福岡県春日市須玖北4丁目34 2階
休診日: 水曜・木曜・日曜・祝日

「診察のたびに、話を聞いてもらえていない気がする」「質問したいことがあるのに、忙しそうで切り出せない」「薬が変わったけれど、理由の説明がよく分からなかった」――。

精神科・心療内科に通院していると、主治医との関係にこうしたモヤモヤを感じることがあります。こころの治療は対話が中心になるだけに、「この先生と合わないかもしれない」という感覚は、通院を続けるうえで小さくない悩みです。

結論からお伝えすると、合わない医療機関を変わることは患者さんの正当な権利です。ただ、転院にはそれなりのコストもあります。この記事では、転院を決める前に試せること――不満の伝え方、診察前メモ、相性の問題と治療上必要な摩擦の区別――を中心に、それでも合わなかった場合の転院の進め方まで、福岡県春日市の精神科・心療内科の視点からお伝えします。

なお、転院やセカンドオピニオンの手続きそのものについては別の記事で扱っており、本記事は「転院を決める前にできること」に軸足を置いています。

「合わない」と感じるとき、何が起きているのか

主治医への不満としてよく聞かれるのは、次のようなものです。

  • 話を聞いてもらえない気がする:話し始めてすぐに遮られる、症状を伝えても反応が薄い
  • 質問しづらい:診察が短く、聞きたいことを切り出す間がない。聞くと迷惑そうな気がする
  • 薬の説明が足りない:薬が増えた・変わったのに、理由や見通しの説明が少ない
  • 事務的に感じる:症状の確認だけで診察が終わり、自分を分かってもらえている感じがしない

こうした感覚には、いくつかの背景が混ざっていることがあります。医師の説明やコミュニケーションが実際に不足している場合。診察時間の構造的な制約(後述します)による場合。そして、うつ状態や不安が強い時期には「誰にも分かってもらえない」という感覚自体が症状の一部として強まることもあるとされています。

どれか一つに決めつける必要はありませんが、「合わない」の中身を少し分解してみることが、次の一手を考える出発点になります。

相性の問題と、治療上どうしても必要な摩擦を分ける

転院を考える前に、一度立ち止まって確認したいのがこの区別です。

精神科の治療には、耳の痛い話がどうしても含まれます。たとえば――

  • 生活リズムや飲酒についての指導を受ける
  • 頼りにしている薬について、減らす方向の提案をされる
  • 「もう働けます」と思っているのに、まだ休養が必要だと言われる。あるいはその逆
  • 希望した薬や診断書について、医学的な理由で応じてもらえない

こうした場面で生じる「分かってもらえない」という感覚は、相性の問題というより、治療上必要な摩擦であることがあります。患者さんの希望にすべて応じることと、患者さんの回復にとって最善を尽くすことは、必ずしも一致しません。言いにくいことを言ってくれる主治医は、長い目で見れば信頼できる主治医であることも多いのです。

一方で、次のような状態が続くなら、それはコミュニケーションの問題と考えてよいでしょう。

  • 症状の変化や副作用のつらさを伝えても、取り合ってもらえない
  • 質問をすると嫌な顔をされる、質問自体ができない雰囲気がある
  • 治療方針や薬について説明を求めても、答えてもらえない

「言われた内容がつらい」のか、「そもそも対話が成立していない」のか。この軸で整理してみると、モヤモヤの正体が見えやすくなります。

転院の前に試せること①――不満や希望を率直に伝えてみる

意外に思われるかもしれませんが、「合わない」と感じている不満を主治医に直接伝えた経験のある方は多くありません。気まずさや、「気を悪くされたら通いにくくなる」という心配から、黙って我慢するか、黙って転院するかの二択になりがちです。

しかし、患者さんからの率直な要望は、医師にとって診療に必要な情報です。伝え方としては、批判ではなく「困っていること+希望」の形にするのがコツです。たとえば――

  • 薬が変わった理由を、もう少し詳しく知りたいです
  • 診察で聞きたいことを忘れてしまうので、メモを見ながら話してもいいですか
  • 今の治療がどういう見通しで進んでいるのか、一度整理して教えていただけますか
  • 症状のこの部分が一番つらいのですが、伝わっているか不安で。改めてお話ししてもいいですか

こうした一言で診察の雰囲気が変わり、「思っていたよりちゃんと考えてくれていた」と分かることは、実際によくあります。逆に、こうした要望を伝えても状況がまったく変わらないなら、そのときこそ転院を具体的に考える段階といえます。伝えてみることは、転院の判断材料を集めることでもあるのです。

転院の前に試せること②――診察前メモと、診察時間の使い方

「聞きたいことがあったのに、診察が終わってから思い出す」という悩みには、診察前メモが役に立ちます。

  • 前回の診察からの変化(良くなったこと・悪くなったこと)を2〜3行
  • 気になっている症状や副作用を1〜2つ
  • 今日必ず聞きたい質問を、優先順位をつけて1〜2つ

これだけの簡単なもので構いません。ポイントは欲張らないことです。再診の診察時間は限られているため、聞きたいことを10個並べるより、一番大事な1〜2個に絞ったほうが、確実に答えを持ち帰れます。

あわせて知っておいていただきたいのが、診察時間の構造的な制約です。日本の保険診療では、多くの精神科・心療内科で再診の診察は数分から10分程度になることが一般的です。これは医師の熱意の問題というより、限られた時間で多くの通院中の患者さんを継続的に診るという、外来診療の仕組み上の制約でもあります。「診察が短い=自分が軽く扱われている」とは限らない、という視点を持っておくと、不要な傷つきを減らせることがあります。

そのうえで、短い時間を有効に使う工夫(メモ、質問の絞り込み、要望の言語化)は患者さんの側でもできますし、時間内で扱いきれない相談があるなら「次回、この件で少し時間をいただけますか」と予告しておく方法もあります。当院の診察時間や予約の仕組みについては診療時間のページをご覧ください。

それでも合わなければ――転院は正当な権利です

伝える工夫をし、メモを使い、それでも「対話が成立しない」「信頼して治療を任せられない」と感じるなら、転院は十分に検討してよい選択肢です。医療機関を選ぶことは患者さんの正当な権利であり、主治医への裏切りではありません。

転院する場合に、ぜひお願いしたいことが一つあります。紹介状(診療情報提供書)をもらうことです。

紹介状には、診断の経緯、これまで使った薬とその効果・副作用、治療の方針などが記載されます。これがあると、次の医療機関はゼロからやり直すのではなく、これまでの治療の続きから始めることができます。「合わないから転院するのに、紹介状を頼むのは気まずい」と感じる方は多いのですが、紹介状の作成は診療行為の一部であり、依頼されて気分を害する医師は基本的にいません。「転院を考えているので、紹介状をお願いできますか」と伝えるだけで大丈夫です。

ここで注意したいのが、ドクターショッピングの落とし穴です。合わないと感じるたびに紹介状なしで次々と医療機関を変わると、そのたびに診断の見立ても薬の調整も最初からリセットされます。精神科の治療は、同じ医師が経過を続けて診ることで初めて見えてくるものが多い領域です。転院を繰り返すほど治療が前に進みにくくなることが知られており、結果的に一番損をするのはご本人です。転院するなら、情報を引き継ぎ、次の場所ではある程度腰を据える――これが治療の連続性を守るコツです。

受診・相談の目安――こんなときは行動を

次のような場合は、我慢を続けるのではなく、何らかの行動を検討してください。

  • 不満や希望を伝えてみたが、対応がまったく変わらない状態が数か月続いている
  • 症状や副作用のつらさを訴えても、取り合ってもらえないと感じることが繰り返されている
  • 診察への不信感から、薬を自己判断で減らす・やめるなど、治療そのものが揺らぎ始めている
  • 「診察に行くのが苦痛」で、通院自体が途切れそうになっている
  • 治療方針に納得できず、別の医師の意見も聞いてみたいと感じている

特に、不信感から服薬や通院を自己判断で中断することは、症状のぶり返しにつながりやすいとされています。治療を止める前に、「主治医に伝える」「紹介状をもらって転院する」という順番を思い出してください。命に関わる緊急の場合は、ためらわず救急(119)を利用してください。

まとめ――「合わない」は、まず伝えてみることから

主治医と合わないと感じたとき、選択肢は「我慢」と「転院」の二つだけではありません。不満や希望を具体的な言葉で伝える、診察前メモで限られた時間を有効に使う、診察時間の構造的な制約を知る――転院を決める前に試せることがあり、それを試すこと自体が、転院すべきかどうかの判断材料にもなります。そのうえで転院を選ぶなら、それは患者さんの正当な権利です。紹介状をもらい、治療の連続性を保ちながら、次の場所で腰を据えて治療を続けてください。

当院は福岡県春日市の精神科・心療内科として、「今の治療について整理して考えたい」「これからの通院に不安がある」といったご相談もお受けしています。他院からの転院をお考えの場合は、可能であれば紹介状をご用意いただけると、これまでの治療を踏まえた診療がしやすくなります。初診の流れは初めての方へを、受診に関する疑問はよくあるご質問をご覧ください。WEB予約からご都合のよい日時をお選びください。

よくある質問

主治医に不満を伝えたら、気を悪くされて診療に響きませんか?

多くの医師にとって、患者さんからの率直な要望は診療に必要な情報であり、伝えられて診療の質が下がるということは基本的にないとされています。「薬の変更について、もう少し理由を知りたいです」「診察で聞きたいことがあるのでメモを見ながら話してもいいですか」といった具体的なお願いの形にすると、医師側も応えやすくなります。感情的な批判ではなく、困っていることと希望を伝えるのがコツです。

相性が悪いのか、自分がわがままなのか分からなくなります。

治療には、減薬の提案や生活指導、休職を勧められるなど、耳の痛い話がどうしても含まれます。「言われた内容がつらい」だけであれば、それは相性の問題ではなく治療上必要な摩擦かもしれません。一方で、症状を話しても取り合ってもらえない、質問すると嫌な顔をされる、説明を求めても答えてもらえない状態が続くなら、コミュニケーションの問題と考えてよいとされています。この区別を意識してみると整理しやすくなります。

転院するとき、紹介状は必ず必要ですか?気まずくて頼みにくいのですが。

紹介状(診療情報提供書)がなくても受診できる医療機関は多いですが、これまでの診断の経緯、使用した薬とその反応、治療の方針が引き継がれるため、治療の連続性の観点からは紹介状があることが望ましいとされています。紹介状の作成は診療の一部であり、患者さんの正当な依頼です。「転院を考えているので紹介状をお願いします」と伝えれば、多くの医療機関で対応してもらえます。気まずさを感じる必要はありません。

何度も転院を繰り返すのはよくないのでしょうか?

合わない医療機関を変わること自体は患者さんの権利です。ただし、短期間で転院を繰り返すと、そのたびに診断の見立てや薬の調整が最初からやり直しになり、結果として治療が前に進みにくくなることが知られています(いわゆるドクターショッピング)。精神科の治療は、経過を続けて診てもらうことで見えてくるものが多い領域です。転院する場合も、次の医療機関ではある程度腰を据えて通うことを意識すると、治療が積み上がりやすくなります。

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執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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