福岡県春日市須玖北4丁目34 2階
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「待合室では言いたいことがたくさんあったのに、診察室に入った途端、頭が真っ白になった」「調子はどうですかと聞かれて、つい『大丈夫です』と答えてしまった」——通院を続けている方から、こうしたお話を本当によく伺います。

精神科・心療内科の再診は、初診に比べると短い時間で行われることが一般的です。その短さに物足りなさを感じる方もいらっしゃると思います。この記事では、その限られた時間を患者さんと医師の双方でうまく活かすための工夫として、「準備メモ」の作り方と話し方のコツをご紹介します。難しいことは何もありません。3項目の箇条書きだけで、診察の中身は大きく変わります。

なお、初めての受診について知りたい方は「精神科の初診で医師は何を考えている?」という記事がありますので、そちらをご覧ください。この記事は、すでに通院を続けている方の「毎回の診察」に焦点を絞ってお話しします。

再診の診察で、医師は何を知りたいのか

準備メモを作る前に、まず「医師は再診で何を知りたがっているのか」を知っておくと、何をメモすればよいかが自然に見えてきます。

再診の診察で医師が特に知りたいのは、次のようなことです。

  • 前回の診察から、何がどう変わったか。良くなったことも、悪くなったことも、変わらないことも、すべて大切な情報です。
  • 睡眠。寝つき、途中で目が覚めるか、朝の目覚め、日中の眠気。睡眠は心の調子を映す鏡のようなもので、多くの医師が毎回確認します。
  • 食欲・体重の変化。食べられているか、食べすぎていないか。
  • 薬の飲み心地と飲み忘れ。飲んでどう感じるか、気になる症状はないか、飲み忘れがどのくらいあるか。
  • 生活の出来事。仕事や学校、家庭での変化、大きなストレスになった出来事、逆にうれしかったこと。

つまり医師は、「症状そのもの」だけでなく、「前回からの変化」と「生活の中での様子」を知りたいのです。診察室での数分間の様子だけでは、この数週間の暮らしぶりは分かりません。だからこそ、患者さんが持ってきてくださる情報が、治療の方向を決めるいちばんの手がかりになります。

準備メモは3項目でいい——長い日記より箇条書き

「準備」というと、症状を細かく記録した日記のようなものを想像されるかもしれません。もちろん詳しい記録が役立つ場面もありますが、毎回の診察のためであれば、実はもっとシンプルで大丈夫です。むしろ、長い文章は短い診察時間の中では読みきれず、いちばん大事なことが埋もれてしまうことがあります。

おすすめは、次の3項目の箇条書きです。

  1. 前回からいちばん変わったこと(1〜2行)
    • 例:「眠れる日が増えた」「先週から朝起きるのがつらい」「変化なし」
  2. いま困っていること・聞きたいことの上位2つ
    • 例:「仕事中の不安をどうしたらいいか」「この症状は薬のせい?」
  3. 薬について気になること
    • 例:「夕方に眠気が強い」「週に2回くらい飲み忘れる」「そろそろ減らせないか聞きたい」

これだけです。スマートフォンのメモアプリでも、紙の切れ端でも、お薬手帳の余白でもかまいません。診察の前日か当日の朝に、5分だけ時間を取って書いてみてください。

書くタイミングも工夫できます。診察の直前に思い出そうとするより、日々の暮らしの中で「あ、これは次の診察で言おう」と思った瞬間に、スマートフォンのメモに一行書き足しておく方法が続けやすいようです。診察前夜に、たまったメモの中から3項目に絞り込む——この流れができると、準備はほとんど負担になりません。

ポイントは「全部書こうとしない」ことです。この2週間・4週間に起きたことをすべて伝える必要はありません。医師に届けたいのは、量ではなく「いちばん大事なこと」です。3項目に絞る作業そのものが、ご自身の状態を整理する時間にもなります。

話す順番のコツ——いちばん聞きたいことを最初に

メモができたら、次は「話す順番」です。ここにひとつだけコツがあります。いちばん聞きたいこと・いちばん困っていることを、最初に言うことです。

診察では、つい時系列で話したくなります。「まず先々週にこんなことがあって、それから……」と話し始めると、肝心の相談にたどり着く前に時間が来てしまうことがあります。これは患者さんが悪いのではなく、人が話すときの自然な流れがそうなっているだけです。

そこで、順番を逆にします。

  • 「今日いちばん聞きたいのは、薬の眠気のことです」
  • 「いちばん困っているのは、朝起きられないことです」

このように最初の一言で「今日の本題」を医師に渡してしまうと、医師はその話題を軸に質問を組み立てられます。結果として、同じ診察時間でも、患者さんが本当に相談したかったことに時間が使われやすくなります。

聞きたいことが3つも4つもあるときは、上位2つに絞りましょう。残りは次回に回してよいのです。「今日はこの2つ、次回はあの話」と分けて考えると、毎回の診察に小さな目的ができて、通院そのものが続けやすくなります。

「大丈夫です」と言ってしまうのはなぜか——その心理と対処

「調子はどうですか」と聞かれて、本当は眠れていないのに「大丈夫です」と答えてしまう。これは診察室でとてもよく起こることです。ご自身を責める必要はまったくありません。背景には、いくつかの自然な心理があります。

  • 診察室では症状が薄れて感じられる。つらさのピークは夜中や朝方にあることが多く、日中の診察室では「そこまでではない」ように思えてしまいます。
  • 医師に気をつかってしまう。「忙しそうだから」「心配をかけたくないから」と、つい明るく答えてしまう方は少なくありません。
  • 「大丈夫」が口癖になっている。長年、職場や家庭で「大丈夫です」と答え続けてきた方ほど、診察室でも同じ言葉が出ます。
  • つらさをうまく言葉にできない。「何と言えばいいか分からない」まま質問が来ると、いちばん短い答えとして「大丈夫です」が出てきます。

対処法は、意外とシンプルです。

まず、「大丈夫です」のあとに一言だけ足す練習をしてみてください。「大丈夫です。ただ、夜中に目が覚めるのは続いています」——この一言があるだけで、医師が受け取る情報はまったく違います。

もうひとつは、メモをそのまま見せることです。言葉にするのが難しい日は、「今日はこれを見てもらえますか」とメモを差し出していただくだけでかまいません。書き言葉のほうが本音を出しやすい、という方はたくさんいらっしゃいます。医師の側も、メモを見せていただくことを面倒だとは思いません。むしろ、短い時間で状態を正確に把握できる、ありがたい手がかりです。

記録アプリやメモの活用——「点」ではなく「線」で伝える

診察は数週間に一度の「点」ですが、体調は毎日続く「線」です。この線の情報を診察に持ち込めると、医師の判断はより確かなものになります。

といっても、毎日詳しく書く必要はありません。続けやすい形で十分です。

  • 気分と睡眠だけの簡単な記録。「気分を5段階で」「何時に寝て何時に起きたか」だけでも、並べて見ると波が見えてきます。
  • スマートフォンの記録アプリ。気分や睡眠を記録できるアプリを使うと、グラフで振り返りやすくなります。使い慣れたカレンダーアプリに一言書くだけでも立派な記録です。
  • 「特に悪かった日」だけ書く方式。毎日が負担なら、調子を崩した日だけ日付と様子をメモしておく方法もあります。

記録は「毎日つけなければ意味がない」ものではありません。抜けた日があっても、残っている分だけで役に立ちます。記録が途切れたこと自体を気に病む必要はありません。

なお、これまでの経過をもう少し長い目で整理してみたい方には、人生の出来事と気分の波を一枚にまとめる「ライフチャート」という方法もあります(当ブログに解説記事があります)。毎回の診察の準備とは別に、一度作っておくと治療の見通しに役立つことがあります。

薬の不安・減らしたい気持ちこそ、診察で言葉にしてほしい

準備メモの3項目のうち、特にお願いしたいのが「薬について気になること」です。

  • 「副作用が心配で、実はあまり飲めていない」
  • 「調子がいいので、そろそろ減らしたい」
  • 「この薬、いつまで飲むのだろうと不安になる」

こうした気持ちは、とても自然なものです。そして、医師に伝えにくいと感じる方が多いテーマでもあります。「先生が出してくれた薬に文句を言うようで気が引ける」と話される方もいらっしゃいます。

けれども、医師の立場からすると、これらは診察でいちばん聞きたいことのひとつです。飲み心地の違和感や飲み忘れの頻度が分かれば、薬の種類や量、飲むタイミングを調整できます。減らしたい気持ちを伺えれば、いつ・どのくらいのペースなら安全に減らせそうか、一緒に計画を立てられます。

飲み忘れについても同じです。「ちゃんと飲めていないと言ったら怒られるのでは」と隠してしまうと、医師は「薬を飲んでいるのに効いていない」と判断し、不要な増量や変更につながることがあります。「週に2回くらい忘れます」と正直に教えていただくほうが、飲み方の工夫(一包化、飲む時間の変更など)を一緒に考えられるので、結果として治療がうまく進みます。

いちばん避けたいのは、相談のないまま自己判断で薬を急にやめてしまうことです。薬の種類によっては、急な中断で体調を崩したり、症状がぶり返したりすることがあります。「やめたい」と思ったときこそ、その気持ちをそのまま診察室に持ってきてください。やめたい気持ちを伝えたからといって、叱られることも、無理に飲まされることもありません。

家族が同席するときのコツ

ご家族が診察に同席されることもあると思います。ご本人が話しにくいことを補ってもらえたり、家での様子という貴重な情報が加わったりと、同席には大きな意味があります。一方で、限られた時間の中では、ちょっとした工夫があるとより活きます。

  • 主役はご本人。まずご本人が話し、ご家族は補足に回る形にすると、ご本人の言葉が診察の中心に残ります。
  • 家族側も「伝えたいこと」を1〜2点に絞る。家での睡眠の様子、食事、表情の変化など、ご本人が自覚しにくい点は特に貴重です。
  • 本人の前で言いにくいことは、事前にメモで。受付でメモを渡していただく、あらかじめご本人と相談して同席の仕方を決めておく、といった方法もあります。
  • 叱責や説得の場にしない。「もっと頑張れるはず」といった言葉は、診察室ではご本人を萎縮させてしまうことがあります。心配な気持ちは「家でこういう様子で心配です」という事実の形で伝えていただくのが効果的です。

ご家族の同席を毎回にするか、節目だけにするかも含めて、迷ったら診察で相談してください。

言えなかったことは、次回でいい

最後に、いちばんお伝えしたいことです。

どれだけ準備しても、言えないまま終わる日はあります。緊張していた日、体調が悪くて考えがまとまらなかった日、話が別の方向に進んだ日。それで通院が失敗になるわけではありません。言えなかったことは、次回の最初に言えばいいのです。

通院は一回ごとの勝負ではなく、長い付き合いの積み重ねです。今日言えなかったことをメモに残しておいて、次回の冒頭で「前回言えなかったのですが」と切り出していただければ、それで十分つながります。医師の側も、一回の診察ですべてを聞き取れるとは考えていません。回を重ねる中で少しずつ全体像が見えてくる、というのが通院治療の本来の姿です。

ただし、例外がひとつあります。急な体調の悪化や、薬の強い副作用が疑われるときは、次回を待たずに当院へお電話ください。診療時間外で命に関わる緊急のときは、救急(119)をご利用ください。「これは次回まで待っていいのか」判断に迷うときも、遠慮なくご連絡いただいて大丈夫です。

診察の数分間は、確かに長くはありません。けれども、3項目のメモと「いちばん聞きたいことを最初に」の一工夫で、その数分は驚くほど濃くなります。次の診察の前夜、5分だけ、メモを書く時間を取ってみてください。当院でも、皆さんが持ってきてくださるメモをいつでも歓迎しています。

よくある質問

診察の前にメモを用意したほうがいいですか?

必須ではありませんが、用意しておくと限られた時間を活かしやすくなります。長い文章である必要はなく、「前回からいちばん変わったこと」「困っていること・聞きたいこと」「薬について気になること」の3項目を箇条書きにする程度で十分です。スマートフォンのメモでも紙でもかまいません。

診察でつい「大丈夫です」と答えてしまいます。どうすればいいですか?

とてもよくあることで、悪いことではありません。診察室では緊張したり、つらさをうまく思い出せなかったりするものです。「大丈夫ですが、〇〇だけ気になっています」のように一言だけ付け足す、あるいはメモを見せていただくだけでも、医師には大切な情報になります。

薬を減らしたい・やめたい気持ちは診察で言ってもいいのでしょうか?

ぜひ言葉にしてください。減らしたい・やめたいという気持ち自体は自然なもので、医師はそれを踏まえて安全な進め方を一緒に考えます。最も避けたいのは、相談のないまま自己判断で急に中断することです。飲み心地の違和感や飲み忘れも、そのまま伝えて大丈夫です。

言いたかったことを診察で言えないまま終わってしまいました。次回まで待つしかありませんか?

次回の診察で最初に伝えていただければ十分間に合うことがほとんどです。言えなかったことをメモに残しておき、次回の冒頭で出していただくと確実です。ただし、急な体調の悪化や薬の強い副作用が疑われるときは、次回を待たずに当院へお電話ください。命に関わる緊急時は救急(119)をご利用ください。

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執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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