聞いたら失礼では」とためらう方が多いのですが、飲む前の質問は治療の一部です。次のようなことは、遠慮なく確認してください。

  • この薬は、私のどの症状のために出ているのか
  • 飲み始めに出やすい症状はあるか。あるとしたら、いつ頃おさまることが多いか
  • 説明書のこの項目(気になる副作用)は、実際どのくらい起こるものか
  • どんな症状が出たら連絡すべきか。連絡先は診察までの間どこになるか
  • 車の運転や仕事、飲酒との兼ね合いはどうか
  • 途中でやめたくなったら、どうすればよいか(自己判断で中断してよい薬か)
  • 依存が心配な場合、この薬はどうなのか(依存の不安については薬への依存が心配な方の記事もご覧ください)

診察で聞きそびれても、薬局の薬剤師に尋ねることができますし、次の診察で聞き直しても構いません。「怖くてまだ飲めていません」という報告自体も、医師にとって重要な情報です。叱られる話ではなく、始め方を一緒に考え直すきっかけになります。

飲み始めの不調は、こう伝えると役に立つ

飲み始めてから「なんとなく変だ」と感じたときは、自己判断で急にやめる前に、処方した医師か薬剤師に相談してください。薬によっては、急な中断そのものが不調の原因になることがあるためです。

伝えるときは、次の点をメモしておくと診察で役に立ちます。

  • いつから(飲み始めて何日目か)
  • どんな症状が(体のどこに、どんなふうに)
  • どのくらい続くか(一日中か、飲んだ後の数時間か)
  • 生活への影響(仕事や食事、睡眠に差し支えているか)
  • 薬は続けているか(飲めている・減らした・止めた)

こうした情報があると、医師は「体が慣れる過程の一時的なものか」「薬の変更を検討すべきものか」を判断しやすくなります。つらいときは次の予約を待たず、早めに連絡してください。我慢を重ねてから「実はずっとつらかった」と分かるより、早く共有していただくほうが、治療はうまく進みます。

当院での実際

当院では、初診の際に、いま服用中のお薬だけでなく市販薬やサプリメントも確認しています。飲み合わせをふまえて処方を考えるためであり、「病院の薬以外のことは言いにくい」と隠す必要はまったくありません。普段お使いのものがあれば、そのままお伝えください。

また、当院の初診は問診を含めて30分程度お時間を取り、薬を提案する場合には、その薬を選んだ理由や飲み始めの注意点をご説明したうえで、疑問にお答えしています。「副作用が怖い」「説明書を読んで不安になった」という気持ちも、診察で率直におっしゃってください。外来でも、薬を飲むことへの不安はよくご相談いただくテーマのひとつです。不安を残したまま飲み始めるより、納得してから始めるほうがよい――というのが当院の考え方です。

まとめ――怖さは、隠さずに診察へ持ってきてください

薬の説明書や添付文書の副作用欄は、因果関係がはっきりしないものやまれな報告も含めて、幅広く記載する仕組みで作られています。リストの長さは危険の証拠ではなく、「起こりうる」ことは「自分に起こる」ことの予告ではありません。一方で、副作用への強い不安は、ノセボ効果として実際の体の不調につながることがあります。だからこそ、飲む前に疑問を医師・薬剤師にぶつけ、納得を積み上げてから始めることには、実際的な価値があります。

怖くて飲めないままの薬袋があるなら、それを責める必要はありません。「怖くて飲めていない」という事実ごと、次の診察に持ってきてください。そこから一緒に考え直すことができます。

すでに通院中の方で薬について迷いがある方は、まず主治医にご相談ください。命に関わる緊急の場合は、ためらわず救急(119)を利用してください。

当院は福岡県春日市の精神科・心療内科です。「薬の副作用が怖くて一歩が踏み出せない」という方も、その不安ごとお話しいただける診察を心がけています。受診をご希望の方は、WEB予約からご都合のよい日時をお選びください。

よくある質問

薬の説明書に副作用がたくさん書いてあるのは、危険な薬だからですか?

そうではありません。添付文書や薬の説明書の副作用欄には、その薬との因果関係がはっきりしないものも含めて、これまでに報告された症状が幅広く記載される仕組みになっています。記載が多いことは「情報が丁寧に集められている」ことの表れであって、その薬が特別に危険であることを意味しません。書かれている症状の多くは、頻度がまれなものや、飲み始めの一時的なものです。気になる項目があれば、飲む前に医師や薬剤師に「自分の場合はどうか」を確認していただくのが確実です。

副作用が怖くて飲めないのは、気にしすぎでしょうか?

気にしすぎではなく、自然な反応です。体に入れるものについて慎重になるのは当然のことですし、副作用への不安から薬をためらう方は実際に多くいらっしゃいます。大切なのは、怖さを一人で抱えて飲まないまま過ごすのではなく、その怖さ自体を医師や薬剤師に伝えることです。何が特に不安なのかを共有できれば、説明を補ったり、始め方を調整したりと、一緒に対処する方法があります。

ノセボ効果とは何ですか?

「この薬で悪いことが起こるかもしれない」という不安や予期が、実際に体の不調として現れる現象をいいます。薬の成分とは関係なく、吐き気・頭痛・だるさなどが生じることがあり、副作用への強い不安を抱えて飲み始めた場合に起こりやすいとされています。これは気のせいでも演技でもなく、誰にでも起こりうる心と体の仕組みです。不安を事前に医師と共有し、疑問を解消してから飲み始めることが、ノセボ効果を和らげる助けになります。

飲み始めてから体調が変だと感じたら、どうすればいいですか?

自己判断で急にやめてしまう前に、まず処方した医師か薬剤師に連絡・相談してください。いつから、どんな症状が、どのくらい続いているかをメモしておくと伝わりやすくなります。飲み始めの不調には、体が薬に慣れる過程の一時的なものもあれば、薬の変更を検討したほうがよいものもあり、その見極めは診察での大事な情報になります。症状がつらいときは我慢せず、次の予約を待たずに相談していただいて構いません。

このテーマの記事を探す

症状や困りごとから探し直す

執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

WEB予約